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2022/11/25 「経済安全保障」第9回 政府、日本企業は早急に台湾有事に備えよ!把握すべき情報と対策の指針

こんにちは。BIP株式会社・経済安全保障コンサルタントの児嶋秀平です。私は現在、知的財産の専門家である弁理士として特許事務所を経営しています。弁理士になる前は、国家公務員として経済産業省、中小企業庁、資源エネルギー庁、警察庁、外務省、内閣官房等で30年間勤務しました。
この講座では、現内閣の最重要政策の一つである「経済安全保障」を巡る動向と、それが企業に与えるであろうインパクト等について、元国家官僚としての私見を交えつつご説明したいと思います。

今回は台湾有事の切迫性が増している状況を受けて、日本企業が今どの情報に基づいて、どのような対策を講じるべきかについてお話します。

目 次

中国における独裁体制の強化

10月16日から22日にかけて、中国共産党の第20回党大会が開催されました。中国の事実上の最高意思決定機関である党大会は、習近平国家主席の慣例を破る3期目の続投と、党規約における「二つの確立」を決定しました。

「二つの確立」とは、習氏を共産党の核心とし、習氏の思想を中国の指針として確立するものです。また、翌10月23日に発表された党最高指導部の政治局常務委員6名は、習氏に忠実なイエスマンのみで構成されたものでした。

この結果、習近平氏は中国においてかつての毛沢東や鄧小平をも凌ぐ超強力な独裁体制の構築に成功したと言えるでしょう。

台湾有事の可能性は高まった

このような中国における習近平氏による独裁体制の強化は、国際社会が懸念する台湾有事すなわち中国による台湾への軍事侵略攻撃の可能性にどのように影響するのでしょうか。

権力を強めた習氏は国内保守派の強硬論を抑えやすくなったので、台湾有事の可能性はひとまず遠のいた、という見方もありうるでしょう。一方、習氏の暴走にブレーキをかける者が誰もいなくなり、台湾有事の可能性はいよいよ高まった、と考えることもできます。全ては習氏ひとりの腹次第ということです。

彼がロシアによるウクライナ侵略の苦戦ぶりを見て冷静になれるのか、それとも大中華帝国再興の野望を抑えきれず台湾侵略に及ぶのか。日本国及び日本企業としては、当然、後者の事態を警戒し台湾有事への対策を加速させるべきでしょう。「最悪の事態に備える」のが、危機管理の要諦であるからです。

対策:企業独自の台湾在留社員の安全確保策を詰める

台湾有事への対策として最も重要であるのは、言うまでもなく、台湾に在留する邦人約2万4000人の安全確保です。この人数は、ロシアによる侵略直前のウクライナに在留していた邦人数250人の約100倍に相当します。

これだけの人々をどのような手段で、どのような優先順位で脱出させるのか。全員を救うのはおよそ不可能に近いミッションではないかと思われます。

したがって、日本国政府だけでは到底対処しきれないという前提で、日本企業は台湾に在留する社員(外国人社員も含む)及びその家族の安全確保策を独自に、そして早急に詰める必要があるでしょう。

対策:BCPの想定災害に台湾有事を加えて代替調達先の確保を検討

また、日本企業は、台湾有事に伴うサプライチェーンの停止、すなわち自社にとって重要な原材料や部品等の台湾からの供給が途絶する事態にも予め対策を講じておく必要があります。

このため、まずは自社の既存のBCP(事業継続計画)における想定災害の中に、自然災害や感染症だけでなく台湾有事を加えて、その想定上で台湾以外の代替調達先の確保を検討するのが現実的な対応でしょう。

特に、経済安全保障法の対象となる特定重要物資を取り扱う企業は、同法第9条に基づく「供給確保計画」を早急に策定すべきです。自社だけのためでなく、日本国全体の安全保障を確保するため、政府の支援を得てサプライチェーンの停止をなんとしても回避する社会的義務があるのです。

>>第9条を含む第2章の詳しい解説はこちら
「第3回 条文ベースの法案解説(第2章)特定重要物資の安定的な供給の確保」
https://www.bi-p.co.jp/column/14359/

対策:特定重要物資の政令指定を待たずに供給確保計画作りに着手

ただ、その特定重要物資の内容は年内に政令指定される予定であり、現時点ではまだ明らかではありません。しかし、10月13日に政府は自民党に対して以下の分野案を示したとの報道があります(原文は公表されていません)。

半導体 クラウド 蓄電池 永久磁石 工作機械
産業用
ロボット
航空機部
素材
重要鉱物 液化天然
ガス
船舶
エンジン
船舶
プロペラ
航海用
ソナー
抗菌薬 肥料原料
これらはいずれも、9月30日に閣議決定された「特定重要物資の安定的な供給の確保に関する基本指針」の指定基準を満たすものと思われます。実際の指定においては、これらの分野の中からより具体的な物資名が示されることでしょう。
したがって、上記分野に該当する企業は、特定重要物資の政令指定を待つことなく、基本指針に則って今から供給確保計画作りに着手すべきです。

政府、基幹インフラ関連企業は「超限戦」にも早急に備えよ

台湾有事に話を戻せば、中国人民解放軍は物理的な軍事攻撃の前哨戦として、あるいは軍事攻撃と並行して、台湾のインフラ施設等に対するサイバー攻撃やテロ攻撃を仕掛けることはほぼ確実でしょう。軍事攻撃と非軍事的攻撃を組み合わせるこのような戦法を、中国では「超限戦」と呼んでいます。

したがって、日本は今後の台湾有事の状況をつぶさに注視しつつ、自国に対する中国による超限戦にも早急に備える必要があるでしょう。経済安全保障法の第3章「特定社会基盤役務の安定的な提供の確保」の規定は、まさにそのためにあるのです。
しかし、第3章の施行期日は、「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日」(附則第1条)と規定されており、施行は最も遅ければ今から1年後の2023年11月となります。台湾有事の現下の切迫性に鑑みれば、悠長なことは言っていられません。政府は第3章をできる限り早期に施行すべきです。

また、基幹インフラ関連企業も、第3章の法施行を待つことなく、今から自主的に守りを固める対策を講ずるべきです。

>>第3章の詳しい解説はこちら
「第4回 条文ベースの経済安保法解説(第3章)特定社会基盤役務の安定的な提供の確保」
https://www.bi-p.co.jp/column/14814/

次回のミニ講座について

次回は、特定重要物資の政令指定の内容等について解説したいと思います。

なお、経済安全保障法の概要・条文、及び基本方針・基本指針は、下記サイトにまとめて公開されています。

内閣府サイト:経済安全保障推進法のページ
https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/index.html

特定重要物資も政令指定され次第すみやかにこのページに掲載されると思われます。したがって、関連企業におかれては常にウォッチされることをお勧めします。

BIP株式会社は、「企業様と共に事業開発・経営改善に取り組み、第2・第3の成長を創るパートナー」であることをビジョンとしています。この講座では「経済安全保障」に関して、企業経営者自らの大胆な決断に結びつけるお手伝いができることを目指して連載を進めます。

以上

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第8回 両罰規定は法人も要確認の経済安保法(第6・7章)雑則・罰則および附則
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第10回 米国とともに日本を守るには不可欠!セキュリティ・クリアランス制度

thumbnail_kojima児嶋 秀平(こじま しゅうへい)

弁理士 経済安全保障コンサルタント

このミニ講座では、急速にクローズアップされている「経済安全保障」を巡る法律の立案と関連する動向、それが企業に与えるであろうインパクト等について、私見を交えつつご説明していきたいと思います。
私は現在、知的財産の専門家である弁理士として特許事務所を経営しています。弁理士になる前は、国家公務員として経済産業省、中小企業庁、資源エネルギー庁、警察庁、外務省、内閣官房等で30年間勤務しました。多様な経験を活かして企業の皆様に貢献したいと思っています。

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