佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2010/08/02 猛暑の夏、ゆったりと心にも水をあげる読書

 土日(7/31~8/1)は猛暑でしたね。海、プールは冷夏だった昨年の1.5倍だったようです。皆様は猛暑の夏をどうお過ごしでしょうか?

 私は、7月に大好きな映画『躍る大捜査線3』を観たばかりなので、今回は自宅休養に徹し、冷房のお世話になりながら、ゆっくりと読書の時間を過ごしました。

  齋藤孝・梅田望夫『私塾のすすめ-ここから創造が生まれる』
  弘兼憲史『気にするな』
  松原泰道『一日一生 五十歳からの人生百歳プラン』

 40才後半で対談した明治大学教授齋藤孝さん・ミューズアソシエイツ社長梅田望夫さんの仕事論・教育論・人生体験論。60才台になった団塊の漫画家弘兼憲史さんの仕事・人生体験論。95才に書いた「南無の会」会長で住職松原泰道さんの人生論。

 仕事関係や知識中心の本は暑さのせいか気が進まないので、以前に読んでまた読んでみたいと思っていた“自分の体験を語りながら、人生を一緒に考える”新書3冊をゆったりと再読しました。著書の真髄=コアを知るのに再読に勝るものはないですね。齋藤孝教授は諳(そら)んじなければならないと言うに違いないが。

 職業、年齢、価値観等が多様な方々の実体験に基づく仕事論・教育論・人生論は、普段疲れ、忘れている心を癒し、人間力を取り戻す清水となりました。また、レールのない現代において一生学び続けることの大切さを改めて痛感した次第です。

(1)レールなき時代をサバイバルする「一生学び続ける戦略」を縦横無尽に語り合う
 -明治大学文学部教授齋藤孝・ミューズアソシエイツ社長梅田望夫『私塾のすすめ-ここから創造が生まれる』-

参考書籍

図 齋藤・梅田両氏のあこがれ、本による習熟体験
参考情報
            
 ご存じの方も多いと思いますが、著者を簡単に紹介します。

 齋藤孝(さいとうたかし)さんは、1960年生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。専攻は、教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書は『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『日本を教育した人々』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)など多数。

 梅田望夫(うめだもちお)さんも同じく、1960年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。東京大学大学院情報科学科修士課程修了。ミューズアソシエイツ社長。(株)はてな取締役。著書は『ウェブ進化論』『ウェブ時代をゆく』(ちくま新書)『フューチャリスト宣言』(共著、同)、『シリコンバレー宣言』(ちくま文庫)、『ウェブ時代 5つの定理』(文藝春秋)等。 

 伝統的な素読、限界体験の“強制”を国民習慣へと実践と本執筆で戦う齋藤さん。未来への個性的生き方を、限定した仲間とWebで戦う梅田さん。立ち位置の違う2人の対談です。現実の体験を率直に語っているのが良いですね。自分の主張も鋭く、若い世代への思いが強い2人が共通する思いは、「志」をデザインすること。福沢諭吉的メンタリティーとも述べています。

2人共、自分の成長にとってロールモデル(師)へのあこがれの大切さを語っています。また、限界を突き抜ける習熟体験の大事さを述べています。

 齋藤孝「私のロールモデル」(ナポレオン、嘉納治五郎、ゲーテ)

「治五郎は私の二十代の頃のロールモデルです。治五郎は江戸時代に、諸派諸流にバラバラになっていた柔術というものが、文明開化の時代にすべて時代遅れのものとして消え去ろうとしているその状況を憂えて、各流派のいいところを集めて講道館柔道という一つの大きな道にまとめあげました。そのことによって柔道が日本国民に定着し、途絶えることのない未来につながっていったという、そういう大きな教育事業をなした人です。私は、日本人が培ってきた素読などの学習文化や、身体文化のなかの良いものをまとめあげて、一つの型として、永続的なものとして再統合して、未来に続く遺産にしていきたい、要するに未来への遺産つくりをしたいという気持ちを、二十代の頃に強くもつようになりました。」(参考文献1 115~116ページ)

 梅田望夫「私のロールモデル」(今北純一、エスター・ダイソン、村上春樹)

「一人目は今北純一さん(1946年生まれ)です。二十代で渡欧し、オックスフォード大学、バッテル記念研究所、ルノー財団、エア・リキード社、CVA(Corporate value Associates)といったんの欧州の超一流組織で、ほとんど「たった一人の日本人」として活躍を続けるかたわら、パリから日本に向けて数々の著作を発表するという今北さんの生き方は、長らく私のロールモデルであり続けました。・・(略)・・米国に本社を持つ経営コンサルテイング会社への就職を決めたとき、シリコンバレーに移住したとき、シリコンバレーから日本に向けてモノを書き始めたとき、大きな転機において私は、ずっと今北さんの背中を追いかけていたような気がします。」(参考文献1 55~56ページ)

私のロールモデルは、渋沢栄一、松下幸之助、カーネギーでした。全く届きませんが、同じ人間ですばらしい先輩がいたというあこがれは、私塾の原点である“私淑”ですね。BIP起業の原点へ思いを新たにしました。また、2008年より始めた30~40代幹部育成「事業リーダー実践塾」(詳細はこちら>>)は、今年11月第3期開催予定です。“思えば実現する”の一つとして更に充実への思いを再確認した次第です。
 

(2)人生、楽しんだもの勝ちです!あなたは、仕事派、遊び派、バランス派?
-漫画家弘兼憲史『気にするな』-

参考書籍 参考書籍

 弘兼憲史(ひろかね けんじ)さんは、1947年(昭和22年)山口県岩国氏生まれ。早稲田大学法学部卒業後、松下電器産業勤務を経て1974年漫画家としてデビュー。『人間交差点』『課長島耕作』『黄昏流星群』などヒット作を生みだし続けている。

人気漫画『課長島耕作』、そして『社長島耕作』の作者といえば、弘兼憲史さんをご存知の方も多いと思います。自分の人生を私たちには意外な言葉で語っています。

「本当に毎週描くこと以外には考えないできました。結果的にはいろいろとうまく行っているので、きちんとした計画、設計があったように思われるかもしれません。しかし、恥ずかしながらそんなことはまったくありません。気がついたら漫画は続いていたし、気が付いたら家を買っていて、気が付いたら子どもが成人していた。これが実感です。行き当たりばったりと言われればその通りです。」(参考文献2 151~152ページ)

弘兼憲史さんは、本書を「これまでの漫画家としての人生を振り返りながら、あれこれと同世代や若い人へのメッセージを綴ってみたものです。」と述べています。

「いやな仕事でえらくなるより好きな仕事で犬のように働きたいさ」

このセリフは、『課長島耕作』の初期に登場したセリフですが、著者の本音だそうです。

「近頃は、仕事ばかりをしているとバランスの悪い人間のように言われることがあります。ワークライフバランスを大事にせよ、という人もいます。もちろん人それぞれですから、そういう考え方の人がいるのは結構なことです。しかし、私自身は犬のように働き続けられることに喜びを感じています。仕事と私生活のバランスはともかくとして、仕事と幸福感は実にうまく共存しているからです。」(参考文献2 9~10ページ)

 誤解させる可能性ある言葉ではありますが、同じ団塊の世代の私には共感するメッセージです。しかし、恐らく少数派かもしれませんが。でも、その幸福感を味わって見るのもいかがでしょうか。目次で流れをお知らせします。第5章は、細目のキーワードも紹介しておきます。弘兼憲史さんのメッセージです。

 第1章 ア・ハード・デイズ・ナイト
 第2章 人生に無駄な寄り道はない
 第3章 すぐに成功しなくていい
 第4章 島耕作の誕生
 第5章 閉塞感を嘆く前に
 人生は自己責任、人間はアメーバではない、誰もがラッキー、老人になる面白さ、誰かのせいにしても始まらない、目先のことに集中する、自らを楽しいところに置く

(3)人生百歳時代の人生プランを持っていますか、考えていますか、学んでいますか?
-松原泰道『一日一生 五十歳からの人生百歳プラン』-

参考書籍
 
 松原泰道(まつばらたいどう)さんは、1907年東京都に生まれました。この本の執筆は95歳の時です。岐阜市瑞龍寺で修行。臨済宗妙心寺派教学部長、同派東京龍源寺住職を経て、「南無の会」前会長、全国青少年教化協議会理事、仏教伝道教会理事。2009年肺炎のため101歳で死去されました。

 松原泰道さんは、今やよく知られた方ですが、松原さん自身世間にでたのは1972年で65歳の時であったそうです。本書を執筆した95歳までの30年間に百冊を超える著作を出版し、多くの講演をしました。本当に驚きますね。

 住職で、臨済宗妙心寺派教学部長を務めた方ですので、もちろん仏法の教えを噛み砕いて諭す内容もありますが、なによりも古今の多数の先達の実際の生き方や考え方を紹介しながら人生を語っていて大変読みやすい本です。

 先日、日本の人口統計が発表され、平均寿命は男性約80歳、女性約88歳と人生百歳時代の方が続々と増えています。個人差が大きい人生後半ですが、百歳時代の人生プランは、若い世代も含めて学び、考える時代ですね。この本には、そのための基本の考えが大変良く整理されています。目次を紹介します。

 序章  五十歳からは「プラスの諦観(ていかん)」で生きる
 第1章 五十歳からの「人生プラン」を再修正
 第2章 逆境の今こそ、般若心経(はんなしんぎょう)の智慧
 第3章 中年は活火山をかかえこんでいる
 第4章 百歳までの上手な齢(とし)のとり方
 第5章 百歳までの「一日一生」の生き方
 第6章 「死の準備」は毎日の生活にある

 昨年、101歳でなくなられるまで「百歳人生」を実体験した師の言葉は、極めて実際的、現実的なことに“なるほどなるほど”と合点することが多いと思います。

「50歳は人生の折り返し地点」~「プラスの諦観」とは、あきらめではなく「明らむ」で、物をはっきりさせること。「惑う」は大切で、後半生のエネルギーになる。

「一日一生」~一生の中の一日でなく、今日という一日に自分の一生を燃焼させること。

「若きは麗(うるわ)し、老いたるはなお美(うるわ)し」~アメリカの詩人、 ホイットマンの詩をこう解釈し、愛唱したという。

人生について、私は正月に以下書いたことを思い出しました。今年も7ケ月経って、一度原点回帰の時期ですね。

「2010年は、社会も個人も「再スタート(リニューアル)元年」だという気がします。人生での戦術はもちろんですが、人生戦略プランを見直しする良い時期かもしれませんね。・・(略)・・ 静謐な正月に、「生きる喜び」は何かと自分と対話して、「働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び」という心の声が聞こえました。それで「三喜計画」と名付けました。皆さまの初夢は何でしょうか?」
(詳細は・・・2010/01/12 2010年初夢(個人編):「働く喜び、学ぶ喜び、遊ぶ喜び」の生きる喜び「三喜計画」を描く-2010年は「再スタート元年」-

以上

(参考文献)
1.齋藤孝・梅田望夫『私塾のすすめ-ここから創造が生まれる』(ちくま新書 2008年5月10日第一版)
2.弘兼憲史『気にするな』(新潮新書  2010年6月20日発行)
3.松原泰道『一日一生 五十歳からの人生百歳プラン』(講談社+α新書 2003年1月20日第1刷発行)

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