佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2011/03/07 新しいビジネスモデル『The Mesh(メッシュ)』を読む

 先週末、リサ・ガンスキー著、実川元子訳『The Mesh メッシュ すべてのビジネスは<シェア>になる』を読んだ。リサ・ガンスキーは、台頭しつつある新しいビジネスモデルを「メッシュ」と呼んでいます。

メッシュ日本語版公式ホームページ http://themesh.jp/ のトップには、「米国から届いた絶賛の声!!」として、以下のコメントを掲載しています。

「米経済誌 『Forbes(フォーブス)』
メッシュとは何か? 2010年代のビジネスを方向づける大きな潮流である!

ダニエル・ピンク 『モチベーション3.0』『ハイコンセプト』著書
未来を理解し、その創造に参加したければ、メッシュを読もう!

ティム・オライリー Web2.0提唱者、オライリーメディア創業者兼CEO
これから数十年にわたり我々の文化を形づくる重要なトレンドを的確に指摘した一冊。

セス・ゴーディン 『パーミッションマーケティング』著書
”ロングテール”以来の画期的なビジネスコンセプト。リサ・ガンスキーはこの偉大なる着想の理想的な伝道者である。
この本のまさに1ページ目から、あなたはメモを取らずにはいられないだろう、そして行動せずにはいられないだろう。」

参考書籍

(1)多様なメッシュ企業――車・自転車のシェア、家を交換する、ファッションの交換、エネルギー協同組合、オフィスのシェア、コーポラティブハウス、部屋の短期的貸出、音楽スタジオの共同利用、機械工具の貸出、食料品やワインの協同製造など

参考資料

 『メッシュ』の著者リサ・ガンスキーが運営するインターネットサイトには、1000件以上の最新メッシュ企業のリストがアップされ、メッシュ日本語版公式ホームページにも、その一部として、金融、ファッション、不動産、食品&ワイン、エネルギー、テクノロジー、ガーデニング、交通、家の修繕などさまざまな分野におけるメッシュ企業の概要を掲載しています。

 本書に掲載された中から5企業を要約し紹介します。

●ジップカー(Zipcar)――カーシェアリングサービスは、輸送サービスでなく情報サービス

ボストンに本社置く車をシェアするサービス会社。2001年に創業し、全米、カナダ、欧州に拠点を持つ。誰がいつ、どこで、そのように、どこで車を利用するかの情報をモバイルネットワークで通信する。付加サービスとして、飲食、ワイン、ホテル、フィットネスの手配等付加サービス提携に発展させた。輸送サービス業というよりは情報サービス業のビジネスモデルに近い。

●ネットフリックス(NetFlix)――DVDを郵送で鑑賞できる会員定額制レンタルシステム

  ブロックバスターの延滞料金システムへの不満を解消するビジネスモデルを創造した。利用者は定額料金を払って、映画のレンタル希望リストを提出する。ネットワーク上のシェアプラットフォームで顧客プロファイル情報を活用して効率的に提供する。推薦サービスも提供した。DVDメーカーと提携し、新規3枚分無料サービスも提供する。

●クラッシュパッド(Crushpad)――ナパで自分だけの葡萄酒づくりサービス

  誰もがクラッシュパッドが所有するワイン製造器具を利用し、醸造に必要なデータや情報の技術サポートを受けて1樽(バレル)分から自分の葡萄酒をつくることができる。搾汁のため、遠くからやってくる顧客が多いらしい。クラッシュパッド・コマースという販売代行サービスを通じて、顧客はワインをつくるだけでなく、独自のブランドで売ることもできる。

●ルーモラマ(Roomorama)――旅行中に自宅を貸す短期間シェアのプラットフォーム

  すべての案内と支払いはオンラインで行われる。貸し手は前金で支払われるので安心だし、借り手は支払った代金が確実に相手に渡ったかどうかわかるので安心で、両者の金銭的リスクがない。ニューヨークから始まり、ロサンゼルス、バンクーバー、バルセロナ、ロンドン、パリと広がっているという。

●スレッドアップ(thredUP)――不要な子供服を交換するウェブプラットフォームサービス

  会員は交換に出したい衣服と、「クローゼットに入れたい」衣服アイテムのリストを提出する。スレッドアップは交換に利用する送付キットを販売する。(最初の2つは合計5ドル、次から3つまとめて25ドル)会員は交換に出したい衣服をそのキットに入れてスレッドアップに送付し、会社は服のクオリテイーを判断して、すぐに希望にあった同じ価値のものを送り返す。子供服は確実な成長分野という。子供は成長が早く、6ケ月毎に新しいワードロープが必要となるからだ。

(2)「メッシュ」とは何か――<シェア>でモノやサービスを提供する新しいビジネスモデル

【「メッシュ」という言葉が示す新しいシェア・プラットフォームは何か】

リサ・ガンスキーの言葉をまず聞いてみよう。

 「基本的に、メッシュはネットワーク対応のシェアリングを基盤におく――モノやサービスを所有するだけでなく、モノやサービスにアクセスする手段を提供するビジネスを指す。
 戦略の中核は、同じ商品やサービスをいかに多くの回数「売る」か、ということにある。同じモノやサービスを何回も販売し、そこから利益をあげ、どれだけ顧客からの問い合わせを増やすか、ということがメッシュ・ビジネスの戦略の核となる。」(参考文献1)

 【メッシュ・ビジネスの特徴】
1.1つのコミュニテイーや市場の中でシェアする
2.ウェブとモバイルネットワークを駆使する
3.有形のモノや具体的サービスを扱う
4.顧客との接点がソーシャルネットワーク上である


 【ネットワークのパワーと生活意識の変化がメッシュ・ビジネスの原動力】

 今、何故、「メッシュ」が注目されるのでしょうか。

昔からシェアリングサービス自体は日本含め世界に多く存在しています。ホテル、アパート、地下鉄、タクシー、空港、飛行機、図書館、電話線、無線ネットワーク、道路、公園、美術館等全部人々がシェアすることで成り立っています。

 新しい形でのシェアリング・ビジネスはソーシャルネットワークによって支えられ、強化されています。ウェブ対応のモバイルネットワークとモバイルコンピューテイングがソーシャルネットワークサービスを爆発的に発達させています。

 同時に、リーマンショック後の不況が、クレジットカードで消費を謳歌していた米国の人々に改めて
「我々は何を大事にしなくてはならないか」を考え直す機会となり、生活意識が大きく変化していることが大きいと述べています。米国だけでなく、特に先進国では共通した現象でしょうね。

 何故、「メッシュ」と呼ぶのか? という問いにガンスキーはこう説明しています。

 「メッシュ=網というイメージがこのビジネスにぴったりだからだ。・・・私にとって「メッシュ」は情報を基本とするサービスの新しい局面を表現するのにふさわしい隠喩(メタファー)だ。・・・

 私たちは今、過去に比べると自分以外の誰か、企業、組織やモノとはるかに広範囲につながる時代に生きている。だからこそメッシュはビジネスとして成り立つ。人類の歴史上、遠距離にあるモノや人と、常に、しかも安価につながれる通信手段を人がもつようになったことはかってない。・・・現代は、誰でもどんなものでも、ほかの誰か、もしくは何かとつながっている時代だ。ツイッターでは2010年2月に、一日に5億ものつぶやきが書き込まれた。」(参考文献1)

 私も、Twitter,Facebookを使い始めた一人です。インターネットビジネスに参加して、今年20年目になります。デジタルテクノロジーが切り開く社会、ビジネスの変化は早い。ビジネスリーダーにとっては、技術サービス開発、顧客開発、利益開発を三位一体で実現するビジネスモデル志向の経営が必須の時代を痛感しますね。

  佐々木昭美 Twitter ID :bipsasaki
  http://twitter.com/bipsasaki

以上

 (参考文献)
1.リサ・ガンスキー著、実川元子訳『メッシュ すべてのビジネスは<シェア>になる』(徳間書店 2011年2月)
2.レイチェル・ボッツマン/ルー・ロジャース著、監修・解説 小林弘人、訳 関美和 『シェア <共有>からビジネスを生み出す新戦略』(NHK出版 2010年12月)
3.佐々木俊尚『キュレーションの時代-「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書 2011年2月)

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