佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/06/04 佐々木流 BI経営進化論 第9回 M&Aが通常経営になった時代の「ビジネスDD」と「アフターM&A」

BI経営進化論

 最近、当社への相談、アドバイス依頼の1/3がM&A関連になりつつあります。大企業や中堅企業が活発なM&Aを実行していますがアフターM&Aの成功経験者が少なく、事業開発・経営改善・事業計画策定支援が依頼されています。中小企業・ベンチャー企業は事業提携・資本提携政策策定、事業提携先・事業譲渡先探し、事業再生などが増えています。

 大企業の設備投資は、政府の統計等によるとその約40%は海外投資である。海外の自社工場、販路網への投資が急増していますが、海外企業への友好的M&Aも更に加速しています。

 中小企業の友好的M&Aも急増しています。東商一部上場企業でM&Aコンサルテイングを展開する日本M&Aセンターは、その決算短信によると昨年度の成約が194件で過去最高となり、平成24年2月開催した「経営者のためのM&Aセミナー」には1600名が参加し毎回過去最高を更新する状況なそうです。

 その背景はグローバル化、業界再編、企業成長、事業承継など様々ですが、日本においても今やM&Aが通常経営になったことを示していますね。私は自らも体験し、現在は支援業務も行っていますが、その成功のためには専門家の協力と同時に最高の経営力が必要です。

 特に、最も大事なビジネスDDとアフターM&Aについての初歩的理解が必要です。意外と認識不足と思われますので、その好著を紹介します。
参考資料

(1)M&Aの成功を導く「ビジネスDD」――アビームM&Aコンサルティング編『M&Aを成功に導く ビジネスデューデリジェンスの実務』

参考資料
 M&AというとDD(デューデリジェンス)という経営実態調査の言葉を知る方が多くなりました。ところが、DDというと財務DDと狭く認識している方が依然として多いのが現状です。

デューデリジェンスには、ビジネスデューデリジェンス、財務・税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、そして人事・IT・環境等機能デューデリジェンスも必須です。

それは体験してはじめてわかることもあり、未体験の方にとってやむを得ない面もあります。しかし、M&Aが通常経営となった現在においては、過去の成果をまとめた基礎的知識の習得は大事だと思います。

 M&Aは、経営戦略の一つであり、目的は事業・会社の成長。その中心がビジネスデューデリジェンスです。その好著がアビームM&Aコンサルテイング編『ビジネスデューデリジェンスの実務』。「M&Aに携わる会社の担当者のために、アビームM&Aコンサルテイングのビジネスデューデリジェンスの方法論を解説したものです。」(参考文献1)

 ビジネスデューデリジェンスを7つのステップで定義しています。
 ①ビジネスDD計画の策定
 ②事業構造分析
 ③業績構造分析
 ④分析結果の整理
 ⑤中長期シナジーの抽出
 ⑥Quick Hits の抽出
 ⑦アクションプランの策定

 そして、最終契約書が調印された時から、買収・合併後の事業統合=PMI(ポスト マージャー インテグレション)即ちアフターM&Aが開始されます。

 

(2)M&Aが通常経営の時代の「アフターM&A」――金児昭『「利益力世界一」をつくったM&A』

参考資料

 M&Aという時に、何度も読み、そして何度も紹介している好著が、経済評論家・経営評論家で元信越化学工業常務の金児昭『「利益力世界一」をつくったM&A』です。

 本書は、金児氏が在職した信越化学工業の実際体験を中心に小説風に国際的M&Aの経営の真髄を教えてくれます。その局面毎に自分だったらどうするかを考えさせてくれる演習にもなります。何よりも、M&Aとは最高の経営実行そのものであり、最高の経営チームが肝要であることを教えています。


ご存知のように、信越化学工業は、1996年3月期から2008年3月期まで13期連続で最高益を更新続けました。リーマンショック、東日本大震災は信越化学に甚大な影響を与えましたが、利益を出し続けました。昨年8月、信越化学工業会長金川千尋氏が『危機にこそ、経営者は戦わねばならない』を刊行され、BIエッセイでも取り上げました。

金川会長が理想とする合理的経営がなされていると言われるのは米国子会社シンテックです。信条である少数精鋭主義の見本といっても良いと思います。13期連続最高益更新は、シンテックの優れた経営手法を全事業部門に浸透させ、成長力と収益力を向上させてきた成果です。

信越化学工業の米国塩ビ製造会社シンテックは、テキサス州に本社を置く世界最大の塩ビメーカーに成長しました。50%:50%の合弁会社設立から始まり、100%子会社にするM&Aでのプロセス、そしてなによりもアフターM&Aの経営の実際を詳細に説明しています。

2011年時点の生産能力は260万トンで、日本全体の塩ビ需要100万トンの2.6倍です。社員は460名しかおらず、2億ドル近い利益をあげて、文字通り少数精鋭です。

 もちろん、シンテックの生産設備は最新鋭で、高品質を確保しながら少人数で運営されています。営業は6名で世界中を駆けめぐる。間接部門もムダな人員は置かない。資金回収は秘書が兼務で立派に行う。借金のない経営を目指し、財務担当も不要で、本社財務と社長が短時間見るだけで済む。

 ただ、工場などの場合、安全性や環境などを絶対に守るためには一定の労働力は必要であり、部門毎の役割や機能をよく考えて決定しているそうです。
(詳細はBIエッセイ2011/11/14 『危機と戦う信越化学の経営。「失われた20年」の間、13期連続最高益更新続けた国際企業』


金児昭氏は、著書『「利益力世界一」をつくったM&A』をどうぞ教科書で使っていただきたいとしてこう述べています。

 「私は、1976年7月から2007年9月までの30年間にわたって、国際的M&Aへの参画体験をベースに世界中に向けて、次のように主張し続けています。
 “世界中の人びとが本当に勉強しなければならないのは、敵対的買収の仕方やその防衛策の検討ではなく『生きた友好的M&A(非・敵対的M&A)でアフターM&Aの会社の人間を幸せにする』ための地道な経営実行である。”」(参考文献2)

 先日、懇意の中堅企業オーナー様が大手企業様に会社譲渡を完了した旨の挨拶に来社されました。買収側も、譲渡側も満足した友好的M&Aだったそうです。M&Aは今や通常経営の時代を改めて痛感した次第です。

(参考文献)
(1)アビームM&Aコンサルティング編『M&Aを成功に導く ビジネスデューデリジェンスの実務』(中央経済書 2006年11月初版)
(2)金児昭『「利益力世界一」をつくったM&A』(日本経済新聞出版社 2007年9月1版)
(3)金川千尋『危機にこそ、経営者は戦わなければならない!』(東洋経済新報社 2011年8月)
(4)佐々木昭美 BIエッセイ2011/11/14 『危機と戦う信越化学の経営。「失われた20年」の間、13期連続最高益更新続けた国際企業』

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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