佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2011/07/04 日本画に魅了されました。必見!山種美術館『美しき日本の風景-川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷』

先週末に山種美術館『美しき日本の風景-川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷』(6月11日(土)~7月24日(日))を観る機会がありました。山種美術館は、JR恵比寿駅から青山方面に少し歩いた広尾高校前にあります。

有名な日本画家達の美しい日本の風景画を鑑賞し、すっかり魅了されました。何よりも、近代日本画のすばらしさに目を開かされました。目にしっかり焼き付けようと2回も作品を観ながら会場を歩きました。美術館巡りが好きな私にとっても大変珍しい出来事です。館内カフェでコーヒーを飲みながら、美しい風景美の余韻に浸っていました。

“国民画家”と敬愛される川合玉堂(かわいぎょくどう)。あっと驚く鮮やかな色彩画家の奥田元宋(おくだげんそう)。今や世間でもっとも馴染みのある日本画家の一人である東山魁夷(ひがしやまかいい)。

日本の美しい風景との深い共感を実感させてもらい、東日本大震災後の心が癒されました。日本画の清澄で平明な表現が、これほど惹きつけるものであることを初めて知りました。横山大観と日本画専門美術館である山種美術館の深いつながりも興味深いことでした。

今回、美術館より公式に画像11枚をお借りし、皆様にご覧頂きたいと思います。山種美術館『美しき日本の風景-川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷』(~7月24日(日))を訪れることを、是非お薦め致します。

参考資料 参考資料 参考資料

(1)心眼で自然を描いた“国民画家”川合玉堂(かわいぎょくどう)1873-1957

参考資料 参考資料 参考資料
画像左:川合玉堂 《春風春水》 1940(昭和15)年 絹本・彩色 山種美術館蔵
画像中:川合玉堂 《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館蔵
画像右:川合玉堂 《山雨一過》 1943(昭和18)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

川合玉堂は、「自然を飽くことなく凝視し、「肉眼で見るのではなく、心眼で描く」ことに務めた」(参考文献1)と言われます。また、辻惟雄(つじのぶお)氏は著書『日本美術の歴史』の中でこう述べています。「川合玉堂の風景が同様に郷愁を呼び覚ますのは、かれが水墨淡彩の伝統手法を、時代に即して現実の光景にあてはめ、見る人に日本の風景を実感させることができたからだろう。」(参考文献6)

東北の稲作農家に生まれた私は、のどかな田植えの様子を描いた玉堂の<<早乙女>>の前にしばらく佇んでいました。赤いタスキと白い手ぬぐいが目に染みる田植えする乙女の活き活きと明るく弾んだ印象が良いですね。

(2)あっと驚く鮮やかな“色彩画家”奥田元宋(おくだげんそう)1912-2003

参考資料
奥田元宋《玄溟》1974(昭和49)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

参考資料
奥田元宋《奥入瀬(春)》1987(昭和62)年 紙本・彩色 個人蔵

奥田元宋は、「幼少時の原体験から自然の移り変わりに惹かれ、「半心半眼」で見た自然を、鮮やかな色彩で描き続けた」(参考文献1)と言われます。

10年程前に旅した奥入瀬の記憶が戻って来ました。

<<奥入瀬>>は秋と春の景観です。それぞれの中で描かれている渓流は、逆向きに流れこの2図が対となるように意識して描かれています。東北地方の雄大な自然の移り変わりが迫ってきます。
※今回出ているのは春のみです。

<<玄溟>>は、元宋62才の時に鮮やかな独特の表現で描いていました。陸中海岸は、赤く萌える風景に見えたのだろうか?

(3)風景との対話を語り続け共感を生む“東山芸術”東山魁夷(かいい)1908-1999

参考資料 参考資料 参考資料 参考資料
画像左:東山魁夷 《春静》 1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館蔵
画像中左:東山魁夷 《緑潤う》 1976(昭和51)年 紙本・彩色 山種美術館蔵
画像中右:東山魁夷 《秋彩》 1986(昭和61)年紙本・彩色 山種美術館蔵
画像右:東山魁夷 《年暮る》 1968(昭和43)年紙本・彩色 山種美術館蔵

東山魁夷は、「「人間の心の象徴」としての風景を描き、「風景自体が人間の心を語っている」という言葉を残した」(参考文献1)と言われます。

魁夷が川端康成と出会ったのは1955年。その後交際が続いたという。魁夷に京都を描くように勧めたのも川端。その言葉を機に失われゆく京都の姿を描きとめた京洛四季の連作を見ることができます。

今年のGWに訪ねた京都の情景を思い出しました。

京洛四季の連作は、『源氏物語』や『枕草子』といった古典文学への深い理解が背景にあったと言われています。「魁夷は京都の風景に平安時代の文学にあらわされた情趣をそのまま感じとったと語っている。・・・日本の伝統美や文学の尽きせぬ探究が生み出した絵画世界。」(参考文献5)

(4)横山大観(よこやまたいかん)と山種美術館

参考資料 参考資料
画像左:横山大観 《霊峰不二》 1937(昭和12)年 絹本・墨画彩色 山種美術館蔵
画像右:伊東深水 《富士》 1939(昭和14)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

横山大観<<霊峰不二>>、小林古径<<不尽>>、安田ゆき彦<<富嶽>>、伊東深水<<富士>>など、日本の風景の象徴として親しまれている富士山の姿を描いた作品も紹介しています。

ミュージアムショップで販売していた山種美術館『山種美術館の横山大観』(参考文献2)という冊子を読みました。その中で、大観は<<霊峰不二>>について以下のように述べていたと紹介しています。

「それにしても、私は富士山が好きです。あの山容がとても好きです。春、夏、秋、冬によってその山容が異います。春夏秋冬ばかりではありません。朝、昼、夜でまた自ら異なって来ます。いや刻々異うといった方がいいかもしれません。また、富士山を眺める場所によっても異います。」

また、山種美術館 山﨑富治名誉館長は、横山大観との出会いをこう語っています。

「今から六十年も前にお元気な大観先生に父・種二と一緒にお会い出来た感激を覚えている。その時に「ぜひ美術館をつくりなさい。そのためには私も腕をふるって描いてあげるよ。」あの<<心神>>富士山の大作はその時に描いて下さった作品で山種美術館の至宝となっている。」

正月に、今年の私の美術探訪の中心は「和」と決めていました。日本画の専門美術館である山種美術館は、2月『ボストン美術館 浮世絵名品展 錦絵の黄金時代―清長、歌麿、写楽』(2/26~4/17)』に続き、今年2回目の訪問となりました。日本画に大変魅了され、また訪れたいと思っています。

以上

『美しき日本の風景-川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷』

会期:2011年6月11日(土)~7月24日(日) 
(一部展示替 前半: 6/11~7/3、後半: 7/5~7/24)
会場:山種美術館 http://www.yamatane-museum.jp/
主催:山種美術館、読売新聞社
開館時間:午前10時から午後5時(入館は4時30分まで)
休館日:月曜日(但し、7/18は開館、翌火曜日休館)
入館料:一般1000円(800円)・大高生800円(700)円・中学生以下無料(但し、保護者の同伴が必要です)
※( )内は20名以上の団体料金、および前売料金
※障害者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料

出品作品:川合玉堂《春風春水》、《早乙女》、《山雨一過》、《溪雨紅樹》
奥田元宋《玄溟》、《山澗雨趣》、《奥入瀬(春)》
東山魁夷《春静》、《緑潤う》、《秋彩》、《年暮る》
横山操《越路十景》(全10点)
横山大観《霊峰不二》、小林古径《不尽》、安田靫彦《富嶽》、伊東深水《富士》、
ほか約60点  

*出品内容には変更が入る場合があります。

(参考文献)
1.山種美術館パンフレット『美しき日本の風景-川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷』
2.山種美術館『山種美術館の横山大観』
3.山種美術館Webサイト http://www.yamatane-museum.jp/
4.美術年鑑社『画集 川合玉堂の世界』(1998年3月 第一版)
5.尾崎正明監修・鶴見香織著『もっと知りたい 東山魁夷 生涯と作品』(東京美術 2008年3月 初版)
6.辻 惟雄(つじのぶお)『日本美術の歴史』(2005年12月 初版)
7.佐々木昭美 BIエッセイ2011年2月28号『錦絵黄金時代の清長・歌麿・写楽初公開作品に満ちた「ボストン美術館 浮世絵名品展」

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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