佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2008/10/20 明るく元気な家庭を築く家長(かちょう)必携の家計学指南

―読書の秋 日本を元気にする100年の視野と智慧、勇気を求めて(6)-

 今回は、家のリーダーである“家長(かちょう)”の家計学について、日本人の書いた素晴らしい最新本を紹介します。金融コンサルタントとして多彩な活躍をしている木村剛氏の著書『投資戦略の発想法2008』(DMD JAPAN 2007年12月出版)です。400ページ弱と一見厚くて専門書の体裁ですが、非常に分かり易い書き方で一気に読め、王道を語る素晴らしい内容です。もちろん、経済の変化と理論の進化に合わせて、各技術論はより深めねばならないのは自明です。
 私自身もっと早く読んでいればと思った次第です。日本の学校教育で家計学・家産学(家庭財産学)が十分適切に教えられない現状からすれば、子供達にも必携の家計バイブルの一つとなると思います。企業と同じく、家庭も経済行為の単位として有能なリーダーが必要です。

(1)金銭や投資等おカネの基本について、しっかりしたレッスンが必要な時代

 我が家の家長である私の家計学も、学校教育はゼロに近く、自己投資による勉強と仕事を通じて得た経済や経営の勉強が役立っています。失敗も成功も両方たくさん経験しましたので、木村氏が日本人の家計学が無知・無防備に近い現実に対する警鐘、その背景を次のように述べていることが良くわかります。大事な時代認識ですので引用します。

 『わが国の金銭教育や投資教育は、あまりにも貧弱です。おカネに関する基本事項を一度も教えないまま、最高学府の大学を卒業させて厳しい現実社会に放り込んでいます。これは、赤子をジャングルに置き去りにするようなものではないでしょうか。
 おそらくその背景には、株式市場や株式会社に対する無知があります。世の中で「識者」と呼ばれている方々ですら資本主義経済の常識を理解していないのですから、普通の学校で生徒におカネのことを教えられる教師がいると想定するほうが間違っています。・・(略)・・
それでも、それなりに多くの方たちがなんとか幸せに人生をまっとうしてこられたのは、日本経済の環境が恵まれていたからです。日本人の勤勉性と経済の高度成長によって、投資に対する無知は人生にとって致命傷となることはありませんでした。また、投資教育の不備も重要視されませんでした。
 しかし、これからの時代は違います。
 これからの時代では、投資の基本知識がないと、幸せな人生を送れないかもしれないからです。基本的な投資戦略を身に付けていないと大きく損をしてしまうかもしれません。最悪の場合、人生を棒に振ってしまうかのしれないのです。』
(同書32ページ)

 国民の生活水準の目安となる日本人の一人当たりGNPは、1992年世界第1位でしたが、2006年には第20位に落ちています。日本人の一人当たり付加価値生産力は低下しているのです。収入はもらうものではなく、創るものですから、言葉を変えれば、勉強しなくなり、働く質量が弱くなっていると自戒すべき面があるということです。

(2)財産形成の基礎の第1エンジンは、「節約」

 木村氏の意外感のある次の言葉を胆に銘じてください。

 『誰でも可能で、最も有利な運用方法はなんでしょうか。株式投資ではありません。投信でもない。当然、ヘッジファンドでもありません。外国為替の売買でもなければ、銀行預金でもありません。
 正解を申し上げましょう。
 それは、支出のコントロールです。
 ・・・(略)・・・
 支出のコントロールが重要だという理由は簡単です。支出金額は自分の意志だけでコントロールできるからです。
 ・・・(略)・・・
 節約という戦略は、個人投資家にとって重要な投資手法なのです。節約ができないと、個人投資家にとっていちばんパフォーマンスが高い投資商品をみすみす捨ててしまうことになります。』
(同書64-65ページ)

 節約できる人は、意志が強く、外部の雑音に惑わされることなく、行動できる。マネー雑誌は不要なのです。簡単な家計簿が大切です。時間かけ過ぎる詳細は不要です。

(3)財産形成の基礎の第2エンジンは、「収入」

 「節約」は大事ですが、収入自体が増えるわけではなく、防御型です。節約を第一のエンジンとすると、財産形成への二つめのエンジンは、何でしょうか。

 『それではもう一つの重要なエンジン、攻撃型の投資エンジンである、仕事について触れたいと思います。いろいろな意味で、あなたの人生を豊かにする最大の投資エンジンは仕事からの収入です。この収入があなたの財産形成の中核なのです。
 「投資」と一口に言いますが、最も重要でありかつ効率的でなければならない投資は、自己投資にほかなりません。自分に対する投資が最も有効でなければ、おかしいのです。』
(同書86-87ページ)

 『いまの仕事で十分食べていけるという自信が、あなたにとっていちばん大切な資産であるはずです。・・(略)・・本当に仕事に自信があるかどうかを診断するのはかんたんです。「会社をいま辞めも同じ仕事で食べていけるか」を自問自答してください。ヘッドハンティングの会社に聞いてみるのもいいでしょう。転職した場合の給与水準も押さえておいたほうがいいと思います。
 ・・・(略)・・・
 現在の仕事を通じて、あなた自身の価値をどんどん高めていくことが一番大事なのです。120%の力を現在の仕事に注ぐ込むべきなのです。そうした毎日の鍛錬があなたの価値を高めるはずです。』
(同書90ページ)

 仕事で超一流となるための120%の努力の重要性を具体的に指摘する。当たり前のことが余りにもないがしろになっていないかと、言葉は優しいが熱く激しい思いを感じる。

 『本は必要なものをひたすら多読しましょう。大量の情報を効率的に処理する自分なりの方法を身に付けることは大切です。それから、多くの人と会いましょう。人脈は必死で仕事していれば自ずとできてくるものです。コミュニケーション能力は、ひたすらお客様と会い、同僚と建設的な議論を戦わせる中で練られていきます。論理的思考能力などは修羅場をたくさん経験すれば身につくものです。
 そういうやり方をしていけば、世の中はなかなか自分の思い通りにならないものだということも分かりますし、不確実性に耐えなければならないことも分かるはずです。最悪に備えるための思考法も身につきます。』
(同書98ページ)

(4)まずは2年分の生活防衛資金をためましょう!

 長い人生には、予想だにしないリスクがあります。仕事の不遇、会社の倒産、病気、事故、地震など誰にも予測できないものです。しかし、どんな事態が起きようと、自分と家族の生活を守るのが家長の役割です。それが、家長の重要な投資目的であると言う。

 『どんなときにも、心の余裕がなければいけません。それを確保してくれる投資戦略でなければならないはずです。職を失うというリスクに対しては、最低二年の余裕はみておきたいものです。二年分の貯えがあれば、一年間は余裕を持って次の職場を探せるのではないでしょうか。・・(略)・・この資金のことをこの本では「生活防衛資金」と呼んでいます。』(同書71ページ)

 この「生活防衛資金」は、銀行預金、MMF、短期国債など換金性の高いもので持ち、流動性を確保することが大事です。また、貯めるべき資金の額を知る必要があります。1か月当たりの生活資金が40万円だとすると、2年間で960万が必要です。子供が大学で仕送りと授業料が必要な家庭では更に必要です。私も実際に体験しましたので、同感です。

(5)老後は、いくら必要なのか。

 財産形成の目的には当然、ハッピーリタイアメントの資金確保があります。日本人の平均寿命は世界最長です。60才でリタイアしようと思ったら20-30年分の所得が必要になります。

 『インフレがなかったと仮定しても、生活防衛資金(家計支出の二年分)の10-15倍が必要になる計算です。かんたんに1億円とか2億円という数字が出てくるはずです。70歳まで働けたとしても、5000万円から1億円が必要になります。
 どうでしょう。めまいがしてきませんか。
 しかし、これが現実なのです。
 たとえば、65歳に引退して85歳に夫婦揃って他界すると仮定します。東京で豊かに暮らすためには、夫婦ふたりで40万円程度必要というアンケート結果がありますから、それをベースに試算すると、40万円×12カ月×20年間(85歳-65歳)=9600万円となり、なんと1億円近い資金が必要になるという結果がでています。
 仮に公的年金がそれぞれ7万円支給されたとしても、26万円(40万円-7万円×2人)×12カ月×20年間=6240万円という数字になってしまします。』
(同書111ページ)

(6)財産形成のために知っておきたい投資理論編

 私は、上記の基礎編をまず読んで、実践したら成功へ近づけると思います。この基礎編を確実に実践する人が、残念ながらまだ多数になっていない気がします。木村氏は、この基礎の上で、財産形成のために知っておきたい投資理論編を後半展開しています。基礎ができた方は、どうぞ前に進んで勉強してください。

 この本の読みやすさは、私が説明するまでもなく、引用文でご理解頂けたと思います。

 以上

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