佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2008/10/01 世界企業へと発展する武田薬品工業、日本板硝子の改革

―読書の秋 日本を元気にする100年の視野と智慧、勇気を求めて(3)―

 今月もBIエッセイでは“読書の秋 日本を元気にする100年の視野と智慧、勇気を求めて”様々な本を紹介したいと思います。今回は、日経BP社『日経ビジネスマネジメント VOL.003 2008年秋』の紹介です。定期購読する日経ビジネス(2008年9月22号)の別冊です。テーマは「リーダー創造」ですが、私の理解では“世界的”リーダー創造です。

 最近、日本企業の経営トップも雑誌や著書で自社の重要な経営戦略や改革の詳細を紹介する例が増えている。欧米企業トップが著書を書く例は多い。よく知られた日本企業であるだけに、大変興味が湧く。同時に、経営の勉強と考えても先端事例研究として大変良いことだと思う。日本の経営者のオープンマインドの進化に感謝したい。
 
 グローバル時代において、世界企業に伍して発展するためには、海外市場への展開が不可欠であるのは自明である。しかし、国内中心の大企業が、世界の大企業への発展は容易ではない。まず、その改革を決断するリーダーが必要であるが多くはない。世界企業への舵を切った有名な大企業のトップがその改革の内実を率直に話している。

(1)―武田薬品工業 会長 武田 國男―「「バカ」でなければ改革はできない」

 武田氏が1993年に社長就任後、15年で売上高は2倍、営業利益は5倍になった。
現在、同誌19ページの世界の製薬会社20社の売上高と税引き前利益率(2007年年度)によると、武田薬品工業の売上高は17位である。トップのファイザーは約4倍である。20位のアステラス製薬を含め、日本企業は2社であり、圧倒的に欧米企業の強い産業であるのがよくわかる。しかし、武田薬品工業の税引き前利益率は42%で世界一となった。

 武田氏は、『こんなに変わった会社はほかにないやろーー。こう思うほど私が社長を務めていた間に武田は変わったのと違いますか。社長になる前から儲かってはいましたけど、まだ日本の国内だけの「薬屋さん」だった。それを変えて本当に儲かる会社にしましたからね。事業の国際化も進んで、海外の売上げが国内を上回るようにもなった。「改革」と呼べるかどうかはわかりませんがね。』(同誌14ページ)と謙虚ながら、率直に変革の大きさを述べている。

 縮小する一方の国内市場オンリーではジリ貧になる。世界最大市場で価格も自由に決められる米国市場への攻めを決断する。しかし、世界企業とたたかうためには収益性の差を埋め、優位になる必要がある。高付加価値、高生産性、経営資源の重点配分の中期計画を信念持って実施した。儲かっている会社が事業再編、人員削減を含む猛烈な改革を実行したのだ。改革の実行は誰でもできるが結果がでるかどうかが問われる。
 「失敗する方が多いので利口な人は絶対に手をださない。改革なんて一番バカな人がやることなんですよ。バカでなかったらできません。」(同誌17ページ)という言葉に、リーダーの矜持とは何かを問うている気がした。

 儲かった後、長谷川社長にバトンタッチし、2005年から海外のバイオベンチャーの買収を始め、2008年5月にミレニアム・ファーマシューテイカルズ(米バイオ医薬品メーカー)を約9,600億円で買収した。世界10位以内が見えてきた。

(2)―日本板硝子 取締役会議長 出原 洋三―「揺るがぬ志で外国人をトップに」

 2006年に規模が2倍の英ピルキントンを買収、「小が大を呑む」決断は内外に衝撃を与えたが、更に2008年6月にはピルキントン出身の英国人をCEOに抜擢した。規模は3倍の8,656億円(2008年3月期)となり、グローバルトップ争う世界企業に変身した。

 簡単にできるのだろうか!誰でもが持つ疑問である。
 
 グローバル化の時代は、できるかどうかの前に、リーダーは世界に出なければ買収されるか衰退するというリアリテイーに立ち向かわねばならないという現実を実感した。成功するためには、例外なく、必要な改革はすべて実行するというリーダーの矜持が問われている。

 自動車用と建築用が収益の2本柱である。自動車メーカーは、消費地での現地調達、現地生産である。自動車メーカーの世界的生産ネットワークに対応できない部品メーカーは生き残れない。それが、現実である。

 出原氏は、世界の現場で戦ってきた指揮官として、こんな言葉で語る。
『グローバル化の進む時代の経営トップは、優秀なサラリーマンではもうダメだ。2006年に英ピルキントンを買収するまでの過程で、つくづくそう感じました。志や大望のような「ぜひこうしたい」というビジョンがリーダーにないと、現状の延長線上でしか改革ができません。・・・(略)・・・どの山に登るのかがはっきりしていれば、「目指すのはここだ」と、後についてくる人にいつでもいえます。』(同誌27ページ)

 出原氏自身が、今でも週2回の個人レッスンで英語を学んでいるという。日本板硝子のリーダーには英語が不可欠になった。もちろん、重要な会議は通訳を使っているが、どうしても直接話したい時は、下手でも英語でやりとりするそうです。

 国際化が進むスポーツに例えて、企業と日本人のあり方についてこう話す。
『国際化は、人材が混じり合ってこそ本物になります。国籍ではなく、優秀であるかどうかでリーダーを選ぶ。本音では日本人がたくさんいるといいなと思いますが、大事なことはこのグループが発展することです。単に日本人の情実で人事を決めて、会社全体が地盤沈下したらどうしようもない。プロ野球やサッカーと同じです。良いメンバーを集めないで負けてしまっては話になりません。』(同誌31ページ)
 苦労の連続だが、必死に変化を加速させると信念は揺るがない。

以上

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