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2010/10/04 未知の至福③ 漫画家松本零士が「創造力」を語る『未来創造-夢の発想法』

 9月誕生日プレゼントに頂いたパリジェンヌ クレモンティーヌのオシャレで快活なフレンチ・ポップCD『アニメンティーヌ~ボッサ・ドウ・アニメ』(参考文献5)を聞きながら、漫画家松本零士(まつもとれいじ)著『未来創造-夢の発想法』(参考文献1)を読むとは思いませんでした。このCDと本は先週たまたま偶然の出会いですが、アニメ繋がりにマンガ・アニメの世界的広がりを実感させられました。

 漫画家松本零士さんの著書『未来創造-夢の発想法』が9月10日出版され、早速読みました。なにせ、世界的漫画家である松本零士さんが、自らの「創造力」をテーマに語った本当に貴重な本だと思ったからです。もちろん、私は『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』など本・DVDを何度も見た松本零士ファンの一人でもあります。

 最近私の研究テーマである「企画力」「発想力」「創造力」を探るのに格好の本にこんなに早く出会うとは驚きです。先月9月13日エッセイ「 未知の至福② 手塚治虫が愛した音楽から着想した作品『火の鳥』『ルードウィヒ・B』」(詳細はこちら>>)で漫画家手塚治虫さんの企画力の背景を探ったばかりでしたから尚更偶然の出来事に喜んでいます。 
参考資料

(1)未来の創造のヒントのため、「創造力」について書いた『未来創造-夢の発想法』

 漫画連載の依頼を受けて、まず考えるのが次の3つだという。
  「どういうテーマで書くか」
  「何を描くのか」
  「何をために描くのか」

 漫画家松本零士さんは、「創造力」というテーマについて自らを題材に書く理由について、漫画を描く時と同じくはっきりとこの本「まえがき」で述べています。

地球の未来、宇宙の未来創造へのヒントを探る試みであると。

(2)漫画家松本零士さんの「創造力」のヒントは、「体験」からはじまる

参考資料
 皆様、『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』など名作の背景を是非知りたいですよね。私は、松本零士さん自身の創造力を語る本に初めて出会い、少々興奮して読みました。

【体験からすべてがはじまる】
 漫画家松本零士さんは、創作のヒントはすべて「体験」から得ていると強く言い切っています。2003年の評論家吉本健二氏のインタビュー時、そして2010年本書でも一貫している。しかも、旅、交友、見学、鑑賞、買い物など体験は自分の意志で作り出すことができると強調する。

「作品すべてが、生の体験、すなわち肌、五感で感じるものをもとに描かれています。・・(略)・・ただ、唯一、宇宙のみが体験したことのない想像上の産物です。」(2003年参考文献4:345ページ)

「創作のためのヒントをどこから得ているか?僕はそのすべてを「体験」から得ている。生まれてからいままでにこの目で直に見たもの、この耳で聞いたこと、行った場所、やったこと、出会った人々・・(略)・・、僕自身の体験が創作のすべての源泉になっていると言っていいだろう。」(2010年参考文献1:84ページ)

【実物に触れることからアイディアが得られる】
 特に、直接「実物に触れる」ことの大切さを説く。時計、化石、古書、映写機、映画のフィルムなど多くのコレクションを持っている。但し、モノを買う基準があるという。仕事の資料として役立つかどうか。仕事に使えなければ単なる道楽だと厳しい自戒の言葉にプロの生き方を教えられますね。
 
【音楽からのインスピレーション】
 私にとっては意外なことに音楽からのインスピレーションの大事さを特に紹介しています。何と手塚治虫さんと同じですね。松本零士さんは、少年時代からSP盤レコードをたくさん聞いていました。クラシックに限らず、ロック、ポップス、演歌にいたるまで、音楽を映像として頭脳に取り込まれているという。

「音楽はアニメーションを支えてくれる巨大な柱だ。そこをしくじったら作品の命運が尽きると言ってもいい。僕は音楽的素養がないとアニメーションを作るは難しいと思っている。それほど映像と音楽は密接な関係にある。」(参考文献1:91ページ)

【漢詩の素養が役立つ】
 高校時代に酒豪の先生に、古文、漢文を徹底的に叩き込まれたことが、作品のタイトルを考えるときに役だっているそうです。漢詩の素養があれば、漢字一字一字の意味を深く知ることができる。

(3)松本零士さんの少年時代の創造のための「原体験」

【少女漫画、SF小説にも親しんだ子供時代】
 松本零士さんがまだ字が読めない時代に読み聞かせられたお話にSFの話があった記憶があるという。お姉さんには、大人気だった少女小説家の吉屋信子さんの作品も読んで聞かせてもらったそうです。少年時代には、SF小説家海野十三『海底大陸』『大空魔艦』、冒険小説家南洋一郎『吼える密林』『冒険探検魔境の怪人』をドキドキしながら楽しんでいた。

 子供の頃に見た絵で好きだったのが、「少女世界」「少女の友」で活躍していた松本かつぢさんの少女漫画。もちろん、戦前の横山隆一さんの『フクちゃんの潜水艦』、SF漫画草分け大城のぼるさんの『火星探検』、昆虫漫画の花野原芳明さんの『コグモ』の冒険、そして手塚治虫さんの『新宝島』『キングコング』『火星博士』『月世界紳士』はじめ戦後の先輩の漫画をたくさん読んでいます。

 この「原体験」の自作漫画作品への影響をこう述べています。

 「僕が子供の頃に好きだった漫画を思い返してみると、昆虫、動物、機械、宇宙というキーワードが浮かびあがってくる。そして、姉が二人いた影響で少女漫画や少女小説も読んでいた。そのせいで美男美女が登場する華麗な騎士道物語のような世界にも魅せられていた。男性的な理系的、空想的、冒険的世界と、女性的な夢想的、美的な世界の両方がごちゃまぜになっている。」(参考文献1:110ページ)

 すらっとしたスタイルの絶世の美人。傷ついた戦士には天使のよう優しく、同時に大切な人を戦士のように守ろうと凜とした行動する森雪やスターシャ。私が激しく胸を揺さぶられたあのキャラクターの秘密が初めて明らかになった。ルーツは、過ごした北九州の「九州女」だという。え・・え・・。「かわいい」タイプの少女漫画を超えた新しいデザインを生み出した。

【映画、小説から学んだ少年時代】
 松本零士さんにとっても、戦後に九州小倉で過ごした少年時代は、映画は本と同じように大切な娯楽だったらしい。朝鮮戦争まで国連軍がいたので、アメリカ、フランス、ロシア映画と種類が豊富だったので色々な映画をよく観たという。

 自分の作品に精神的な意味で影響を与えた映画を紹介しています。
   『大砂塵』(ニコラス・レイ監督 1954年)~最も好きな西部劇
   『わが青春のマリアンヌ』(ジュリアン・デュビビエ監督)~17歳でみた絶世の美女

 北九州市周辺には古本屋がたくさんあり安く手に入った時代。H・G・ウェルズの生命体の進化の歴史を書いた『生命の科学』全巻買った。人類の歴史十数巻も読んだという。科学と歴史以外に、世界の秘境を旅する紀行文にも惹かれた。アフリカ探検の実話『ムーン山の彼方』が少年らしい冒険心をゆさぶった。後にアフリカに思い入れを持ったきっかけになったという。

【運命の一冊『大宇宙の旅』】
 松本零士さんの運命を決定づけた出会いの本が、荒木俊馬博士『大宇宙の旅』。小学校5年の頃、学級文庫で出会った。少年がフォトンという光の女神に導かれて旅をし、その全体像を知るという科学啓蒙書との出会い。『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』、そして今描いている『幻想新幹線0』と宇宙への旅は広がっています。

 「この本を読んで感激した僕は、さっそく宇宙の漫画を書いた。まさに僕にとっての「触媒」だった。終戦直後のあの時代に学級文庫でこの本に出会ったこと。そして、もともと星が好きだったこと。この二つが重なりあって、宇宙への興味が加速していった。」(参考
文献14:125ページ)

 漫画・アニメーションに必要な「創造力」を3つ挙げている。
 ①文章力~物語を組み立て、自分個性の文体をつくる
 ②画力 ~感情を表現し、印象を決定づける。
 ③音  ~声優さんの声と演技、効果音、音楽の土台の上に絵が動く

 多様な職業、職種によって「創造力」の具体的特定解は異なるかもしれない。しかし、「創造力」の根源は広く深い体験、教養に土壌があるとの認識を改めて学びました。

 体験、教養は、未来の人生戦略にとって「平和的武器」なのですね。
 皆様、どんな体験に挑戦していますか?

(参考文献)
1.松本零士『未来創造-夢の発想法』(角川ONEテーマ21 2010年9月10日 初版)
2.松本零士『宇宙戦艦ヤマト』(秋田書店 1994年8月15日 初版)
3.松本零士『銀河鉄道999』(少年画報社 1994年5月4日 第1刷)
4.吉本健二『松本零士の宇宙』(八幡書店 2003年11月25日 第1刷)
5.クレモンティーヌ Clementine 「アニメンティーヌ~ボッサ・ドウ・アニメ BOSS DU ASIME」(ソニー ミュージック)
6.佐々木昭美のBIエッセイ2010/9/13「 未知の至福② 手塚治虫が愛した音楽から着想した作品『火の鳥』『ルードウィヒ・B』」

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