2015/12/01 第17回「成城石井の高粗利ビジネスの秘密」
前回のコラムで、高粗利のビジネスの創り方について話をしました。丁度、最近、東洋経済オンラインやカンブリア宮殿で成城石井が取り上げられていましたので、その記事や番組内容の引用をしながら、成城石井の高粗利の秘密に迫っていきたいと思います。
ご存知の方が多いと思いますが、成城石井は高級スーパー、高品質スーパーなどと言われ、関東を中心とした大都市圏で132店舗を展開しています。「営業利益率は6~8%程度とみられ、通常は2~3%が一般的なスーパーのそれを大きく上回」っています。
成城石井の特徴は、“こだわり商品”の品揃えにあります。
まずは品揃えについて見ていきましょう。
「ワイン、チーズ、生ハム、紅茶、コーヒー、オリーブオイル、ジャム、味噌、牛乳、豆腐、納豆、昆布、鰹節、ダシ、チーズケーキなどなど、有名なメーカーのものも置いてあるが、成城石井でしかお目にかかれない商品も多く、買うときの選択肢が幅広い」のが特徴となっています。品揃えの豊富さは、例えば、チーズは210種類、ワインは700種類の品揃えがあるといいます。
成城石井の原昭彦社長は、カンブリア宮殿の中で次のように語っています。
「あまり売れない商品の品揃えも必要。お客様のニーズが多様化しているので、品揃えを充実させて、お客様の買い物の楽しみ、選ぶ楽しみを残しておきたい。」「成城石井に行けば何かあるだろうと遠方から客が来てくれて、リピート客になってもらえる。」「売れるものだけを揃えるのでは店はつまらなくなってしまう。」
次に、こだわりの商品について見ていきましょう。
「人気の高い成城石井オリジナルのコーヒーは、オールアラビカ種で、クオリティに対するコストパフォーマンスの良さが支持を得ている」とのことで、「プロのコーヒーショップのマスターが買いに来ることもある」といいます。
「自家製ソーセージは国産のフレッシュな豚肉を使用。ドイツ岩塩で味付けし、ポークウインナーは天然の羊腸に詰めて作る。燻製用木材は本場ドイツからブナの木を取り寄せている。世界最高峰の食肉加工コンテストで数々のメダルを獲得するなど、その技術と品質は本場ドイツでも認められているレベルだ。オリジナル商品の数は2000点以上に及ぶ。」
人気の水餃子は、6年かけて皮の厚さを調整したそうです。「スーパーでは食品工場などへの外注で総菜を品揃えしているのが一般的ながら、成城石井は自社で工場を持ち、200種類以上の総菜や加工食品を製造し、全国の店舗へ配送している。」「総菜はすべて一流のホテルやレストラン、和食店などで働いていたプロの料理人が作る。こだわりの食材を使用し、機械は使わず基本的に手作業で作っていく」という徹底したこだわりぶりです。
原社長は次のようにも語っています。
「効率のいいものを求めずに、ときには非効率なものまで、手をかけ時間をかけて、いいものをしっかりとお客様に出していくことが非常に重要。それは短期的には利益が出ないかもしれないが、そういった商品をつくっていくことで、お客様がファンになってリピートして頂いて、将来的に利益が出るビジネスモデルになっていく。」
「成城石井の原昭彦社長は「消費の2極化が起きている」と語っている。とにかく安い、を求める消費と、価格は安くなくともこだわった商品、安全・安心な商品、ちょっといい商品が欲しい、という消費だ。」
カンブリア宮殿の番組の中で、成城石井へ来た若い女性客が「たまにはいいものを食べたい。自分へのご褒美にしたい。」と話していたのが印象的でした。元々は成城という高所得世帯の多い地域で創業した成城石井ではありますが、ターゲット顧客を富裕層に絞っているということではありません。一般の消費者にも、多少高くとも成城石井でしか手に入らない、おいしい商品を買いたいというニーズがあるのです。
また、成城石井では、店舗の立地に応じて、その店舗に求められるお客のニーズを巧みにとらえて、品揃えを柔軟に変えることをしています。同社の新店舗出店のペースは、年10~15店舗だといいます。地域のお客様のニーズに適した品揃えで店舗作りを行い、さらに出店後もお客様の声を聞いて品揃えを変えていく。従って「130店舗が違うフォーマットを持っている」と原社長は語っています。
成城石井の“本当においしいものを世界中から探し回ってお客様に提供する”という“こだわり”のビジネスモデルは、まさに差別化された高付加価値ビジネスです。
スーパーマーケットは商品が安くなければ売れないという概念を打ち破った画期的なビジネスモデルと言えるのではないでしょうか。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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