佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2019/06/12 279号 平成激変の本質を学び、楽しい令和日本を創る

 令和元年5月が過ぎ、6月を迎えました。多くの国民の皆様が、令和の始まりを歓迎し新たな期待をしている印象を強く感じた次第です。6月には大阪でG20が開催され、7月には参議院議員選挙が予定されています。

 世界や日本のマクロ政策や政治変動が、ミクロである個人の豊かさや幸福、企業の盛衰に巨大な影響を与える現実を知ってはいますが、その本質的原因を掴むのは簡単ではありませんね。平成の激変を調査・分析・研究した出版が始まり、有益な論考がありますので3冊をご紹介します。一緒に考え、一緒に行動する参考となれば幸いです。

 書籍

 

1.元経済企画庁長官・作家 堺屋太一 『三度目の日本 幕末、敗戦、平成を超えて』
祥伝社新書 2019年5月初版 定価 本体800円+税別

 堺屋氏は今年2月逝去され、本書が遺作となった。ご冥福をお祈りします。 

(1) 日本の激変を、明治維新、敗戦、そして平成と3時代に分けて分析しています。

 何故、明治維新、敗戦、平成と3つの異なる時代を取り上げるか?

 「世の中の一番の「基」は価値観である。価値観というものが世の中の形を決めるのだ。・・・さらに価値観を分解すると、構成する要素は二つであることが分かる。それは美意識と倫理観である。・・・価値観に基づいて、社会の大きな仕組みができあがっており、さらにその仕組みの中で各個体、主体が経済運営や政治活動、芸術運動などを行なっているわけだ。」(P4)という根本認識に依る。3時代で価値観が変わらねばならなかった。 

(2) 1989年頃=平成より日本の行き詰まりが始まった。

 1989年頃より敗戦後の高度成長を牽引した価値観「豊かな日本」の仕組みである規格大量生産が行き詰まった。それは、田中内閣頃から始まった官僚主導の国家運営に起因する。5つの基本方針があった。

①東京一極集中

②流通の無言化

③小住宅持ち家主義

④職場単属人間の徹底

⑤全日本人の人生の規格化

 私も今思えば、かなり実体験した世代であるが、その詳細を官僚が企画・指図していた実態を知り驚愕した。日本官僚も国家社会主義、エリート権力主義的傾向なのかと身震いする。私は官僚の実態を知らな過ぎたようですね。米国、EUも官僚はそうなのでしょうね。 

(3) 結果、「今の日本は、世界で最も「安心、安全、清潔、正確、そして平等な国」である。しかしあまりにも安全・清潔に徹する規制と厳格な基準ゆえに、人々の楽しみを奪い、やる気を失わせているのではないだろうか。・・・現在の日本は、夢もなければ冒険しようとする気も湧かない「低欲望社会」になってしまったということである。」(P56~57)「そこで私は、「三度目の日本」の価値観として、「楽しみを正義にしよう」と提唱したい。」(P172)

 では、令和はどうやって平成を超えて、官僚主導を崩し、三度目の日本を創るか?そのヒントも遺した。

 

2.前日銀副総裁、学習院大学名誉教授 岩田規久雄 『なぜデフレを放置してはいけないか 人手不足経済で蘇るアベノミクス』
PHP新書 2019年5月第一版 定価 本体920円+税別

 新書だが、334ページにわたる詳細な統計事実と世界の論考への考察に満ちています。

 『本書では90年代以降、日本が「失われた20年」に陥った原因は、90年代以降の財政政策と金融政策(とくに金融政策)が不適切だったため、日本がデフレに陥ってしまったことにあることを明らかにしていきます。』(P22)と語り主要な論点は明確です。 

(1) 本書の構成

 私の稚拙な要旨で誤解生まないように、まず章立てを紹介します。

第一章      デフレ脱却なくして日本経済の再生なし

第二章      デフレはなぜ脅威なのか

第三章      「失われた二十年」の原因とアベノミクス

第四章      金融政策の条件と日銀財務に関する誤解

第五章      財政政策のリフレ・レジームへの転換が必要だ

第六章      成長戦略への基本原則とは 

(2) 戦後デフレになったのは日本だけなのは何故か

 3代にわたる日銀総裁の金融政策の間違いとその国民生活への巨大な悪影響を事実で解明しています。『89年5月以降の急激な利上げの下で生じたマネタリーベースとマネーサプライの増加率の急低下は、資産価格の暴落とその後の長く続く低下をもたらしました。この状況を「資産デフレ」といいます。資産デフレにより、日本経済から莫大な富が失われました。』(P84)株式時価総額にすると548兆円、減少率67%、宅地価値総額682兆円減少した。減少率36%。「資産デフレが原因のデフレ不況は深く長期化するー金融加速度効果」(P95)という。

 実は、2002~2007年の小泉政権時、デフレ脱却のチャンスがあったが、竹中大臣のインフレ・ターゲット採用要望を日銀は断り、金融緩和まで解除してしまった。

 2013年よりのアベノミクスの明確な成果の事実も示しています。 

(3) デフレ克服には金融政策と同時に財政協力が必要

 アベノミクスは大きな成果を上げましたが、消費税8%導入という財政政策で経済マイナス作用が起きた。米国の経験でも、金融政策と同時に財政緊縮でなく財政拡大が必要である。

 その他、各種世界・日本の主要な論点に応え、「パッケージ型経済政策」を提言しています。

 有権者は全員読むべき本と思った程です。何故なら、日銀総裁と日銀政策委員という官僚・民間エコノミストエリートの間違いと暴走は、国民が、国民の代表国会議員を通じて止めねばならないからです。多くの学者・メディア・経済人は、官僚と一体で忖度した世論誘導をする。自分の学説・情報源・権威という自分の利権を守るのが、国民生活より優先するからです。官僚に忖度しないアベノミクス効果の事実が雄弁に物語っています。

 

3.元経済財政政策担当大臣、元金融担当大臣、東洋大学教授 竹中平蔵 『平成の教訓 改革と愚策の30年』
PHP新書 2019年3月 第一版 定価 本体900円+税別

 竹中平蔵氏は、経済・金融中心の大臣など国家中枢としての長い体験を持っている。

 平成30年は、一律に「失われた30年」と見るのは間違いで、「進んだ改革」と「横行した愚策」の両方のある「まだらな」時代と述べている。

 

(1) 平成時代を五つの時代に区分して考察する

第1期 「戸惑い」の7年(1990~1996年) 平均成長率1.6% 株価変化率 49%
 「バランスシート不況」には金融政策せずにバラマキ財政一辺倒。

第2期 「危機」の5年(1997~2001年) 平均成長率0.5% 株価変化率▲44%
 97年消費税3%から5%、銀行・証券等金融危機。

第3期 「改革」の6年(2002~2007年) 平均成長率1.8% 株価変化率 35%
 不良債権処理と郵政・道路公団民営化等構造改革で景気回復・税収増加。

第4期 「もっとも失われた」5年(2008~2012年) 平均成長率▲0.2% 株価変化率▲27%
 2008年リーマンショック、2011年東日本大震災と政府・日銀の無策。

第5期 「再挑戦」の7年(2013~2019年) 平均成長率0.6% 株価変動率 62%
 アベノミクスで日本経済の景色が一変。消費税5%から8%で一時マイナス成長。

(2)   平成に世界に大きく遅れたのは、「物価」と「人口」が失われたから

 名目GDPの変化をみると、日本1.2倍に対し、米国3.4倍、英国3.1倍、ドイツ2.6倍と引き離された。短絡すると日本人の名目所得は他の先進国の半分となった。

 購買力平価で調整した一人当たりGDPでみると日本2.2倍、米国2.6倍、英国2.6倍、ドイツ2.5倍と極端に差はない。原因は、物価(デフレ)と人口伸び率にある。

 その差を生み出した10の愚策を列挙している。

① バランスシート対策せずに「総合経済対策」の公共投資頼み

② 住専に対する公的資金投入の中途半端

③ バブル後不況の最大の責任者~日銀の金融政策の間違い

④ 貸金業法の改正

⑤ 民主党による経済財政諮問会議の廃止~マクロ政策の放棄

⑥ 民主党の子ども手当と財源不足で頓挫

⑦ JAL救済等によるゾンビ企業の救済

⑧ 東日本震災の復興構想は縦割りで魅力ある構想出ず

⑨ 東日本震災の復興財源に増税

⑩ キャップ制放棄による歯止めなき歳出拡大

 令和の時代以降は、平成を教訓に「スマートシティー構想」等非連続の変化を実現する必要を強調しています。詳細は書籍をお読みください。

 3冊を読んで、改めて政治主導のマクロ政策の重要性を再認識した次第です。

 私たちは、普段は私事・仕事が中心ですが、若い世代、孫の世代、まだ生まれていない未来世代を考える責任=志事をもたねばならないと思いました。

 BIPは今年新しいミッションを掲げました。

「将来世代のために、若い世代と一緒に、統合知性(BI=ビジネス・インテグレーテッド・インテリジェンス)で企業革新・富国革新に貢献する」

 若い世代と共にBIPとしてこれからの日本で何ができるのか更なる議論に取り組んでいきたいです。

(参考:3月27日 BIエッセイ>>「BIP()創立12周年 明るく楽しくイノベーションしませんか?~ソサエティー5.0の時代に、業績を劇的に変えるBIP7つの戦略プログラム~」

以上

※読者の皆様へ、より便利に参考情報・参考書籍をご紹介するために、Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムを採用しています。

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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