佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2008/03/03 雛祭り-NHKTVドラマ 宮﨑あおい主演『篤姫』人気を探る

 本日、3月3日は「上巳(じょうし)の節供」である。「桃の節供」ともいう。いわゆる雛まつりである。年始と5節供は、江戸時代の祝日であった。
 また、旧暦嘉永7年3月3日(新暦1854年3月31日)は、日米和親条約締結の日である。江戸末期波乱のこの時期を生きた女性『篤姫』を描いたNHKTVドラマの人気が特に20-40才台女性と父親に高く、地元薩摩は多くの来訪で賑わっていると伝えられている。
 私も、最近は毎週日曜日夜8時NHKTV『篤姫』を観るのが楽しみである。原作、脚本、主役ともに女性の物語は、どう展開するのでしょうか。


1.我が家の雛祭り-雛飾りと草餅、白酒、菱餅、ひなあられ(神崎則武『「まつり」の食文化』角川選書)
 故郷宮城県北部農村の「桃の節句」の記憶は、子供たちにとっては「強い旬の霊力を秘めた苦みをもつ甘いよもぎ」の草餅を食べられて、「酒度は薄く甘みが強い」白酒を飲める嬉しいセチビ(節日)である。私は男4人兄弟であった。娘が一人もいなかった父母であったが、草餅と白酒による家族の雛まつりは、祖母の協力を得て毎年大事にしていた。祖祖母、祖母、母と女3代が健在の時期もあったが、男の子供たちが主役の大家族に雛飾りの記憶は薄い。

 雛人形は、室町時代に公家社会から始まり、江戸時代に武家社会に広まり、「嫁入り後のはじめての節供に内裏(だいり)雛を飾る習慣が生じた。」そして、江戸中期に町人社会に伝播し、明治以降庶民社会にも一般化したという。私も、二人の娘に恵まれて、マンション住まいの狭い居間になんとか雛段を設け、ひな人形を飾り、菱餅、ひなられ、白酒という笑顔にあふれた風景を体験することができた。私は、札幌時代の甘くておいしい北海道産ひなあられが大好きで、関東では手に入らないのが残念である。



2.お姫さまの雛祭り 『家庭画報』3月号 世界文化社
 雛祭りは、平安の世から続く女の子の幸せを願う大切な節供です。江戸時代に大名の婚礼調度品であり、美術工芸の一つとしても大きな発展を遂げました。

篤姫は、生家である今和泉島津分家から薩摩藩島津本家28代当主斉彬の養女、近衛家の養女、そして徳川13代将軍家祥(家定)御台所となります。大名と公家両方の作法を教育され、体験します。家庭画報3月号は、日本一の大名であった加賀百万石の雛祭りと王朝文化を継承する京雛を紹介しています。当時を映像で楽しめる雑誌ならではの企画です。



3.原作 宮尾登美子
「桜島の姿を・・仰ぐのは・・これが最後になるであろうと篤姫は思いつつ、・・・」『天璋院篤姫』上・下 講談社文庫
嘉永6年8月21日、篤姫が故郷薩摩を出立する場面のこの書き出しから原作者宮尾登美子さんの小説が始まっている。故郷との別れの場面を読みながら自然と涙が流れました。別れは、頭では分かっていてもその時が来て始めて、その惜別の大きさに心を揺さぶられるものである。しかし、作者が時間的には前後を取り替えて、あえてこの場面を小説の最初に据えた意味は、なにかを表現したいからではないかと思います。


NHK出版『篤姫 前編』の中で宮尾登美子さんは、こう述べている。「江戸城明け渡しのときには、皆が先を争って城を出ていく中、篤姫だけは、徳川家の人間として梃子(てこ)でも動かぬ意地を見せました。」「篤姫の人となりに、胸のすくようにあっぱれなものを感じるからです。」また、「角川ザテレビジョン『NHK大河ドラマ 篤姫』では、「私ね、女王様が好きなんですよ。男をアゴで使うようなね。クレオパトラや淀君なんて、もう夢中で書きました。そういう女性尊敬します。篤姫もそうですよ。」と篤姫の資質、努力、愛情を讃えている。


「女性の生きざまを描く」ことを使命として小説を書いてきた宮尾さんは、「まさに女性的な要素をすべて捨てて一個の人間として頑張り抜いた」歴史上まれにみる女性がいたことに光を当てたいと思ったのでしょうか。別れも、堂々と未来に進む自らの意志による別れである強さを感じてほしい。結局請われても薩摩への帰還を自ら拒否したという篤姫の意志の強さに、私は男でもできる人は少ないと感銘を禁じ得ない。作者の女性をみつめる眼は、歴史を越えた人間の生き方に注がれている。



4.脚本家 田淵久美子
「現代女性にみてほしいドラマです」『篤姫前編』NHK出版
「女の覚悟を描きたかった」『NHK大河ドラマ 篤姫』角川ザテレビジョン
 3月2日 第9話「篤姫誕生」を観た。波乱に満ちた変化を短時間のテレビドラマに表現することは簡単ではない。脚本家の田淵久美子さんは、前向きに生きる女性たちの姿を、ときにはスカツと痛快に、ときにはグッと切なく描いて、視聴者の共感を得てきたメデイア世界では知られた方だという。

「篤姫が嫌な女に見えないように・・・自分の意志をしっかり持った人物として描きました。・・ただ、下手をすると男性の反感を買う恐れもあります。そこは工夫して、たまにはおバカなことをやってしまうキャラクターにしています」「私がこのドラマで一貫して伝えたいことは「愛」です。与えられた運命から逃げずに自分の意志を貫き、愛し、愛された篤姫の生きざま、彼女に影響を与え、与えられた人々の思いを、私も逃げずに、覚悟を持って書いていきたいと思います。」(『篤姫前編』NHK出版)

私は、少し資料を読んで、美人で素敵な笑顔のシナリオライターのプロフェショナルに触れて、最後まで楽しもうと思った。



5.主役 宮﨑あおい
「波乱の境遇を悲劇だとは思いません」『篤姫前編』NHK出版
「女の道は一本道。覚悟を持って篤姫を生きたい」『NHK大河ドラマ 篤姫』角川ザテレビジョン

  新聞報道によると、一昨年の「功名が辻」の平均視聴率20.9%をしのぐ好調だ。主演の宮﨑あおいさんに好感の反響が多く寄せられているという。「篤姫の人格が形成された10代を、リアリテイーをもって演じられる女優」(佐野元彦チーフプロデューサー(CP)「産経新聞」2008年3月2日号)として大河史上最年少主演の誕生が的中した。

 私には、演技というよりも宮﨑あおいさんの利発さと自然な人間らしさがそのまま表現されていると感じる。フレッシュな演技がさわやかな鮮やかさを伝えて、若い女性にも人気の青春ドラマにもなっているのだろうか。

 豪華なキャストも見どころです。武家の女性を演じるのはこれが初めていう実母お幸の樋口可南子に惚れた。「いい家庭からはいい子が育つ」という当たり前で普遍的なことを淡々と演じられたらという実父島津忠剛を演ずる長塚京三。日本で一番世界をみて政治を動かした島津家28代当主島津斉彬に高橋英樹。篤姫の教育係で「鉄の女」幾島を演ずる松坂慶子。原作に、「斉彬が手配した幾島(いくしま)という老女は、もとの名を松阪(まつさか)といい、」と書かれている。キャステイングは誰が考えたのか、楽しい限りである。



6.時代考証 原口 泉
 『篤姫-わたしこと一命にかけ』グラフ社

 原作、脚本、主役と女性づくしのドラマの時代考証を担当した原口氏が上記著作を2008年1月1日に上梓しました。原作の宮尾さんは、歴史小説における粉飾の醍醐味について語っている。「史実と史実との合間の、資料のないところをいかに粉飾していくか?そここそが歴史小説の面白さなんです。」(角川ザテレビジョン『NHK大河ドレマ 篤姫』)

「宮尾登美子さんの小説、『天璋院篤姫』の中では、船で江戸に向かうという設定になっていますが、実際には陸路を使いました。」

 時代考証家から見た天璋院篤姫、47年の生涯とはなんだったのでしょうか。「将軍の世継ぎ問題と、江戸城の無血開城、そして徳川家の血筋を守り、後継者を育てたことです。」では、何故今、篤姫なのでしょうかと原口氏は問います。

 第1に「際だつのは、やはり彼女の計り知れない『強さ』です。」その強さは、少女時代の厳しい生活と今和泉家両親の愛情ある教育と述べているように思われます。

 第2に「日本人が失いかけている『家』の意味を考え直すきっかけにあるのではないか。」

 2007年に還暦を迎えた原口氏は、団塊の世代です。戦後、「家」はプライベートな組織と考える傾向が強くなったが、「家」は公的な性格を持つ人間集団の最小単位とし大事なことが再認識せざるを得ない状況にあるのではないか。

 一、家業、二、家産、三、家名、四、家督、五、家訓は、家族=「家」発展の基盤ではないのか。100年の智慧とは何かを問うているようです。

 TVドラマはまだまだ続きます。色々な楽しみ方があると思います。原作を改めてお読みになる方も多いと思いますが、最近出版された2冊も紹介しておきます。深い楽しみの一助になれば幸いです。



 堂門 冬二『幕末の尼将軍-篤姫』NHK出版 2007.10.25

 鈴木由紀子『最後の大奥 天璋院篤姫と和宮』幻冬舎新書 2007.11.30


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