佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/07/02 佐々木流 BI経営進化論 第10回 YWTの時期。経営分析・課題設定・実行方法は妥当でしたか?

BI経営進化論
 先週で6月終了。7月初旬は、1月に年度開始の会社は上半期締め、4月に年度開始の会社は第1四半期締めの時期ですね。

当然、YWTの時期でもあります。YWTとは、Y(やったこと)、W(わかったこと)、T(次にやること)を議論する意味です。決算書・部門別収益という形で通信簿が出ますが、それは結果に過ぎません。その良否を生み出した方針と実行を、個人と組織の両面で総括し、次の行動を確定する大切な時期です。

YWTの際に非常に大事なことは、どんな内容でどの程度の事をやるかです。事業の進展によって判断することですが、全面的に考えるとすると経営分析Input、課題設定Think、実行方法Output3点すべての妥当性の評価です。仕事は結局、毎日のInput(情報収集する)-Think(考える)-Output(発信や行動をする)の深化。

YWT自体は多くの会社で実施していると思いますが、YWTの精度が大切ですね。今回はちょっと専門的ですが、経営分析と課題設定についての参考書を紹介します。年度の途中では実行方法のみ議論する傾向が多いですが、変化の激しい今日の時代には常にその前提である経営分析や課題設定も合わせて総括することが大切だと痛感しています。
参考資料

(1)経営分析は、「特定解」つまり「テーラーメード」!~冨山和彦・経営共創基盤『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』

参考資料

 経営分析には多くの分析手法や経営学の蓄積があり役立ちますが、個別企業の経営には普遍性ある経営分析はあり得ないことを銘記することが大事です。
 
経営とは「特定解」である。BIP事業リーダー実践塾講師を毎回お願いしている近藤修司先生(前北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科教授、元日本能率協会コンサルテイング(株)代表取締役社長)は、毎回塾生にそのことを執拗に教え続けています。絶対に忘れられないキーワードです。

現実の経営は「テーラーメード」である。同じことを違う言葉で伝えているのが今年出版された冨山和彦・経営共創基盤『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』(参考文献1)です。冨山氏はよくご存じの通り、ボストンコンサルテインググループ、産業再生機構COOを経て経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEOです。

全体として、ビジネスモデルと事業継続性の分析を多くの事例を挙げて説明しています。発想すべき視野や領域を分かりやすく理解して頂く良書です。

「私自身を含む本書の筆者3人は、いずれも、産業再生機構あるいは現在の経営共創基盤(IGPI)において、会社が生きるか死ぬかの修羅場や経営改革の現実の成果を出さねばならない状況で、真剣勝負の経営分析をやってきたプロフェショナルである。そうしたリアルな局面で、そんな分析能力が求められるのか、どんな手法が役に立ち、その手法をどのように使いこなせば、有効な分析ができ、会社や事業に関する正しい認識を持てるのか。経営者、投資家、経営コンサルタントとしての私たちのシビアな経験に基づいた、リアルな経営分析の方法論を皆さんと共有することが、本書の目的である。」

冨山氏は著書で、四半期や半期の定期モニタリングと、リアルな経営分析は異なると述べ、混同しないように述べています。その通りで、実施段階での対象領域の深さと方法論の違いには注意が必要です。

一方で、商品・事業サイクルの変化が速くなっていること、或いはリーマンショック・欧州経済危機や震災など自社でコントロールできない事象が頻繁に発生する現在では、事業リーダーは両面でのシミュレーションを常にしておくべきというのが私の実感です。

(2)「仕事の正否は9割課題設定で決まる!」~清水久美子『プロの課題設定力』

参考資料

 課題設定力についての良書を紹介します。清水久美子『プロの課題設定力』(参考文献2)です。清水氏はIBMコンサルテイングサービスの企業変革コンサルテイングチームリーダーや研修部門リーダーを歴任した方です。

「仕事の正否は9割課題設定で決まる!」というメッセージは、著書の帯の言葉です。思い切った言葉ですが、内容はよく整理され、実践に裏打ちされた分かりやすい優れた本だと思います。

課題設定力の重要性やそのフレームワークは言及されることは多いですが、課題設定力を上げるにはどうすれば良いかの思考プロセスを見える化し、各手法の関連と有効な実行方法を説明しています。その一部を紹介します。

【課題設定の精度を上げる3つの「視方」――視座・視野・視点】
・視座~誰がどんな目的を達成するための課題なのか
・視野~どんな広がり(空間軸)と長さ(時間軸)で課題を捉えるのか
・視点~どのように課題を切り出すのか

【課題設定の3段階――インプット、プロセス、アウトプット】
・インプット
 ①聞く(質問の4つのプレームワーク活用し、3×3マトリックスで対象・内容・対象にするポイントをつかむ)
 ②ぶつける(デスカッションペーパーで粗い仮説を投げかけ、思いこみ・誤解を減らし、間違った作業への時間的ロスを最小限にする)
 ③計る(人、モノ、金、職場環境、文化などを定性化・定量化する)

・プロセス
 ④論理構造化(ロジカルシンキングで、事象の因果関係を解明し、改善施策を抽出する。)
 ⑤水平思考(ラテラルシンキングで、前提を疑い、見方を変え、組み合わせて、イノベーティブなアイデアを創造する。)

・アウトプット
 ⑥課題設定のフォーマット(現状とあるべき姿、目的とゴール、手順、スケジュール、体制・役割、リスク・前提条件)

本書のプロセスという言葉は、私が述べたThink(考える)に近いと思われます。

(3)私の経営分析・課題設定・実行方法のフレームワーク~「成功の宣言」と「サクセスシート」

 今回は実行方法をテーマとして論じませんが、私が実際に使って役立っている経営分析・課題設定・実行方法のフレームワークを紹介します。「成功の宣言」と「サクセスシート」の活用です。上記の課題設定フォーマットの項目をほぼ網羅しています。

【仕事のフレームワーク 「成功の宣言」】
図:仕事のフレームワーク 「成功の宣言」
参考資料

 仕事の計画のフレームワークは、四画面思考研究所所長の近藤修司先生(北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科客員教授、元日本能率協会コンサルティング(株)代表取締役社長)が創造された四画面思考による『成功の宣言』(参考文献3)が大変役だっています。日本の公共財となる知恵だと信じています。

会社、組織としても、個人としても幅広く活用できます。大企業・中小企業・商店・病院・自治体などで成果が試され済みのフレームワークです。(・Topics 2011/12/13第2回開講 『永続する企業進化のOS!実績広がる四画面思考による改革実践力!』(BIP第4期事業リーダー実践塾

①今日の飯と明日の飯――現在と未来を一緒に計画する四画面思考による『成功の宣言』を作る
・「現状の姿」(現状の分析)、「ありたい姿」(10年後のビジョン)、「なりたい姿」(3年後の達成目標と重点戦略)、「実践する姿」(毎日やる事、毎週やる事、毎月やる事、毎期やる事、毎年やる事、3年毎になる事、10年毎にやること)を考え、宣言することで自分・自社のやりたい事が明確になり、実践の意欲が沸いてきます。

・複眼二刀流で、比喩的に言うと今日の飯(現在)と明日の飯(未来)の両方を並行してPDCAを回すのがポイントですね。

②戦略は細部に宿る ――四半期単位の『サクセスシート』(重点活動計画書)を作る
・民間企業も国・自治体も戦略は細部への展開・実行が正否に直結します。そのためには、戦略達成のための施策、組織、人事、予算等を具体的に決めるのがポイントです。

・一般的には、四半期単位の重点活動計画書を作成して実践手順を明確にする。私は、『サクセスシート』と気分を盛り上げる呼び名にしています。時間軸を入れることで、優先順位と実践への覚悟=胆力が試されますね。

さあ、しっかりとYWTを実施して、熱い夏を元気にがんばりましょう。

以上

(参考文献)
1.冨山和彦・経営共創基盤『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』(PHPビジネス新書 2012年3月 第1版第1刷)
2.清水久美子『プロの課題設定力』(東洋経済新報社 2009年8月)
3.近藤修司&成功の宣言文コミュニティ『四画面思考の基本』(四画面思考研究所 2009年4月)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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