佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2013/04/15 佐々木流 BI経営進化論第 第17回 リフレ政策で復活する日本経済を知る3冊

BI経営進化論

黒田日銀は、旧日銀と質と量で異次元の金融緩和を決定し、実際に実行し始めました。リフレ政策が日本経済を変えつつありますね。経済を先取りする株価が日経平均1万3000円を回復し、為替はドル円99円前後と過度な円高が修正されつつあり、輸出企業はもとより内需企業もまだら模様ながら企業業績の回復基調が鮮明になっています。賃金アップ企業も報道されつつあります。

政府と日銀が協調して、20年来のデフレと経済停滞(小泉・第1次安倍内閣を除く)との異次元での戦いを宣言したのは歴史上初めてです。政権交代後4ケ月で驚くべき変化ですね。

従って、リフレ政策によって、経済規模世界第3位の日本経済と日本企業の将来がどう変化するかは、日本はもとより世界が注目しつつあります。日本国民はもちろん、特に企業経営に携わるビジネスパーソンはそのメカニズムの基本を知ることは非常に重要だと思います。昨今出版された数多くの著作の中から、世界的に解明済みの理論で実証的な裏付けが明確な3冊を選びましたので是非読まれることをお勧めします。
参考資料

(1)岩田規久男・浜田宏一・原田泰編著『リフレが日本経済を復活させる――経済を動かす貨幣の力』

参考資料

私は、昨年末の企画2012/12/25 恒例!「明日に役立つ」年末年始にお薦めする本25冊 <ツイッター風140文字コメント付き>の第1冊目にイェール大学名誉教授 浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』(参考文献4)を以下のように紹介しました。
(・エッセイの詳細はこちら>>

「学術書でなく国民への書。ノーベル経済学賞に最も近いと言われる巨人の集大成。金融政策は決定当日からすぐ経済に作用する。日銀の金融政策がなぜこうも間違えるのかを世界中の識者60名以上にインタビュー。世界は、日銀が世界の普遍法則で金融政策を運営すれば日本は復活すると知っている。」

浜田宏一イェール大学名誉教授の提唱するリフレ政策は、第2次安倍内閣と黒田日銀の政策として実行され、著書は文字通り救国の書になりつつあります。

今回紹介する『リフレが日本経済を復活させる――経済を動かす貨幣の力』は、内閣官房参与となった浜田氏、日銀副総裁となった岩田規久男学習院大学教授、原田泰早稲田大学政治経済学術院教授など9名の研究者の著書。そのポイントは序に明確だ。
参考資料
※図 参考文献1 P26より

参考資料
※図 参考文献1 P27より

「デフレは貨幣現象であり、そうであるからこそデフレ脱却には金融政策が不可欠という私たちのアイデアを理解する安倍晋三総理の登場で、流れは変わった。脱デフレにはこれまで以上の大胆な金融緩和が必要という私たちのアイデアは、日本では学者やエコノミストの間でもなかなか理解されなかった。人口減少がデフレの要因という、現在の経済学説からは全く認められない学説が流布し、日銀もその謬説を大真面目に説く有様であった。

流れは変わったが十分ではない。誤った考えに固執して、結果的に、日本経済と日本国民を苦しませることに加担する人々の力はいまだに残っている。その力に対抗して、なぜデフレは貨幣現象なのか、なぜ金融政策によってデフレから脱却できるのか、なぜその過程で生産と雇用が増大するのかを、論駁の余地のないように明らかにすることが求められている。このように考え、本書を発刊することにした。」(参考文献1)

本書の目次を記し、論点を示す。ビジネスパーソンに読めてわかりやすい。
第1章 デフレの即効薬は金融政策
第2章 金融政策はストック市場からどのように波及するのか
第3章 貨幣がなぜ実質変数を動かすのか
第4章 資産市場はそのように実体経済を動かすのか
第5章 貨幣と金利との関係はどうなっているのか
第6章 財政政策は有効か
第7章 金融政策運営の望ましい枠組みとは何か
第8章 日本のケインズ主義に貨幣理論がないのはなぜか

(2)村上尚己『「円安大転換」後の日本経済――為替は予想インフレ率の差で動く』

参考資料
マネックス証券(株)チーフ・エコノミスト村上尚己『「円安大転換」後の日本経済――為替は予想インフレ率の差で動く』は、為替変動の要因を詳細に分析している。

更に、私が特に注目したのは、日本国民に関心の高い円安と生産・賃金の関係を実証的に解明していることです。

参考資料
※図 参考文献2 P17より

「図1は、1990年代半ばから現在に至るまでのドル円相場、日本人の給与、日本の物価の推移を示したグラフでる。
これを見れば、98年以降、傾向として日本で円高が続いていること、そして97年から2008年にかけては、われわれの給料がほぼ物価と並行して下がっていたこと、さらに2008年以降は、物価の下落率以上に、給料の落ち込みが激しくなったということがわかる。・・(略)・・ ただ、物価が下落する状態、すなわちデフレーション(デフレ)によって生活がラクになっている人もいなくはない。それは年金給付水準が維持された人々。或いは、過去の蓄財で生活している人々。もしくは、さほど給料が下がらなかった公務員や一部大企業の正社員などである。」(参考文献2)

円安で生ずる5つの効果とそのメカニズムを説明しています。これらは、日本国内の総需要(消費と投資)を増やすこと、すなわち名目GDP(名目国内総生産)が増えることにつながります。

1.デフレが和らぐことが、国内の設備投資、消費の数量を増やす効果
2.日本企業の輸出競争力が高まる効果
3.地方の地場産業や観光業に与える効果
4.海外工場や店舗においてドルベースで計上している売上・利益が円ベースでふくらむ効果
5.円安によって日本国内の雇用が増える効果

(3)若田部昌澄『経済学者たちの闘い(増補版)』

参考資料
早稲田大学政治経済学術院教授『経済学者たちの闘い(増補版)』を読んで、孤独ながら真理と国民の幸せを目指す経済学者の継続した闘いに熱い思いを感じた次第です。

本書は『経済学者たちの闘い――エコノミックスの考古学』(東洋経済新報社 初版2003年、第五刷2004年)を底本とした改訂新版です。

経済学史の専門家が、経済学が理論闘争の中で、経済の現実への理解度を高めてきたことを歴史的に整理しています。

もちろん、その中に、日本の昭和恐慌の原因とその打開政策、日本のデフレとその打開政策をめぐる闘いがあった。リフレ派は戦前も少数派であったが東洋経済新報社中興の祖石橋湛山とその仲間たちが昭和恐慌からの打開に戦った。現代のリフレ派も日銀や学者、エコノミスト等のデフレ派との長い闘いの中でやっと現実の政策に実行されはじめたばかりである。

本書の意義は、経済と国民のためには試され済みの経済学が有効であることを歴史的に判明していることを詳述していることだと思います。

「残念ながら現代日本ではリフレ派というと何か特別な経済学を信奉している特別な人々という誤解が生ずるので、正直あまり使いたくない言葉ではある。本書で訴えてきたのは、リフレーション政策とは経済学のごく普通な、そして歴史的にみて頑強な部分から出てくる提案だということだ。」(参考文献3)

我々ビジネスパーソンは、マクロ政治経済が日本経済や企業の交易条件を大きく左右する枠組みであることを改めて痛感することとなった。

「稼ぐビジネスパーソン」と「良きステイツマン」の複眼二刀流をお互いに磨きたい。
以上

(参考文献)
1.岩田規久男・浜田宏一・原田泰『リフレが日本経済を復活させる――経済を動かす貨幣の力』(中央経済社 2013年3月 定価 本体1800円+税別)
2.村上尚己『「円安大転換」後の日本経済――為替は予想インフレ率の差で動く』
(光文社 2013年3月 定価 本体760円+税別)
3.若田部昌澄『経済学者たちの闘い(増補版)』
(東洋経済新報社 2013年4月 定価 本体1000円+税別)
4.イェール大学名誉教授 浜田宏一『アメリカは日本経済の復活を知っている』
(講談社 2013年1月 本体1600円+税別)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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