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2019/09/11 「シリコンバレー ベンチャー事情」第3回 DXに間違いなく失敗する方法

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こんにちは、BIPコンサルタントの安藤です。

最近、「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉をIT業界でよく耳にするようになりました。日本では長すぎるため「DX」と表記されていることが多いようです。政府やIT各社がデジタル化に本気で取り組んでいるのは良いことだと思います。

今回は、この1年ほど自分で使ってみた「オーディオブック・サマリー」サービスを通じてどうやったらDX「上手くいかないか」を考えてみました。もちろん、ひっくり返せばその逆を行けば成功する(かも)ということですね。

サウンドビュー

米国で一昔からあるビジネス書のサマリー・サービスで「サウンドビュー(Soundview)」という会社があります。もともと企業の管理職、中間管理職等をターゲットに、本を全部読むよりは時間効率が良いということで毎月数冊のビジネス書を選び、一冊あたり数ページの紙のまとめとカセットを送付して配信していました。サウンドビューは今も続いていて、去年から年間契約しているのですが今年、契約更新しないことにしました。理由はあまりにも「企業の管理職」というターゲットに絞られすぎており、組織の管理職がどう行動するかという類いの内容が多く、私のような独立事業者にははっきり言って余り興味が持てない内容が多かったからです。

Figure 1 現在のSoundviewのホームページ

Figure 1 現在のSoundviewのホームページ

 

もう一つ、このサウンドビューはもちろん、今の時代にはカセットテープでなくスマホにダウンロードして聞けるようになっているのですが、これが極めて、使い出が悪いのです。まず、ほんのサマリーの音声をダウンロードする際にフォーマットが幾つかあるのですがそのアイコンが小さく、またスマホへのダウンロードが「MP3」がいいのか「電話」形式が良いのか、などもわかりづらい。

Figure 2 サウンドビューのダウンロード選択画面

Figure 2 サウンドビューのダウンロード選択画面

さらに、ダウンロードした後どれを聞くかの選択画面などは同じコンテンツが色々なフォーマットで細かい字で並んでおり、これがスマホの画面で、聞く場面がほとんど車の中であることを考えると(運転はしていないにしても)、極めて不親切なレイアウトになっています(特に著者のように老眼鏡を持ち出さなければならない年代にはなおさら!)

Figure 3 サウンドビュー・選択画面

Figure 3 サウンドビュー・選択画面

それで今月の契約更新時に解約することにしたのですが、なんと解約には「HPからメールを送って下さい」となっており、5日前に送ったのだがまだ何も返事がない。アマゾンが「その日のうちの配達」を打ち出している今、メールの返事が5日ないというのは顧客サービスとしても劣るし、会社側ではさぞ、来たメールのアドレスと会員登録のメルアドの照合を手作業でやっているのだろう、という想像もつきます。

ブリンキスト(Blinkist

老舗のサウンドビューに比べて、ここ数年で成長してきた、同じようなブックサマリーサービスにBlinkistがあります。ドイツのベンチャー企業なのですが、社名のBlinkistは英語でBlink(瞬きをする)からとって、瞬きをするくらい短い時間で本が読める(聞ける)から来ていると思われます。こちらは2012年設立だけあって、いわゆるデジタルネイティブ。下の画面のように会員用ホームページもすっきりし自分が選んだ本の最近の3点が一目でわかるようになっています。

Figure 4 Blinkistの会員用ホームページ

Figure 4 Blinkistの会員用ホームページ

また、サウンドビューの「毎月5冊ぐらい」に比べブリンキストでは毎日、「ごく簡単な12分で読めるまとめ」が配信され、さらにその本の内容に興味があれば1クリックで「1215分ぐらいで聞けるまとめ」をスマホのライブラリに登録できるようになっています。また、この膨大な数の「サマリー」のなかからいつでも簡単に、何冊でも、読みたい(いや、聞きたい)本を選択し自分のライブラリに追加できます。

Figure 5 Blinkistのスマホ画面ライブラリ

Figure 5 Blinkistのスマホ画面ライブラリ

ちなみに現時点(20199月)でブリンキストの書籍の総数は3000点以上、毎月30点が追加されているということです。また、数が多いだけでなく、ブリンキストではノンフィクションですが、いわゆるビジネス書から自己啓発、健康管理、起業家やフリーランス向けなど幅広い層に興味が持たれる本を揃えています。

一昔前まで、Soundviewの全盛期には、年間10,000円ちょっとの会費を払って管理職向けのビジネス書を音声で聞こうという、主に大企業の中間管理職が十分おり、それが主なターゲット層でした。ですが現在では、フリーランスの希望者もいるし自分で起業しようとする人、会社に勤めていてもいろいろな会社で経験を積んで転職するか、または管理職ではなく技術系などの専門職の道を進む選択もあります。それで、Blinkistではシェアエコノミーのフリーランス希望者を含めいろいろな層にアピールする品揃えとなっています。

ちなみにサウンドビューとブリンキストの料金を比べると、有料年会費のうち一番安いプランではブリンキストの方が安いです(サウンドビュー99ドル、ブリンキスト70ドル)。ですが、ブリンキストでは3000点以上ある本のどれでも、いつでも視聴できることを考えると、これはサウンドビューの高い方のプラン(年間199ドル)に相当します。

ブリンキストではこれだけ安くして元が取れるのか、と気になるところですが、そこはサブスクリプション・サービス。会員が多ければ安くとも元が取れます。両社とも正確な数字は公表していませんが、ウェブサイトからは

  • サウンドビュー:世界中に50万人の購読者
  • ブリンキスト:600万人のユーザー(ただし有料会員数は未公表)

ということで、ユーザー数だけから見れば12倍の開きがあります。しかもサウンドビューは40年かけてこの数字、ブリンキストは7年です。

で、DXに失敗するには???

長くなってしまいましたが、上記の比較を踏まえてサウンドビュー側の、「デジタル・トランスフォーメーションにいかにして失敗するか」を簡単にまとめると以下のようになります。

  1. 以前のまま(元々はカセットテープを送付していた)のようなコンテンツをそのままデジタル化し、ユーザーの使う場面、利便性などを考えずにそのままウェブ・スマホ用に提供する
  2. 現在のターゲットがどこにあるかを鑑みず、以前のままのターゲットを層にマーケティングする
  3. 豊富なコンテンツを安価で提供し会員を増やす「サブスクリプション・モデル」を理解せずひたすら、限られた内容を高額で限られたそうに提供する
  4. 配信プランの変更・キャンセルなどもひたすら、アナログで行い「古い企業」であることを嫌でも印象づける

いかがでしたでしょうか?これを読まれた皆様が是非、上記4点を踏まえて「DXに成功する道」を選ばれますよう!


thumbnail_ando安藤 千春(あんどう ちはる)

コンサルタント(日米企業提携・提携投資、米国ベンチャー企業発掘・調査)

シリコンバレー在住コンサルタントとして、現地ベンチャー企業の最新情報や 日本企業の提携・投資事例をご紹介していきます。

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