佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

 INDEX 

2012/07/17 フェルメール<真珠の耳飾りの少女>・オランダ『マウリッツハイス美術館』と東京都美術館で再会

こんな素敵なことが起きるのですね!ビックリです。全世界の人々から愛されるフェルメール<真珠の耳飾りの少女>とオランダで会って以来、5年ぶりに東京で再会しました。オランダ『マウリッツハイス美術館』との再会と言い替えた方がよいかもしれませんね。

先般、東京都美術館リニューアルオープン記念『マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝』の開会式、内覧会、レセプションに参加しました。大感激の特別な日となりました。

本展覧会では、フェルメールやレンブラント、ルーベンスはもちろん、フランス・ハルスやヤーコプ・ファン・ライスダール、ヤン・ブリューゲル(父)の代表作など17世紀オランダ・フランドル絵画黄金時代の至宝が来日。画家も作品も多彩で楽しみ満載です。
公式画像と共に、代表する作品をご紹介します。7月10日現在で、既に10万人が訪れる大人気。早めの訪問をお勧めします。

(1)5年前訪ねたオランダ『マウリッツハイス美術館』名画と東京都美術館で感激の再会!

参考資料 参考資料
*写真左:マウリッツハイス美術館の正面~オランダ訪問の際に撮影
*写真右:フェルメールの故郷デルフトにて~オランダ訪問の際に撮影

参考資料 参考資料
*『マウリッツハイス美術館展』開会式・内覧会風景
展示会の許可を取って撮影しています。

日本初の公立美術館として1926年に開館した東京都美術館が、全面改修し6月30日グランドオープン。その記念すべき特別展第一弾『マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝』(6月30日~9月17日)が開催中です。

マウリッツハイス美術館が現在休館し増改築工事のため、所蔵する珠玉の名画約50点を日本で鑑賞できる画期的機会なのです。マウリッツハイス美術館がやって来たと言った方が良いかもしれませんね。

“絵画の宝石箱”と称されるマウリッツハイス美術館。2007年9月、私はオランダ・ベルギー旅行でマウリッツハイス美術館とフェルメールの故郷デルフトを訪ねるチャンスに恵まれました。マウリッツハイス美術館は、オランダ第3の都市ハーグにあります。ホフフェイフェル池のほとりに国会議事堂などと並んで建ち、周辺を散歩した記憶も残っています。

「マウリッツハイス」とは、オランダ語で「マウリッツさんの家」という意味だそうです。代々オランダ総督を務めた名家に生まれたナッサウ伯ヨーハン・マウリッツが1644年に竣工した邸宅を、オランダ政府が買い上げ、1822年に美術館として一般公開されました。

展覧会場では、<ヨーハン・マウリッツ胸像><マウリッツハイスの景観>などから生い立ちの時代が味わえます。

小池寿子國學院大學文学部教授は、公式ガイドブックの中で17世紀のオランダは経済大国と同時に「絵が飾られていない家はない」という市民がパトロンの芸術大国だったと述べています。

「フェルメール、レンブラント、ルーベンスなど、絵画史に偉大な足跡を残した3人の画家をはじめ、17世紀オランダ絵画を中心にしたコレクションながら厳選された約800点。“絵画の宝石箱”と称される美術館」なのです。(参考文献2)

マウリッツハイス美術館キュレーターのエプコ・ルニア氏は、展覧会図録の中で、17世紀の絵画は主題が宗教画から日常風景に変化したと書いています。それがオランダ絵画の魅力になっています。

「16世紀のオランダ絵画の大半は、教会から制作を依頼された祭壇画で占められていた。・・(略)・・ところが17世紀初めに、絵画の扱う主題に変化が生じる。画家は身の回りの世界に眼を向け始め、現実世界で眼にした新たな主題を作品に採り入れるようになった。」( 参考文献1)

(2)ヨハネス・フェルメール<真珠の耳飾りの少女>~飛び抜けて人気の「トローニー」

参考資料
*ヨハネス・フェルメール<真珠の耳飾りの少女> 1665年頃 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*ヨハネス・フェルメール<ディアナとニンフたち> 1653~1654年頃 マウリッツハイス美術館蔵

何と言っても、注目は世界的人気のヨハネス・フェルメール<真珠の耳飾りの少女>。その魅力は何なのでしょうか? 内覧会でじっくりと少女と対面できました。

光る真珠の耳飾り。小首を傾げ、親密なまなざしで、少し口を開き、濡れた赤い唇の魅惑に満ちた表情に取り込まれてしまいますね。別名、「青いターバンの少女」。頭に巻いた青いターバンは異国風で、東洋を感じませんか?

<真珠の耳飾りの少女>は「トローニー」作品と言われます。「トローニー」(頭部の習作を意味するオランダ語)は、芸術的効果を狙った架空の人物あるいは性格のタイプを描いた人物画の独立したジャンル。レンブラントがオランダ美術に「トローニー」の流行をもたらしたという。

フェルメールは「オランダの古都デルフト出身で、静謐で瞑想的な風俗画によって十七世紀のオランダを代表する画家の一人となった。」(参考文献8)

17世紀美術の手引書では、歴史画家の評価が高く、フェルメールは画家なりたての20台前半には、歴史画<ディアナとニンフたち>という初期作品を描いています。「ローマ神話に登場する狩猟の女神ディアナが、若い女性の姿の精霊(ニンフ)たちと休息している場面。」(参考文献7)

美術手帖6月増刊号は、「フェルメール 少女の魅力、大解剖」(参考文献3)という特集を組み、16人がフェルメールに“焦がれる”魅力の数々を探究している。すごい熱気ですね。

私も3月のBIエッセイで、フェルメールの魅力を語る3人(小林賴子『フェルメール』、福岡伸一『フェルメール 光の王国』、茂木健一郎「脳で見る名画」)(参考文献4・5・6)を取り上げました。(・BIエッセイ2012/03/05 今年必見のフェルメール展鑑賞。5つのフェルメール名画と東京で会える贅沢!

(3)レンブラント・ファン・レイン<自画像>~「光と闇の画家」。オランダ絵画黄金時代は肖像画が大人気

参考資料
*レンブラント・ファン・レイン<自画像> 1669年 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*レンブラント・ファン・レイン<羽根飾りのある帽子をかぶる男のトローニー> 1635~1640年頃 マウリッツハイス美術館蔵

マウリッツハイス美術館は、皆様よくご存知のレンブラント作品を数多く所蔵し、フェルメールと並び人気です。アントーン・フランソワ・ヘイリヘルスが1884年に描いた<マウリッツの「レンブラントの間」>は、当時の雰囲気を濃厚に描いています。

展覧会場にレンブラントの部屋があり、やはり大人気でした。上記名画の他に、<スザンナ>、<シメオンの賛歌>、<笑う男>、<老人の肖像>の6作品が一堂に鑑賞できます。

人物の内面心理への強い関心が表情や身振りに表現されていますね。レンブラントは、63年の生涯で80点近くの自画像を描いたことから「自画像の画家」とも呼ばれています。素描に独自の価値を見いだした画家でもあるという。17世紀オランダは肖像画が人気の時代で、レンブラントの自画像は完成するとすぐに買い手がついたそうです。

「トローニー」は、特定の人物ではなく画家が自由に創作できる作品で、レンブラントが好んだジャンルでした。

(4)フランス・ハルス<笑う少年>~笑顔を描く第一人者で「笑いの画家」といわれる

参考資料
*フランス・ハルス<笑う少年> 1625年頃 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*フランス・ハルス<ヤーコプ・オリーカンの肖像>1625年 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*フランス・ハルス<アレッタ・ハーネマンスの肖像> 1625年 マウリッツハイス美術館蔵

フェルメール、レンブラントと並びオランダ絵画の三大巨匠と称される肖像画家フランス・ハルス。クールベやマネなど印象派の画家にも多大な影響を与えたそうです。

ハルスは人間味溢れる肖像画の天才だったようです。「笑い」をも絵のテーマにした「笑いの画家」とも呼ばれるらしい。「円形の絵は「トンド」と呼ばれ、ルネサンス期に「聖母子」や「聖家族」を描く際に使われたもの。そのトンドにこんな庶民的絵を描いている点にも大胆さを感じます。」(参考文献2)

アムステルダム国立博物館にある有名なハルス自身の肖像画<陽気な酔いどれ>はご存知の方も多いでしょう。紙幣に印刷されたこともあり、オランダ国民に愛されているそうです。

同時に、<ヤーコプ・オリーカンの肖像><アレッタ・ハーネマンスの肖像>では、流行の衣装を身につけた夫妻の肖像画をかなり精密に、優美に描いています。

(5)ヤーコプ・ファン・ライスダール~オランダ黄金時代の最も偉大な風景画家

参考資料
*ヤーコプ・ファン・ライスダール<漂白場のあるハールレムの風景> 1670~1675年頃 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*ヤーコプ・ファン・ライスダール<ベントハイム城の眺望> 1652~1654年頃 マウリッツハイス美術館蔵

ヤーコブ・ファン・ライスダールはオランダを代表する風景画家。多くのジャンルの風景画を描いた。地平線、水平線を低くして、画面の大部分を占める空や雲を印象的に描く構図は、ライスダール作品のトレードマークでもあり、オランダの風景画に大きな影響を与えたそうです。

「オランダは国土の4分の1が海面より低く、1年を通して厚い雲におおわれ、特に冬期は曇りや雨の日が1カ月の3分の2くらい続きます。オランダの風景画にはこの曇天を描いたものが多く、見方によっては憂鬱なイメージとも結びつきますが、雲間から差し込むやわらかな光に照らされて輝く一瞬の景色こそ、17世紀のオランダ市民がこよなく愛した母国の姿でした。」(参考文献2)

(6)ペーテル・パウル・ルーベンス<聖母被昇天(下絵)>~17世紀バロック絵画の巨匠で「色彩画家」

参考資料
*ペーテル・パウル・ルーベンス<聖母被昇天(下絵)> 1622~1625年頃 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*ペーテル・パウル・ルーベンス<ミハエル・オフォヴィウスの肖像> 1615~1617年頃 マウリッツハイス美術館蔵

フランドル地方(現在のベルギーを中心とした地域)で活躍した17世紀バロック美術の巨匠ルーベンス。

<聖母被昇天(下絵)>は、アントワープ聖母大聖堂の祭壇画の下絵として描かれたもの。多様な動きのある絵で華麗な色彩に満ち、素描に対して色彩を重視する「色彩画家」ともいわれる。

「ルーベンスのいわゆる下絵(イタリア語でモデッロ)の特徴は、素早い筆遣いで絵具を塗る、スケッチ風の描き方にある。大作を描くのにはアトリエの助手に頼ったルーベンスだが、油彩のスケッチでは巨匠自らが筆をふるった成果を見ることができる。」(参考文献1)

また、ルーベンスは宗教画や神話画、歴史画だけでなく、見事な風景画や肖像画も描いた。外交官としても活躍し、少なくとも5ケ国語を操り、各界との交流によって、多くの肖像画の注文を受けた。<ミハエル・オフォヴィウスの肖像>は、ドミニコ会修道士の肖像画です。僧服である白い毛織物のチュニックと肩衣をつけている。生き生きとした表情が伝わってきますね。

(7)ヤン・ブリューゲル(父)~花を中心に描く静物画の先駆者「花の画家」

参考資料
*ヤン・ブリューゲル(父)<万暦染付の花瓶に生けた花>1610~1615年頃 マウリッツハイス美術館蔵

参考資料
*ヤン・ブリューゲル(父)およびヘンドリック・ファン・バーレン
<四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪>1621~1622年頃 マウリッツハイス美術館蔵

この頃、花の絵は比較的新しいジャンル。花の静物画を得意としたことから、「花のブリューゲル」とも呼ばれていたそうです。サイズも大きく、豪華な花の絵が特徴。珍しい高価な花ばかりを描いており、裕福なパトロンを必要とするので宮廷画家となったという説もある程です。

アントワープには専門分野の異なる画家が協力して絵画を制作する長い伝統があるそうです。ファンバーレンが人物を、ヤン・ブリューゲル(父)が風景、花、果物、動物、その他の飾りなどを描いた。

(8)フェルメールグッズ、オランダグッズが多彩で人気です。触れて、身近に置いておきたいですね

フェルメールの人気は地元オランダでも凄く、5年前にオランダを訪ねた際にコラボ企画商品にも出会いました。ハーグの名門ホテル「クールハウス」内のレストラン「クールザール」ではフェルメールメニューが提供されました。

参考資料
*オランダのレストランで見つけたコラボメニュー~フェルメールケーキ。ケーキの上に作品が描かれています。

今回の「マウリッツハイス美術館展」を記念して本展ミュージアムショップでも、沢山のフェルメールグッズやオランダグッズを販売しています。ここでしか販売していない限定グッズも多数そろえています。マウリッツハイス美術館展鑑賞のお土産として、またアートグッズのコレクションとしても楽しめます。

参考資料
*「青い日記帳」のコラボグッズ~フェルメールのキーホルダーとグラス

私はフェルメールの静謐で品格あるステンドグラスデザインのキーホルダーとグラスを購入しました。「青い日記帳」とのコラボグッズです。観るだけでなく、触れて、身近に置いておきたいという気持ちに応えています。

以上

「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」
会期:2012年6月30日(土)~9月17日(月・祝)

開室時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後8時まで) 入室は閉室の30分前まで
※混雑緩和のため、7月21日(土)~8月31日(金)は、金曜日の夜間開室を除き、各日、午後6時30分まで延長します

休室日:月曜日(ただし8月13日、9月17日は開室。)

会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8ー36)

お問い合わせ:ハローダイヤル03・5777・8600
ホームページ:http://www.asahi.com/mauritshuis2012/

主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、フジテレビジョン

(参考文献)
1.編集 マウリッツハイス美術館・東京都美術館・神戸市立博物館・朝日新聞社
『マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランダル絵画の至宝』展覧会図録
(朝日新聞社 2012年)
2.監修 小池寿子 編集・執筆 タミワオフィス・中村剛士・橋本裕子・上村久留美・情報技研
『マウリッツハイス美術館展 公式ガイドブック オランダ・フランダル絵画の至宝』
(朝日新聞出版 2012年6月)
3.美術手帖 2012年6月号増刊「特集 フェルメール 16人が語る最新ガイド
(美術出版社2012年6月)
4.小林賴子『フェルメール -謎めいた生涯と全作品』(角川文庫 2008年9月)
5.週刊 西洋絵画の巨匠4『フェルメール』(小学館 2009年2月)
6.福岡伸一『フェルメール 光の王国』(木楽舎 2011年8月)
7.構成 菊地敦己、文 国井美果『こどもと絵で話そう ミッフィーとフェルメールさん』(美術出版社 2012年6月 第1刷)
8.高階秀爾・三浦篤『西洋美術史ハンドブック』(新書館 2011年4月 第9刷)

≪BIP ブックモール≫
読者の皆様へより便利に参考情報・参考書籍をご紹介するために、Amazon.co.jpアソシエイト・プログラムを採用しています。


>>佐々木昭美へのご相談はこちら


thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

>>詳しいプロフィールはこちら

◆ご質問・お問い合せはこちらから
専門コンサルタントへの、ご質問、ご相談等、お気軽にお問い合せ下さい。

BIPコンサルティング無料相談会のご案内 IT系企業/フランチャイズビジネス/M&A/組織・人事/小売業/建設業関連企業

各分野プロコンサルタントとの無料相談会を実施しています。
お気軽にお申し込みください。

受付中の無料相談会はこちら

トップへ

サービスのご案内

無料相談会

お問い合わせ

コラム「ミニ講座」

BIエッセイ

特集コラム

採用情報

無料メルマガ

無料メルマガ
BIPニュース
配信中!

BIPからのお知らせ、ビジネスに役立つ情報、佐々木昭美のBIエッセイ要約等、月2回配信!

メールアドレス:

東北復興支援

ページ上部へ戻る
Top