佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

 INDEX 

2012/01/10 楽しさ溢れる江戸のポップアート、現代に蘇る「没後150年歌川国芳展」

新年明けましておめでとうございます。 旧年中は、大変お世話になり有り難うございました。本年も引き続き、ご愛顧・ご指導の程、よろしくお願い申し上げます。新春に当たり、皆様が健康で明るい年となりますように心よりご祈念申し上げます。

本日よりBIエッセイ開始。2012年は「観る喜び、知る喜び、語る喜び」に溢れる話題でスタートです。

1月2日、BS朝日「時をかける浮世絵師~歌川国芳・江戸にスカイツリーを描いた男~」をご覧になりましたか?

今年5月にオープンする「東京スカイツリーにそっくりの尖塔がそびえ立つ浮世絵「東都三ツ股の図」(1831年ころ)が“江戸のスカイツリー”として話題と呼んでいる。作者は幕末前夜に活躍した江戸の浮世絵師、歌川国芳。」(後期19日以降のみ展示 参考文献2)実は、井戸掘り用の櫓を巨大に描いたものらしいが、三角の塔デザインはスカイツリーも同じらしい。不思議な縁(えにし)である。

六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されている「没後150年 歌川国芳展」。昨年末の内覧会で笑い一杯、楽しく鑑賞してきました。江戸のポップアートと例えられた国芳の作品は、とても江戸時代の作品と思えないほど斬新でダイナミック。現代の私達、子供から大人まで楽しめる作品ばかりです。

国芳没後150年を記念したこの特別展に是非足を運んでみてはいかがでしょうか?展示作品は、初公開の傑作や新発見の優品含め全部で421点と過去最大規模です。前期・後記で展示品入れ替えも行われ、2月12日(日)まで開催しています。
参考資料 参考資料

参考資料 参考資料

(1)海外でも人気高まる幕末の天才浮世絵師-歌川国芳とはどんな人物?

国芳は今回の特別展を見るまで深く知りませんでした。展示会作品と参考文献から国芳の生い立ちを簡単に紹介します。

【「ユーモア、豊かな創造力、卓越したデザイン」デビット・ビントレー新国立劇場舞踊芸術監督】
浮世絵研究家の岩切友里子氏は、図録の中で国芳を詳細に語っています。

「歌川国芳(寛政9[1797]-文久1[1861])は、画想の豊かさ、斬新なデザイン力、奇想天外なアイデア、確実なデッサン力を持ち、浮世絵の枠にとどまらない広汎な魅力を持つ作品を多数生み出した絵師です。

その作品は、浮世絵ファンのみならず、現代のデザイン関係者や若い世代の人々にも大いに注目されています。国際的にも高い評価を得ており、2009年にはロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで大英博物館所蔵品による「KUNIYOSHI」展が開催され、COOLな浮世絵として評判を呼び、この展観は2010年にはニューヨークでも開催されました。」(参考文献1)

産経新聞の「美の扉」2ページ特集によると、「ユーモア、豊かな創造力、卓越したデザイン・・・どれをとっても魅力的」と語る新国立劇場デビット・ビントレー舞踊芸術監督は、昨秋国芳の浮世絵から着想を得た新制作バレエ「パコダの王子」を発表し、大変好評を得たという。

【斬新な画面構成、独特の色彩感覚、機知に富む戯画-アーテイスト・グラフィックデザイナー・エンターテイナー】
「歌川国芳は、寛政9年(1797年)11月に江戸日本橋本銀町一丁目で生まれました。子供の頃から絵が好きで、12歳の時に鍾馗(しょうき)を描いて歌川豊国に認められ、入門につながったと伝えられています。しかし、その後の国芳の作品は僅かな数しか確認されておらず、浮世絵師としては困窮の時代を過ごしていたものと見られます。」(参考文献1)

30彩頃まで不遇の時代を送っていた国芳を一躍スター絵師に押し上げたのが、文政10年(1827年)頃から版元加賀屋によって出版された「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズ。108人の豪傑が画面狭しとばかりにド迫力で大暴れする。江戸に空前の“刺青(いれずみ)”ブームを巻き起こした。「武者絵の国芳」の名を決定づけた出世作といわれます。

他にも役者絵、美人画、風景画など機知に溢れた国芳の作品を楽しむことができます。

参考資料
*「通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 浪裡白跳張順」1828-29年頃(前期展示)

参考資料
*「真田与市能久・俣野五郎景久」1835頃(前期展示)

新奇なものに関心の強い国芳は、当時日本に渡ってきた銅版画などを入手し、西洋絵画も研究し、自分の作品の中に取り入れていたという。「西洋画の表現を取り入れた風景画にも取り組み、広く画法を学ぼうとする国芳の真摯な努力と研究心をみることができます。」(参考文献1)

【歌川豊国門下で葛飾北斎の奇想を継承し、現代のマンガに通じるユーモア溢れるアーティスト】
「天保13年(1842年)には老中水野忠邦が行った天保の改革の一環として、役者・遊女・芸者などの絵を出版することが禁じられました。錦絵の版元たちは大きな打撃を受けましたが、この禁令により、戯画や子ども絵が多く出版されるようになり、この分野でも国芳は縦横無尽に筆をふるい、機知に富んだアイデアに富む作品を多く描いています。」(参考文献1)

天保の改革で錦絵が打撃を受けると、国芳は吉原の賑わいを戯画で表現し、庶民を喜ばせる。遊女を国芳が大好きな猫に姿を変えて、権威に江戸っ子の気概をみせたりした。当時の表現の規制に対して、芸術家や情報発信者は知恵を振り絞り表現の仕方を工夫していたのですね。

幕末には、世の先をしっかりと見つめて、時勢を表現した商業作品である浮世絵を発表し続けた。1作品は200~300枚摺られる。“浮世”とは“現代(いま)”を意味した。「国芳は当時の世間の流行を題材としたトピック性のある錦絵を多数描いており、幕末の情報メディアとしての役割を担った絵師としても、最も活躍しています。」(参考文献1)

東北大学文学部教授、東京大学文学部教授、多摩美術大学学長などを歴任した辻惟雄(つじのぶお)氏は『日本美術の歴史』の中で国芳についてこう述べています。

「歌川国芳(1797~1861)は北斎の奇想を受け継いで、それをさらに大衆的なレベルに広げた。・・・現代のマンガに通じるいきいきとしたユーモアがかれの本領である。」(参考文献3)

(2)BIPのWEBサイトでも国芳の作品をご紹介

国芳の作品は、まず見ることに尽きます。展示会からお借りした公式画像と共にいくつかのみどころ作品をご紹介します。江戸時代の商業芸術とは思えない色鮮やかで生き生きとした作品ばかりです。

是非会場で、421点に及ぶ楽しさに溢れた生の色彩、表現、ウィット、ユーモアを味わってください。

<美人画  江戸の粋と団扇絵の美>
参考資料
*「鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘」1845年頃(前期展示)

参考資料
*「夏衣美人図」1845-47年頃(前期展示)

<説話 物語とイメージ>
参考資料
*「坂田怪童丸」1836年頃(前期展示)

参考資料
*「鬼若丸の鯉退治」1845年頃(後期展示)

<役者絵 人気役者のさまざまな姿>
参考資料
※「相馬の古内裏」1845-46年頃(前期展示)

<子供絵 遊びと学び>
参考資料
*「新板子供遊びの内 春のあそび」1841-42年頃(後期展示)

<戯画 溢れるウィットとユーモア>
参考資料
*「きん魚づくし ぼんぼん」1842年頃(後期展示)

参考資料
*「おぼろ月猫の盛」1846年(後期展示)

<風俗・娯楽・情報>
参考資料
*「たとゑ尽の内」1852年(前期展示)

動物たちの登場する戯画は、見ていてとても面白いですね。

150年以上も昔、これほどユーモアに溢れ、あっと驚くようなダイナミックな商業作品を生み出した機知と気概ある絵師がいたとは、驚きの連続でした。時を超えて、過去の偉人から未来への元気を頂きました。

以上

没後150年 歌川国芳展
会期:2011年12月17日(土)~2012年2月12日(日) 計57日間
※会期中、展示替えを行います。
前期:2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期:2012年1月19日(木)~2月12日(日)
開館時間:月・水~日曜日 午前10時~午後8時
火曜日 午前10時~午後5時
(いずれも最終入館時間は閉館30分前まで)
休館日:2012年1月18日(水) ※作品展示替えの為   
会場:森アーツセンターギャラリー
〒106-6150 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52F
ハローダイヤル:03-5777-8600
主催:日本経済新聞社、森アーツセンター
http://kuniyoshi.exhn.jp/

(参考文献)
1.日本経済新聞社『没後150年 歌川国芳展』図録
2.産経新聞 2011年12月11日号 「美の扉」
3.辻惟雄『日本美術の歴史』(東京大学出版会 2005年12月)

>>佐々木昭美へのご相談はこちら


thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

>>詳しいプロフィールはこちら

◆ご質問・お問い合せはこちらから
専門コンサルタントへの、ご質問、ご相談等、お気軽にお問い合せ下さい。

BIPコンサルティング無料相談会のご案内 IT系企業/フランチャイズビジネス/M&A/組織・人事/小売業/建設業関連企業

各分野プロコンサルタントとの無料相談会を実施しています。
お気軽にお申し込みください。

受付中の無料相談会はこちら

トップへ

サービスのご案内

無料相談会

お問い合わせ

コラム「ミニ講座」

BIエッセイ

特集コラム

採用情報

無料メルマガ

無料メルマガ
BIPニュース
配信中!

BIPからのお知らせ、ビジネスに役立つ情報、佐々木昭美のBIエッセイ要約等、月2回配信!

メールアドレス:

東北復興支援

ページ上部へ戻る
Top