佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2007/11/22 改革の担い手としてのベンチャー:ロシア、中国、インドそして日本

 11月17日(土)・18日(日)の2日間、青山学院大学キャンパスを会場にて、日本ベンチャー学会第10回全国大会が開催されました。

 昨年は杜の都仙台の東北大学で開催され、来年度は関西の神戸大学で開催が決定しました。

 ベンチャー学会創立はネットワンシステムズ(株)の店頭公開直後であった記憶があり、前会長清成先生の法政大学の広い教室に何度か訪問しました。
 当時、取締役管理本部長として、IPOの主管として、本当に多くの経験をしていました。ベンチャー学会は研究と交流の機会と期待して、以後、参加してきました。

 この10年、日本の社会、国・自治体のベンチャー政策や制度は大きく進展しました。
 しかし10年経って尚、今年の大会のテーマを「改革の担い手としてのロシア、中国、インドそして日本」とした学会リーダーの問題意識を深く感じる昨今であるのも事実である。

 印象に残った2点について、感想を述べたいと思います。


(1)「ロシア、中国、インドの経済発展は、1990年代に国家社会主義から自由資本主義への歴史的転換から始まった。」

 ロシアよりモスクワ大学教授 ヴィエラ・コノノバ女史、中国より新華ファイナンス社長 ジェイ・リー氏、インドよりインフォシステクノロジーズリミテッドのアジア太平洋ユニット代表兼シニアバイスプレジデント ベンカタラマン・スリラム氏を招請して講演、シンポに出席頂いた。日本として、経済産業省中国経済産業局 杉田局長もシンポに出席された。

 講演の内容は、省略します。

 シンポジウムでの日本のコーディネーターの質問の中には、一見不可思議と思える基本的テーマがいくつかありました。

 一つ目の質問は、「ロシア、中国、インドは、いつ、何故、経済の高成長をしているのか。」

 海外の3人の共通の答えは、20世紀に長期停滞した3国が1990年代に国家社会主義をやめ、自由資本主義に転換したことであると実に明快であった。

 ベンチャー政策も、自由化に沿って転換してきた。
 そもそも民間会社を設立することは、禁止され、処罰された。今は、逆となった。
 国が、経済や企業をコントロールする時代から、国は、企業をサポートする政策に転換した。
 多くの国民の経済力が上がり、幸福な国民が増大している。

 これが、歴史の事実であったというものです。


 二つ目の質問は、「社会の金銭意識の変化について」であった。

 共通するのは、起業し、金銭的成功することはすばらしく尊敬されることであるという意識に180度転換してきている。起業化教育、MBA、MOTなど国際的なレベルでも高等教育を整備してきている。

 同時に、スリラム氏が、誠実な企業、社会への還元をインフォシスの企業理念として成功したことを強調したのが印象的であった。

 日本のコーディネーターが経済学的には極めてシンプルなテーマを、今、日本で質問しなければならない背景は何だったのでしょうか。米国と圧倒的差になり、更にロシア、中国、インドに追い上げられていると悲観的にみているのでしょうか。構造改革路線が逆行しつつある中で、イノベーションを担うベンチャーが新たな展望をどう切り開くべきか、という問題意識から一つの打開策と考えたからなのでしょうか。

 成長によるパイの拡大による配分よりも、「格差」の縮小の名のもとに、パイの拡大は無視しつつ、まず配分せよとの合唱が増えている意識に、ある意味で分かりきった答えを他国の方に言わせる手法をとらざるを得ない状況は、残念なものであると同時に深刻な事態だと思う。日本のメンバーからの学問的知性による発言があってもよいのではないかと思う。
同時に、答えが出ないときには早まって誤った判断を下すことが多いので「宙ぶらりん」の状態に耐えることも優れた選択だとする見解もあります。

 学会リーダーが将来への共通のグランドデザインを構築しなければならないとの決意表明をしたことは救いであった。率直に期待したい。



(2)若い研究者の「経営者行動の実証研究」は明るい希望であった

 「ベンチャー経営」分科会に出席しました。3つの論題と研究の発表がありました。

 -1.「企業家の性格分析による成功要因分析」
 -2.「企業の総合的成長特性に関する経営者の行動要因についての実証研究」
 -3.「ビジネスモデル構築における外部協力者との関係」

 研究手法の未熟さ、理論構築の不完全さなど改善すべき課題はあるが、経済革新、企業革新のコアであるイノベーションの推進力は経営者という骨格仮説に正面から実証的研究に挑戦した意義は大きいと感じました。

 経営者としての私の実感とも合っている印象を受けました。

 日本の若い研究者が、現場の経営者行動をまともに向かいあう姿に、清々しい明るい気持ちを持ちました。

 
 「事件は、机でおきているのよ」


 「事件は、現場で起きているんだ」

 映画『踊る大捜査線』のキーワードを思い出した。

 両方、大事だと思う。


 仕事の分担上は片方の方が人数的に多いのは当然だが、リーダーは、両方必要なことは言うまでもない。 

 実践知と理論知の円環運動が、一層発展するように、自戒したい。

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