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2010/11/08 秋美遊③上野公園で天平の華やぎと仏の光に包まれる感動!特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」

私もそうですが、おそらく多くの皆様が修学旅行で訪れた古都奈良の東大寺。私は、高さ15メートルの大きな大仏と南大門の金剛力士像を少年の目に驚きをもって見たことは今でもよく覚えています。11月3日文化の日、上野公園の東京国立博物館平成館で特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」(10/8~12/12)を鑑賞しました。女性の仏像人気でしょうか、女性が意外に多い印象も受けました。

今回の特別展は、光明皇后1250年御遠忌という節目を記念して開催されるものです。国宝である八角燈籠や法華堂の本尊不空羂索観音菩薩立像(ふくうけんさくかんのんぼさつりゅうぞう)の光背は寺外初公開となります。

正倉院宝物が、11月2日より11月21日までの期間限定で特別公開され、貴重な宝物を見ることもでき大変感激しました。

東大寺の国際性も見ものです。752年開眼供養の導師は南インド出身の僧であり、外来の楽舞が演奏されたそうです。この上演時使われた伎楽用の面がたくさん展示され、楽しいですよ。

館内には4つの会場が設けられ、第2会場では、実物大の壮大なスケールのバーチャル東大寺盧舎那仏(大仏)と一体となる静謐な空間を体感しました。

今回も東京国立博物館より画像18点をお借りして、皆様に弊社WEBサイトでご紹介することができました。是非、特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」にお出かけになり、深い感動に浸って頂きたいと思います。
東大寺展にて

(1)豪壮なスケールのバーチャル東大寺盧舎那仏(大仏)展示室にビックリしました。

バーチャル大仏 ©読売新聞社・凸版印刷
バーチャルリアリティー映像コーナー (イメージ) ©読売新聞社・凸版印刷

第2会場のバーチャル東大寺盧舎那仏(大仏)展示室は必見です。10数分間の映像で実物大の壮大なバーチャル大仏を体感してビックリしますよ!

1250年以上前、聖武天皇の発願によって盧舎那仏が造立されました。大仏さまは、正式な名称を盧舎那仏(るしゃなぶつ)といいます。「盧舎那仏は十法(じっぽう)世界をあまねく照らす仏、光り輝く仏という意味である。」(参考文献3:P20)

「東大寺は、1180年と1567年の2度火災に合い多くを焼失、現在の大仏殿は江戸時代に建てられたもので、大仏については創建当時のものは台座と下半身の一部といわれています。そこで今回、最新のコンピュータ技術を駆使したバーチャルリアリティーにより、創建当時の大仏および大仏殿を再現しています。高さ約15メートルの堂々たる大仏の姿を間近に体感できます。手や顔のアップ、背中など、いつもは見ることのできない姿をあらゆる角度から約8メートル四方の大画面で再現しています。」(※光明皇后1250年御遠忌記念 特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」公式WEBサイトより抜粋)

≪法華堂付近出土品 三彩軒丸瓦≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 
≪法華堂付近出土品 三彩軒丸瓦≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

東大寺の前身寺院のものとみられる三彩瓦です。東大寺の前身から創建当時の瓦がたくさん発見されており、多彩な色も失わず残っていました。

≪重文・西大門勅額≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
≪重文・西大門勅額≫奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

平城京の二条通の東端に西面して建立された西大門に掲げられた大きな額が見られます。額面に刻まれた「金光明四天王護国之寺」は国分寺の正式名です。聖武天皇の筆と伝えられ、勅額と呼ばれるそうです。

聖武天皇が早世した皇太子基(もとい)親王の菩提をともらうために金鐘山寺(金鐘寺)を建てたのがはじまりと言われます。聖武天皇は、741年仏教によって平和な国家を作ろうと、国分寺と国分尼寺を全国に造るように命じた際、大和国の国分寺である金鐘山寺が昇格して金光明寺となり、747年東大寺と称されるようになったそうです。

東大寺はまた総国分寺で全国の中心寺院であり、唐僧鑑真(がんじん)によって戒壇院も建立されました。また、南都六宗の教理研究を究めた学問寺でもありました。

(2)初公開-大型寺宝の細密絵画、工芸にみる世界水準の平城京仏教芸術を知る

大仏殿の前庭中央にある、高さ約4.6メートルの八角燈籠(国宝)と、法華堂の本尊・不空羂索観音菩薩立像(ふくうけんさくかんのんぼさつりゅうぞう)の高さ約5メートルの光背を寺外で初めて公開しています。ともに細部まで華麗な装飾が施されており、天平の技と粋の結晶と言われます。

≪国宝・八角燈籠≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
《国宝・八角燈籠》 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
間近で見ると約4.6メートルの燈籠の大きさが実感できます。国内最古で最大の金銅製燈籠だそうです。現在は緑色を呈していますが、制作当初は全体が金色に輝いていたそうです。

≪国宝・八角燈籠火袋羽目板 鈸子(ばっし)をかなでる音声菩薩(部分)≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 
《国宝・八角燈籠火袋羽目板 鈸子(ばっし)をかなでる音声菩薩(部分)》 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

≪国宝・八角燈籠火袋羽目板 横笛を吹く音声菩薩(部分)≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
《国宝・八角燈籠火袋羽目板 鈸子(ばっし)をかなでる音声菩薩(部分)》 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館

八角燈籠の火袋に取り付けられた羽目板に音声菩薩像を表現しています。「円満充実した姿、激しく屈曲する帛の表現、エッジのたった斜格子の透かし、あたかも鋤き彫りを施したような、衣や唐草の壁の表現など、技術と表現力の高さがうかがわれる。」(参考文献1:P200)

(3)期間限定(11/2~21)-校倉造で有名な正倉院宝物の精華に見入りました。

正倉院は大仏殿の北西にあり、東大寺の倉として建造されました。天平勝宝8年(756)、聖武天皇の死後、光明皇后が天皇の遺品を奉納したのが正倉院宝物の始まりです。大仏開眼供養会で使われた由緒ある品々や光明皇后が庶民のためにも集めた薬を見ることができます。明治時代、国の管理になるまで、東大寺は千年以上も宝物を守ってきたのです。

≪縹縷(はなだのる)(開眼縷)≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)            
≪縹縷(はなだのる)(開眼縷)≫</b> 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
藍染めの鮮やかな縹色の紐。大仏開眼供養会で、大仏の眼に瞳を描く筆をつなぎ、聖武天皇、光明皇后ほか参集した人々が握って縁を結んだ紐です。全長およそ200メートル。

≪桂心≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
≪桂心≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
正倉院北倉に収蔵された60種の薬物の一つで正式名はケイヒ(桂皮)という。現在でも安中散・葛根湯など漢方薬の構成生薬であり、香辛料シナモンとして馴染み深いですね。

≪墨画仏像≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
≪墨画仏像≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
麻布二枚に上下に縫い合わせて正方形の画面として、雲に乗った菩薩を墨で描いたものという。菩薩像はササン朝ペルシャの影響受けた三日月方の飾りが付いた三面宝冠を被る。

≪臈纈屛風 象木≫ (ろうけちのびょうぶ ぞうき) 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
≪臈纈屛風(びょうぶ) 象木≫ 奈良時代〔8世紀〕 正倉院宝物(11月2日~21日展示)
奈良時代に盛んだった臈纈染め技法を使って茜の植物染料で染められているそうです。ササン朝ペルシャの樹下動物文と同様の構図をデザインしています。

(4)国際性豊かな天平の至宝に驚きます

誕生釈迦仏立像(国宝)は、灌仏会(かんぶつえ)の本尊としてつくられました。おおらかで豊満な表現に天平盛期の特色がよく表れています。誕生釈迦仏立像がたつ大きな深皿状の灌仏盤の表面には草花や飛仙など天平の図柄が細かく刻まれています。また、金堂鎮壇具(国宝)の数々も天平文化の華麗さを示す貴重なものです。

≪重文・伎楽面 酔胡従≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
≪重文・伎楽面 酔胡従≫  奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
写真提供:奈良国立博物館

中国東南地方に起源をもち、百済から伝わった伎楽に使う面です。酔胡従は、ペルシャ地方(胡国)の王様に使える従者で、酒に酔い、笑みを浮かべ、愉快そうな表情ですね。

≪国宝・誕生釈迦仏立像及び灌仏盤≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
≪国宝・誕生釈迦仏立像及び灌仏盤≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

4月8日に行なわれる釈迦の誕生を祝う法会、灌仏会の本尊で、古代の作例中最大という。灌仏会では誕生釈迦に香水(甘茶)を灌ぐ。灌仏盤はその香水を受けるためのものです。

≪国宝・銀製鍍金狩猟文小壺≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵

≪国宝・銀製鍍金狩猟文小壺≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

身と蓋。銀鋳造して轆轤(ろくろ)挽きし、表面に紋様を彫り表し鍍金しているという。胴部に鹿を追う騎馬の狩猟人物を中心に、周囲に山岳や草花を配しています。

≪国宝・金鈿荘大刀(部分)≫(きんでんそうのたち) 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
≪国宝・金鈿荘大刀(部分)≫(きんでんそうのたち) 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

反りをもたない直刀。柄頭は瑪瑙(めのう)。足金物に当たる2ヶ所に水晶の半球を嵌めた座金具を打っている。唐草文様のデザインに満ちています。

≪国宝・銀製鍍金蝉形鏁子(さす)(宝相華透彫座金付)≫ 奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵
≪国宝・銀製鍍金蝉形鏁子(さす)(宝相華透彫座金付)≫奈良時代〔8世紀〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

蝉の形をした錠。蝉モチーフは再生の象徴とされて中国には多いが、日本には珍しいものといわれます。

(5)仏師・快慶作の国宝・重文彫刻の傑作を間近から観る

僧形八幡神坐像(国宝)、地蔵菩薩立像(重文)等は鎌倉時代を代表する仏師・快慶の作です。重源上人坐像(国宝)は大仏再興という難事業を成し遂げた上人の不屈の精神がうかがわれる肖像彫刻の名品です。

≪国宝・重源上人坐像(部分)≫ 鎌倉時代〔13世紀〕 東大寺蔵
≪国宝・重源上人坐像(部分)≫ 鎌倉時代〔13世紀〕 東大寺蔵
1180年平重衡の兵火で炎上した東大寺を、61歳の時抜擢され大勧進で1195年再興し超人的活躍をした重源上人の肖像彫刻。最晩年の容姿ですが、眼光は鋭く、口をへの字に結ぶ顔からは強靱な意志が感じられますね。運慶作との説もあります。

≪重文・公慶上人坐像(部分)≫ 性慶 作 江戸時代〔宝永3年(1706)〕 東大寺蔵
≪重文・公慶上人坐像(部分)≫ 性慶 作 江戸時代〔宝永3年(1706)〕 東大寺蔵
東大寺大仏殿は、1567年三好三人衆と松永久秀の合戦の兵火で再び消亡したが、誠と熱意の勧進で再度復興に尽力した公慶上人の彫刻。仏師性慶が体部、公慶の弟子即念が顔を造ったという。左眼は眼疾を忠実に写し、左眼が充血したように赤くなっている顔からは勧進の苦労と復興への意志が心に伝わって来ました。

≪国宝・僧形八幡神坐像≫ 快慶 作 鎌倉時代〔建仁元年(1201)〕 東大寺蔵
≪国宝・僧形八幡神坐像≫ 快慶 作 鎌倉時代〔建仁元年(1201)〕 東大寺蔵 写真提供:奈良国立博物館
写真提供:奈良国立博物館

理知的な独特の表情ですね。快慶作品の特徴なそうです。秘伝であるため、入念で美しい彩色がそのまま残されています。毎年10月5日転害会(てがいえ)に開扉され、拝観できるそうですが、今回はじっくりと見る貴重な機会です。東大寺の鎮守八幡宮のご神体として制作されました。明治初年まで日本は、神仏混合が一般的であったことを思い出しました。

≪重文・地蔵菩薩立像≫ 快慶 作 鎌倉時代〔13世紀〕 東大寺蔵
≪重文・地蔵菩薩立像≫ 快慶 作 鎌倉時代〔13世紀〕 東大寺蔵
神々しい美しさですね。「この像の美麗な姿は比類がなく、快慶作の代表作といってよい。着衣の彩色の上に全面に切金模様を施す。着衣に刻まれた衣文が浅く、同心円状に反復するので、彩色や切金模様が目立って、絵画的な美しさが見られるのが快慶の像の特色である。」(参考文献1:P217)

最後に、別冊太陽『東大寺』に掲載された華厳宗管長・東大寺220世別当である北河原公敬氏のインタビューの一部を紹介します。奈良国立博物館西山厚館長の「華厳とは何か」の問いにこう応えています。

「最近の我々には特にそういう意識がなくなってきたと思うのですが、私たちは個人個人で生きているのでは決してない、ということです。いろんな相互作用、縁で結ばれて生かされている。しかし、今の時代、そういう思うが欠けているように思います。華厳では、世の中に存在するあらゆるものは単独で存在しているのではなく、ありとあらゆるものが時間的に空間的にも相互に作用し合って存在しているといっており、それは実際、私たちが生きている社会にあてはまることです。」(参考文献2:P7)

以上

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光明皇后1250年御遠忌記念
特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」

会期:2010年10月8日(金)~12月12日(日)
※会期中、作品の一部に展示替えがあります。
会場:東京国立博物館 平成館 (東京都台東区上野公園13-9)

開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※ただし土・日・祝日は18:00まで、毎週金曜日は20:00まで開館

休館日:月曜日
※ただし10月11日(月・祝)、11月8日(月)、11月15日(月)は開館し、10月12日(火)は休館

主催:東京国立博物館、華厳宗大本山東大寺、読売新聞社
お問い合わせ:TEL.03-5777-8600 (ハローダイヤル)
東京国立博物館ホームページ

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(参考文献)
1.編集 東京国立博物館、読売新聞東京本社文化事業部『光明皇后1250年御遠忌記念 特別展 東大寺大仏-天平の至宝-』カタログ (発行 読売新聞東京本社 2010年10月)
2.別冊太陽 日本のこころ172『東大寺』 (平凡社 2010年10月10日初版)
3.小学館「古寺をゆく」編集部『古寺をゆく5 東大寺』(小学館 2010年10月6日 初版)

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