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2015/10/02 第15回「日本企業の売上高利益率の低さの要因と利益率アップの戦略とは?」

 前回のコラムで、日本企業が欧米の企業に比べてROEが低いことの最大の要因は売上高純利益率の低さにあるとの日経新聞の記事を紹介しました。記事の表を以下に再掲します。

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[出典:724日付け日本経済新聞]

上表の事業マージンとは売上高当期純利益率のことです。以前からROEの低さだけでなく、日本企業の売上高利益率の水準が欧米企業に比べ低いということが言われ続けてきました。

なぜ日本企業の売上高利益率は低いのでしょうか?
これについては、色々な見方があると思いますが、私は、その要因として日本企業は低価格戦略に走る傾向が強いという点を挙げたいと思います。

 私は、昔、アメリカのビジネススクールで勉強していた時に、アメリカの学生は事業の展開として価格は高く設定すべきで価格競争に陥ることを避けたいという思考を強く持っていることを感じました。授業でも価格競争に陥らないようにするためにどのようにすべきかという視点が強調されていたように思います。これは私が留学していた1990年頃の米国企業(特に製造業)の価格競争力が弱かったことと関係しているかとも思われます。

今では米国企業の価格競争力は上がってきていると思われますが、彼らは、価格競争は避け、価格をできる限り高く設定できる事業展開を行いたいという思考が今でも強いのではないかと思います。高い価格設定ができるようにするためには、付加価値を高めた差別化を行なうことが必要となります。米国企業の代表例としてアップルが挙げられますが、アップルはまさにハードとネットとの融合の世界で高付加価値の事業展開をしています。

一方、日本の製造業は高品質・高付加価値な製品開発には取り組んでいますが、その事業展開は価格競争に陥りがちです。もちろん競争市場なので、“より良いものをより安く”という考えは重要なことではありますが、“より良いものをより高い価格で”という発想があっても良いのではないでしょうか?

日本の人口は2008年をピークに減少局面に変わりました。今後、人口減少がどんどん進展していきます。日本の市場規模は多くの業界で縮小していくことが想定されます。昔のように市場の成長を背景に薄利多売で儲けるというビジネスモデルは成り立ちにくくなっていきます。市場が縮小する中、販売量の追求には限界があります。薄利多売とは販売量で勝負する考え方です。そうではなくて、粗利益の高さで勝負することが必要になってきます。

顧客が高い価格を払っても手に入れたいと思うような魅力的な高付加価値の商品・サービスを提供していくことが重要となってきます。本来、差別化戦略とは、他社とは違う高付加価値な製品・サービスを提供することで、低価格を訴求する他社に勝つという戦略です。つまり差別化戦略の本質は、まさに差別化された高付加価値な商品・サービスを相応の高い価格で販売することにあります。

 

日本企業の売上高利益率が低い要因として、日本企業の“より良いものをより安く”という発想、薄利多売の考え方が、その背景にあったと思われます。しかし、市場縮小が進む今後の事業環境においては、販売量で勝負の薄利多売の発想をあらためて、高い粗利益で勝負するという発想に切り替えていく必要があります。顧客が高い価格でも購入してくれる魅力的な高付加価値の商品・サービスを提供するという、本来的な差別化戦略が重要となってきます。

以 上

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thumbnail_otsuka大塚 直義(おおつか なおよし)

コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)

経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。

 

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