佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2009/11/16 共鳴する偶然の出来事

 私がBIエッセイで書いたテーマが、その後他メディアでも取り上げられることが今年春から数回起きていた。不思議な感慨を覚えたが、私はその体験・現象に大変興味を抱いた。同じ時に、異なる方が同じテーマに関心を持ち、それぞれの立場と観点から取材・企画・執筆しているのである。

 偶然の出来事と言ってよい。しかし、共鳴する何かを写している気がする。最近の出来事2つを皆様と一緒に考えてみたいと思います。

 一つは、岡本太郎記念館平野館長が提起した新しい岡本太郎像への関心である。10月26日BIエッセイの直後、11月1日日経新聞、また11月8日・15日の2回にわたって産経新聞篠原記者の特集連載記事が掲載されました。

 もう一つは、10月15日発売されたばかりのユニクログループ柳井会長兼社長の著作『成功は一日で捨て去れ』が提示した経営・生き方への波紋である。10月19日BIエッセイ直後、11月10日発売PHP月刊誌『Voice』12月号が読売新聞尾崎記者取材・構成の特別インタビューをトップに掲載している。


(1)岡本太郎さんへの誤ったイメージを変え、実像を伝える平野館長の熱き思い!

参考文献 参考文献
 私は、10月26日にBIエッセイ『南青山スポット!新創根津美術館の静、岡本太郎記念館の動が誘う』(詳細はこちら>>)を書いた。直後、日本経済新聞11月1日読書欄に『岡本太郎』の著書で岡本太郎記念館館長 平野暁臣(ひらのあきおみ)氏が登場した。産経新聞は11月8日と15日文化欄に、紙面上段半分を使って「岡本太郎と爆発」と題する大型連載企画を掲載した。

 10月、南青山にある岡本太郎記念館を訪ねた。その際、岡本太郎・岡本敏子『愛する言葉』と館長平野暁臣氏の著作『岡本太郎 「太陽の塔」と最後の闘い』(参考文献6)を買って読みました。

 BIエッセイの主題は、温かいが強烈な共鳴エネルギーを発揮している奥様岡本敏子さんの『愛する言葉』にあった。思いがけなく強い印象を受けたからである。
同時に、岡本太郎さんの芸術の意味を十分に理解できないでいた私には、平野館長の著作は新しい発見であった。岡本太郎・宗左近『ピカソ〔ピカソ講義〕』(参考文献6)も再読し、そのことを短い言葉で「いつものようにまず2階の作品を観る。太郎氏が、ピカソの芸術を超えて人間の生命力を蘇らせると闘い続けた作品がある。抽象の中に動を強く感じる人間臭い空間。」と書いた。私の記憶は、新しい岡本太郎像に置き換わった。
 
 日経新聞、産経新聞両方の記事は、平野館長の新しい岡本太郎像への関心にあったと思われる。

 日経新聞は、読書欄で『岡本太郎 「太陽の塔」と最後の闘い』の著者岡本太郎美術館館長平野暁臣氏を取材。「メディアのおかげで有名にはなったが、流布しているイメージは奇人変人の印象が強い。芸術や社会と真摯(しんし)に向き合った太郎さんの姿を知るともっと面白い」と平野館長の本出版への思いを紹介している。

 本格的なのは産経新聞である。「日本人とこころ」という私もよく読む人気の文化欄の紙面半分を使って、篠原知存記者署名の2回連載の大型企画となっている。

 タイトルは「岡本太郎と爆発」である。40代以上は、万博の太陽の塔と「ゲージュツはバクハツだ!」のフレーズの連想が多い。爆発の人、変な人のイメージで知られてはいるが、本質は理解されていないとの痛切な思いが平野館長にあったと紹介している。

「爆発とは、対極主義のことだ」という平野氏の言葉に篠原記者のジャーナリスト魂とプロフェッショナリズムが躍動する。

 岡本太郎さんの人生も紹介している。父一平は人気の漫画家、母かの子は歌人、仏教研究家、小説家。フランスに留学した太郎自身、フランス語を身につけ、パリ大学で文化人類学を学び、バタイユの秘密結社にも参加した。カンディンスキーはじめ多くの画家、写真家キャパ等との交流。岡本太郎形成の骨格に取材を広げている。

 更に、縄文土器の新しい意味付けを提起した岡本太郎の思想的、精神的広がりにも言及している。川崎市岡本太郎美術館は今、岡本太郎がこだわった色「赤」展を開催中である。

 趣は異なるが、共鳴した偶然の出来事の真因を何度も考えてみました。やはり、岡本太郎記念館館長に就任した平野暁臣氏の「岡本太郎の真実」を伝えようとする思いと「新しい岡本太郎論の輝き」ではないだろうか?そして、岡本太郎さん自身のピカソを超えようと真摯に生き、製作した作品の力でないか?

 「信念の魔術」という言葉を思い出した。一人の信念が、一冊の本が、人を変え、偉大なる真実の創造主となる。平野館長も「信念の魔術師」のようだ。

(2)ユニクロ会長柳井正氏の社内メーッセージ公開は、日本人への熱きエール!

参考文献
 私は、10月19日にBIエッセイ『ユニクロ5兆円実現を目指す、経営者200名養成計画に寄せて』(詳細はこちら>>)を書いた。直後、11月10日発売のPHP『Voice』(参考文献7)12月号のトップに読売新聞記者 尾崎真理子氏取材・構成の柳井氏特別インタビュー「わが経営の志-開拓の精神を抱き続けるために」が掲載されました。『Voice(ボイス)』は、経営者やビジネスマンに読まれる月刊誌ですので、もうお読みになった方もいると思います。

 10月15日発売されたばかりのアパレル製造小売業(SPA)ユニクロ等を展開するFR(ファーストリテイーリング)会長兼社長柳井正氏の著書『成功は一日で捨て去れ』(参考文献8)は、社内へのメーセージの公開という大胆な試みであると思います。それが、大きな波紋となり、渦になる予感がします。今、ほとんどの大型書店では山積みされています。

 世界一・グローバルナンバーワン実現への志に感銘し、私はBIエッセイで紹介しました。「事業リーダー、経営者200名育成に年数十億の教育予算を投資するそうです。スカウトだけでの経営者の育成は難しく、自社で意識的に養成する必要を痛感したからと述べています。世界トップのアパレル小売業GAP、ZARA、H&Mと競争し、本気で世界一のグローバル企業を実現する意気込みが伝わってきます。」

 『Voice』12月号に掲載されたインタビューの一部を紹介します。

『独り勝ちといわれるほど勝っていません。前年より売上げが二倍、三倍になったわけではなく、たかだか二~三割増ですから』

『「正常に縮む」みたいなことはありませんね。縮めばすなわち衰退、あるいは病気になると思います。』

『個人と私企業こそ、社会を変え、世界を良い方向へ向けることができる、と考えている。変革するのは、国や行政ではありません。』

『服を変え、常識を変え、世界を変えていくことをめざしている。それが私のいう「世界一の会社」ということですよ。』

 尾崎真理子記者は、『悪戦苦闘の記録を経営者自ら伝えることで、いま日本に必要な「希望」と若者が「志」をもつことの大切さを多くの経営者やビジネスマンへ伝えたいと柳井氏は語る。』と紹介している。(参考文献7:33ページ)

 私も、尾崎記者も同じ思いを共有しつつあるのではないか。厳しい言葉ではあるが、現代に突き抜ける柳井氏の勇気ある実行精神に感銘したに違いない。

 最近、吉田松蔭が松下村塾塾長だったのは約1年だけであったのに、何故国家有為な人材を多く輩出したのか理由を調べてみて次の四字熟語に出会った。武士階級の中での身分の差、士農工商の別なく塾生を認めた。また、理論のためだけの知識ではなく、実行するための叡智・態度即ち胆識の大事さを掲げた。

『知行合一(ちこうごういつ)』



(参考文献)
1.日本経済新聞2009年11月1日号 23面 読書
2.産経新聞  2009年11月8日号 23面 文化
3.産経新聞  2009年11月15日号 13面 文化
4.岡本太郎・岡本敏子『愛する言葉』((株)イースト・プレス 2006年6月)
5.平野暁臣『岡本太郎 「太陽の塔」と最後の闘い』(PHP新書 2009年9月)
6.岡本太郎・宗左近『ピカソ[ピカソ講義]』(ちくま学芸文庫 2009年9月 原本は1980年11月 朝日出版社より刊行)
7.PHP月刊誌『Voice』2009年12月号
8.柳井正『成功は一日で捨て去れ』(新潮社 2009年10月)
9.監修・柳井正『ユニクロ思考術』(新潮社 2009年10月)
10.柳井正『一勝九敗』(新潮社 2003年11月)

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