佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/01/16 2012年、「複眼二刀流」で不変・変化を探る(前編 世界目線)

今年の1月はしっかりと世の不変と変化を掴み、意見交換する時間を大切にしたいという気持ちが強い。ここ数年の体験から、現在と未来の実体世界を離れて個人の実際人生はあり得ないと痛感したからです。

単純に昨年末は忙しく、調べ、考える時間がとれなかったこともありますが、世に大きな変化が起きつつあるという私の強い直感の正体を掴みたいと思いました。BIPが1月で5周年を迎え、将来をしっかりと考えたいという気持ちもあります。

やっていることは単純です。本屋で関心ある本、雑誌を手当たり次第に買い、読んでいます。昨年2月より始めたSNSでの情報シェアは続けながら、月刊誌、週刊誌、新聞も丁寧に読む昔のスタイルを戻しつつあります。面白そうなTV番組を録画して見る努力も再開。なによりも多くの人と会い、意見交換することを大切にしています。

自分で直接全てを調べる事は不可能なので、情報がかなり公開、流通する現代は有り難い。だが、情報過多社会にあって、適宜適切な情報を収集し、短期・長期の適切な考えをまとめ、適切に速く行動するのは簡単なことではありませんよね。「情報リテラシー」は義務教育から絶対大事とも思う。

新年に当たり、稚拙ですが、日本人として重要と思うテーマを逃げずに考えてみました。モットーとしている「複眼二刀流」の視点で知ったこと、分かったこと、認識を変えたことなどの一部を書いてみます。企業経営論は今回省略します。
参考資料

(序)2012年新年に当たって~3.11大震災の教訓を世界に発信する。

参考資料
写真 『日本大災害の教訓』(竹中平蔵・船橋洋一編著)

大震災を体験し世界から支援を受けた日本人の一人として、更に継続している東北復興支援活動の延長としても、私たち一人一人が世界と繋がり、各自が世界への的確な発信をすることは大事なことと思います。そのためには、まず2011年日本の現実を網羅的に再認識することが前提となりますね。

その点で、2011年12月29日付で英語、中国語、韓国語でも同時出版された『日本大災害の教訓』(竹中平蔵・船橋洋一編著)を知り、その試みは素晴らしいと思いました。多くの試みが続いてほしいと願っています。

「私たちは、リスク管理という観点から日本の教訓を世界に発信することこそ、日本に援助を与えてくれた世界の人々に対する恩返しと考えるに至った。」(参考文献1)

本書は震災後約半年の情報をもとに、危機管理の観点から10名の専門家の論文が掲載されている。その目次と執筆者を記します。

序章 大災害と複合連鎖危機 (竹中平蔵・船橋洋一)
Ⅰ部 大災害と国土・都市

1章 国土と防災  大地震・津波被害と備え     (西川 智)
2章 復興と再生  消えた自治体・翻弄された自治体 (久保隆行・三輪恭之)
3章 東京の被災  試された災害対応力と国際競争力への影響(市川宏雄)
Ⅱ部 経済をめぐる諸問題
4章 マクロ経済  大震災と日本経済        (竹中平蔵)
5章 企業経営   サプライチェーンと事業継続   (丸谷浩明)
6章 原発事故   福島原発事故を何故防げなかったか(吉岡 斉)
7章 電力供給   大震災と日本の電力供給体制   (八田達夫)
Ⅲ部 大災害と政治・社会
8章 政治機能   ガバナンス危機の解剖      (船橋洋一)
9章 消費行動   自粛と委縮からニューノーマルへ (袖川芳之)
10章 情報通信  災害時情報通信基盤マネジメント (村井 純)

(1)複眼二刀流~日本・世界(マクロ)と企業・個人(ミクロ)の関係を探る

2007年サブプライムショック、2008年リーマンショック、2011年欧州金融危機を体験して、世界の動向が日本企業の事業経営、日本人の人生に大きな影響を与えることを実感していることと思います。

本、雑誌、新聞、TV等の情報の中から何が本質か、今後どうなるかを掴むのは簡単ではないと思うかもしれません。しかし、求めて調べれば、発信者によってバイアスはあるが、意外とかなりの確率で内容を掴めると思います。

【①欧州の経済危機は、本当はどこから来ているのか】
参考資料
写真 『VOICE』2012年2月号、日本経済新聞 2012年1月16日号(朝刊)

3年前欧州旅行の時、1ユーロ150円台でしたが現在は97円前後です。30数%通貨価値が急減しています。日本の株式市場、輸出等への悪影響が起きています。13日には、欧州9ケ国の国債格付けが引き下げられました。

竹森俊平慶應義塾大学教授が月刊誌『VOICE』2月号「ユーロ危機は解消しない」の中で、金融危機を考える基本を説明しています。

「一般に金融危機には二種類のものがある。銀行などが長期貸し出しのための資金を短期資金を集めてファイナンスする場合、予定が狂って短期資金の借り換えができなくなり、当座の返済に詰まる場合がある。これが「流動性危機」である。こういう場合には、誰かがつなぎ資金を貸せば、当座の返済ができるので問題が解決する。銀行の場合、中央銀行がつなぎ資金を供給する「最後の貸し手」を務める仕組みが設けられている。他方で銀行の長期貸し出しが貸した相手の倒産などで回収できなくなり、いくらつなぎ資金を受け取っても、借りた金が返せない場合もある。これが「返済不能危機」だ。」(参考文献5)

僭越ですが氏の説明を要約してみます。

当初、フランス中心に「返済不能の危機」はないと対策を始めたが、ギリシャなどは財政緊縮しても「返済不能の危機」であることが明確になり、ドイツを中心に「債権自主放棄」と財政介入路線に変化した。ドイツは、ユーロ安で輸出好調で経済的恩恵を受けており一時的財政支援できる力を持っている。しかし無制限の支援はできないのを知っている。東西ドイツ統一で膨大な投資をしたが今もって経済格差が大きい。欧州各国の規模で、生産性、経済格差が桁違いに大きいことの意味は大きい。

EUはユーロ圏に属する17ケ国と属さない10ケ国があります。ユーロに属さない英国はポンドを持ち、財政再建と通貨で調整はできる。ユーロ国の間では通貨調整できないので、財政再建不能な国はユーロ脱退か、ユーロ圏財政同盟まで進んでドイツ等が支え続けるのか。

私の疑問を加えるとすると、欧州は自力の解決不能を認め、アメリカ、日本、中国などに金融支援を求めるのだろうか?今の所、報道の多くは自立解決可能派がほとんどだが、金融を超えた経済・政治危機だからこそ深刻で時間がかかっている。アジアにも実例がある。韓国は破綻し、IMF管理下で再建した。

2012年1月から4月にかけて、イタリア国債の借り換えが目白押しといわれる。欧州各国銀行を中心とした資金調達は可能なのか。ECBが全面的信用供給する選択肢はあるが合意は出来ていない。危機が続いているようで注視だ。世界経済への影響は大きい。

【②アメリカは「弱い」という論調が多いが実体は「強い」のではないか】
参考資料
写真 斎藤彰『アメリカはカムバックする』

アメリカは弱体化しつつあるという論調が多いが、私は一貫して相対的劣化はあるが超大国アメリカは絶対的には成長している最強国であることを忘れてはいけないと思ってきました。

最近、アメリカを総点検する良書に出合いました。斎藤彰 元讀賣新聞アメリカ総局長『アメリカはカムバックする』。(参考文献2)

国土、資源、食糧、経済力、軍事力等周知の事実に加えて、私にとって意外な点も指摘しています。

*「急成長都市」に注目~パームコースト、ケープコラール(フロリダ州)、セントジョージ、ラスペガス、プロボ(ユタ州)、グリーリー(コロラド州)、オースチン(テキサス州)、マートル・ビーチ(サウスカロライナ州)など
*修正続きの「合衆国憲法」~国づくりそのものが発展途上
*人口増え続ける例外的先進国~2010年「合計特殊出生率」2.1335+移民
*製造業の最適地域の復活~2011年BCGレポート

今は「経済停滞」だが「衰退」ではない。財政赤字はあるが、GNP、人口は増え続け、科学技術力、軍事力のパワーは依然最強である。円・人民元以外はドル高である。一方的「アメリカ衰退論」を再点検する必要があるようですね。

【③アジアは再び、日米中印の大国を軸に21世紀の地勢を決める経済力・外交力・軍事力の「パワーゲーム戦場」となったのではないか】
参考資料
写真 リチャード・L・マーミテージ、ジョセフ・S・ナイ、春原剛『日米同盟VS中国・北朝鮮』
猪瀬直樹『黒船の世紀』(上)(下)(中公文庫 2011年6月 )

今、日本には明治以来の日米関係を示唆する「黒船の世紀」に100年単位の歴史的変化が訪れているといえるかもしれない。(参考文献4)

平和と安定は、恐慌と戦争を予防することであることは自明であるが、各国の利害を調整するのは簡単ではない。20世紀前半は、戦争と革命の時代。後半は、冷戦と新興国独立の時代。1990年代のソ連圏崩壊で欧州冷戦が終了し、EU、ユーロが拡大しました。

しかし、アジアは依然として冷戦の地域である。アジア太平洋地域は、日本、米国、中国、インドを中心に、今後世界GNPの50%以上を占める重要な地域となることは明白である。

2010年、中国がGNP世界第2となった。米国のオバマ民主党政権と日本の民主党政権が発足し、中国への「宥和政策」を実施したが、結果は中国のあからさまな国家膨張主義に直面し、その意図と現実を知った。

今、日本は明治以来の歴史的チャンスが起きていると思う。米国民も、日本国民も多くが中国への態度を変えるべきと国論が統一されつつあるように感じます。

何よりも、米国オバマ民主党政権が明確にアジア重視と日米同盟基軸に舵を切ったことである。20世紀、米国政権の中心であった民主党には「中国優遇主義」、「日本敵対主義」が強い傾向があったように感じる面が多い。その民主党オバマ政権が、共和党に続いて2011年後半より超党派の「アーミテージ・ナイ報告書2(2007年2月)」路線を実施始めたと思われる。(参考文献3)

当然、米国の国益のためであるが、日本は自国の国益のために絶好の機会である。21世紀初頭に訪れたこの歴史的チャンスを絶対に閉ざしてはいけない。

経済と安全保障を基軸に、日米は自立しつつ、協調して世界の安定と発展を牽引する時代をつくっていかねばならない。私は、日本は「世界の未来島」と称しているが、ここは踏ん張りどころだと思う。

以下、次週エッセイ内容の予定です。

(2)複眼二刀流~ビジネスマンとステイツマンの両面持つ日本人になるために
①マクロ経済(日本・世界)とミクロ経済(企業、家庭)
②民主党VS大阪維新の会-どんな国・自治体を創る「政権交代」だったのか
③「税と社会保障の一体改革」VS「経済と財政の一体改革」

(3)複眼二刀流~ジュニアとシニアの生き方が「世界の未来島」日本を救う
①健康寿命75歳となった意味をジュニアもシニアもよく考えてみよう
②シニアは「弱者」? 「強者」?――お金持つシニアが、お金持たない子供、孫の財布に頼り過ぎではないか
③「75歳現役」はすばらしい生き方――三喜(働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び)に満ちたゴールデンエイジ

以上

参考文献
1.竹中平蔵・船橋洋一編『日本大災害の教訓』(東洋経済新報社 2011年12月)
2.斎藤彰『アメリカはカムバックする』(ウェッジ 2011年12月)
3.リチャード・L・マーミテージ、ジョセフ・S・ナイ、春原剛『日米同盟VS中国・北朝鮮』
(文春新書 2010年12月)
4.猪瀬直樹『黒船の世紀』(上)(下)(中公文庫 2011年6月 )
5.『VOICE』2012年2月号(PHP研究所 2012年1月)
6.日本経済新聞 2012年1月16日号(朝刊)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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