佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2011/01/24 150回記念号――書くことで、「嬉しかったこと」「霧が晴れたこと」「仲間ができたこと」。

 BIエッセイは2007年7月に第1号を発信し、今回で150号を迎えることができました。約3年半経ち、お陰様でBIPのWEBサイトは年間に数万名がアクセスし、BIエッセイは年間に約1万名の方に読んで頂くようになりました。皆さまのご意見、ご助言、叱咤激励の賜物と心より感謝申し上げます。これからもご愛顧願いたいと思います。

 このBIエッセイは、土曜日または日曜日の半日を使って、ほぼ毎週書き続けてきました。自宅居間にPCとプリンター、本や資料を広げているので、家族に迷惑をかけている面がない訳ではありません。その家族より年末に『「佐々木昭美のBIエッセイ」全集(2007年~2010年)』私家本をプレゼントされました。辛辣な批評家でもある家族から嬉しい贈り物を頂き、深い感謝の温かい気持ちで新年を迎えました。

参考書籍 参考書籍

 150回記念号にあたり何を書くかを色々考えてみましたが、もしも取材記者から「今のお気持ちは?」と聞かれたら、どう応えるかを仮定して書いてみたいと思います。書くことがどんなことかの一端を皆様と共有できたら嬉しい限りです。

(1)「続けられたこと」が、やはり一番嬉しいですね!

 150号を迎えて、一番嬉しいのはやはり「続けられたこと」ですね。自分でも不思議なくらいです。

 【BIエッセイの出発は、顔の見える仲間のコミュニティ】
 「BIエッセイ」執筆の発端は、皆様と頻繁に直接お会いする機会が少ないので、一緒に「明るく楽しくイノベーション」を共有するコミュニティの場をオンライン上にも作りたいというのが当初の思いでした。かっこよく言うと、読者の皆様の顔を思い浮かべながら書くという気持ちも入っています。

 きちんとしたビジネスエッセイ中心に書き、たまたまWEBサイトという媒体で提供するという気持ちでした。ブログではないかと言われるとその通りです。ブログ自身が短い言葉の電子日記から出発しましたが、「Say Everything(何でも言おう)」となり、更に「国民ジャーナリズム」に成長しつつありますね。ブログも多様で良いと思います。

 毎回、一定の分量があるため、「読むのに長すぎて時間がかかる」というご指摘、「毎週しっかりと調べて書いてすごいですね」というご評価と二通りのご意見を寄せて頂きます。読者の立場によって、ニーズや見方は色々あるので両方とも当然で有り難い意見であり、今後に生かしたいと思います。

 その1つとして今後、ツイッター、フェイスブックなどのSNSを始めようと考えています。
 
 【橋田壽賀子「出し惜しみちゃダメよ」――書くことの姿勢と深さを知る】
 参考書籍
 書くことを生業(なりわい)としている方々から、書くことについてその姿勢と深さを知ったことは大変有り難いことでした。

 脚本家内館牧子さんが書いたエッセイ『「踊り子号」の男』(JR東日本新幹線広報誌『トランヴェール』2008年11月号)は今でも心に残っています。内館さんは、脚本家として活躍し名をあげた後も、私の母校でもある東北大学大学院文学研究科修士課程に入学、修了した方で、男世界である相撲界で女性の横綱審議委員会委員としても2000年より2010年1月まで活躍されました。

 昔NHK朝の連続テレビ小説『ひらり』を書くことになって、脚本家先輩である橋田壽賀子先生と熱海で食事された。その際、たったひとつだけアドバイスをお願いした時の言葉は強烈だったという。

 「出し惜しみしちゃダメよ」

 さらに続く橋田さんの言葉もすごいが、その後内館さんが素直にとった行動がまた凄い。

『「半年間も続くドラマだから、ついついこの話は後にとってこうとか、この展開はもう少ししてから使おうと考えがちなの。でも、後のことは考えないで、どんどん投入するの。出し惜しみしない姿勢で向かえば、後で窮しても必ずまた開けるものよ」

 実はその時、私はすでに半年分のおおまかなストーリーを作り終えていた。出し惜しみと水増しのストーリーだった。熱海から帰った夜、私はそれをすべて捨てた。向き合う姿勢が間違っていると思った。
「出し惜しみしない」という姿勢は、人間の生き方すべてに通ずる気がする。』
(詳細は>>BIエッセイ2010/02/15 「出し惜しみしない」:私の「JR東日本-新幹線人間塾」

 【画家人生わずか10年で進化した驚異のゴッホ芸術の謎――強靱な生命力】
 参考書籍
 描いた作品が生存中に評価されるかどうか不透明な画家の生き方に強烈な衝撃を受けました。

「画家こそ天職」と画家になる決意をしたのは、ゴッホ27歳(1880年)であった。オランダ最初期はハーグ派の影響で暗い色調であったゴッホの絵は、多くの出会いと燃えるような研鑽の中で「炎の画家」に変身する。自ら命を絶った37歳までのわずか10年間に世界の画家ゴッホとなったのは何故か?誰でも不思議に思う謎である。27才から37才の10年間の絵画人生だったゴッホの人生を知りたくて昨年ゴッホ展を訪ねました。

 独学で絵画様式や技法を学び、その積み重ねで開花した“技法の画家ゴッホ”。会場を歩きながら、私の心の中には、ゴッホは燃える情熱と苦悩の中で必死に生きた同じ人間だったという共感が沸き上がってきました。

 日本のゴッホ研究第1人者といわれる圀府寺司(こうでら つかさ)大阪大学文学研究科教授が著書『ゴッホ-日本の夢に懸けた芸術家』の冒頭でゴッホをこう評しています。

「もし、ファン・ゴッホに天才と呼ぶものがあったとすれば、それは決して画才ではなく、生きる難しさに耐え、生きる難しさから学び、極限にまで追い詰められながらも、残された道にすべての力を傾注できるだけの強靱な生命力だったとしか言いようがない。」
(詳細は>>BIエッセイ2010/10/12 秋美遊② 画期的な『没後 120年 ゴッホ展-こうして私はゴッホになった』東京・福岡・名古屋で開催!

(2)「霧が晴れたこと」「仲間ができたこと」が一杯ありました。

 150回書いて、「霧が晴れたこと」が一杯ありました。一番勉強になったのは私自身だったような気がします。そして、BIエッセイをキッカケに多くの方と意見交換する「仲間ができたこと」が何より嬉しいことです。

 趣味の旅行紀行、美術館・博物館鑑賞、読書書評は定番ですが、仕事を離れたプライベートなOFFエッセイに根強いアクセスがあり、共通の探訪気質、趣向交流で盛り上がり、新しい縁が出来ることが意外に多いことに驚いています。

 【「伝える力」の伝道師池上彰――<わかりやすさ>は、①聞き手に「地図」を②内容の「見える化」③話の「柱と枝」作りの3つ】
参考書籍
 思っていることをわかりやすく伝えることは簡単でないことを痛感しています。書くには伝える技術を相当研ぎ続ける必要がありますね。まず何を伝えたいか、言葉の吟味、文章術、写真の重要性、一目でわかる図解力等々。

今や、伝える伝道師で有名なキャスター池上彰氏。伝えることの難しさは、NHK「こどもニュース」での体験が大きいそうです。子どもと大人では、前提の知識や認識に大きな違いがあります。子どもにわかりやすく伝えるには、「模型」や「図解」を見て、更に説明原稿を変えなければならいことが多かったそうです。結果、次の流れが確立したと述べています。

 ◆まず、ざっと話したい要素を書き出す。 
 ◆リードを作る。 
 ◆目次を作る。
 ◆一回書いてみる。
 ◆どこを図解にすればいいか考える。
 ◆パワーポイントを作る。
 ◆パワーポイントに沿った原稿に書き直す。
 ◆その原稿を個条書きのメモにする。
(詳細は>>BIエッセイ2010/08/09 改めて、唸った。「図解」は、考える力、伝える力を鋭く磨く。

私も「言葉力」「絵図力」向上に努力している最中です。

 【書く(Output)ことは、Input(情報収集する)-Think(考える)と三位一体(さんみいったい)】
 書くためには、何よりも自分自身が書こうとするテーマを良く知り、理解していることが必要です。そういう意味では、自分の調査、研究、思考を磨く必要を痛感しました。仕事、学び、遊びのプロセスと全く同じですね。

図:Input(情報収集する)-Think(考える)-Output(発信や行動をする)
参考新聞
 書くということは、Input(情報収集する)-Think(考える)-Output(発信や行動をする)行為の繰り返しということも出来ます。「良い習慣は才能を越える」と信じて継続しています。但し、出来るだけOutputを予測し、Inputをする工夫が、「最小の時間で最大の成果」をあげる結果につながるようです。

 【猪木武徳『戦後世界経済史』――政治経済リテラシーは、人生に影響する最大の国民的インフラ】
参考書籍
 企業経営というミクロ経済中心に過ごしてきて、ここ数年間の日本・世界経済、内外政治、外交の体験によって、マクロ政治経済は人生を左右する最大のインフラの1つであることを改めて思い出させてくれました。

 民主主義国においては国民の意思と意識がその骨格と言われます。昨年、微力ながら政治経済書の書評を7回連続して執筆し、その重要性を共有化し、一緒に勉強したいと思いました。転換期の時代にあり、今年も毎月続けていきたいと思います。

 日本経済新聞2009年エコノミストが選ぶ経済図書第1位、そして週刊ダイヤモンド2009年のベスト経済書第2位となった猪木武徳『戦後世界経済史』の問いは根源的で痛烈です。現実を解けない学問は、有効な学問と言えるのか? 当然のことですが、そう言っているように聞こえてきます。

 私が所属しているベンチャー学会、組織学会でも同様に、昨年の全国大会で「自分たちの研究は、“現実から離れていないか?”“役だっているのか?”という問いかけに応えているのだろうか?!」という自問の声が大きくなりました。

 経済学は、現実の政治経済学すなわちポリティカル・エコノミーであったという。普段多くの国民が危惧している知育・徳育の重要性を政治経済学の本から教えてもらうとは思わなかったが腑に落ちた。

 「日本のような経済の先進国でも、市民文化や国民の教育内容が劣化してゆけば、経済のパフォーマンス自体も瞬く間に貧弱になる危険性を示唆していることになる。知育・徳育を中心とした教育問題こそこれからの世界経済の最大の課題であることは否定すべくもない。」
 (詳細は>>BIエッセイ2010/02/08日経2009年エコノミストが選ぶ経済図書第1位 猪木武徳『戦後世界経済史』を読んで


(3)「インフォメーション(情報)時代」から「インテリジェンス(見識・胆識)新時代」へ

 私は1992年にインターネットビジネスの世界に入って、今年でちょうど20年になります。当時は、LAN(ローカルエリアネットワーク)の初歩的時代で、インターネット導入は大学や企業研究所が中心の時代でした。従って、多くの方々とネットワーク協議会、インターネット協会(後に両組織は統合)の活動をボランテイアで行い、村井純先生などを先頭にインターネットを理解して頂く啓蒙活動に一緒に参加しましたが、大変熱気に満ちていました。

 当時、世界のほとんどの人々は、インターネットが世界の共通公共インフラとなるなどと誰も予想しなかったと思います。日本は、今や固定系インターネットインフラの世界一先進国だけでなく、LTEサービスが昨年末に開始され、モバイルインターネットインフラも先進で世界初のユビキタスネットワーク未来島になりました。

 昨年開始した日本経済新聞電子版は10万部を越え、シャープ、ソニーも昨年末に日本で電子書籍端末発売と新聞、雑誌、本、映像、音楽配信サービスを開始しました。職業生活と個人生活もまた大きく変化しそうですね。

 一言でいえば、ICT(情報通信技術)が新たなインテリジェンス(見識・胆識)新時代を切り開きつつあるといえると思います。もちろん、エンターテインメントも含めて。
(詳細は>>BIエッセイ2010/11/29 電子書籍端末シャープGALAPAGOS、ソニーReader12月10日発売!2010年は「電子書籍元年」ですね

 【村井純『インターネット新世代』――本当に始まったインテリジェンス(見識・胆識)新時代】
参考文献
 村井純『インターネット新世代』は、上記のようなデジタルコミュニケーション技術を基盤とするインターネットに関わる多くのテーマについて的確に解きほぐしてくれています。

 教育や医療の改善、福祉や少子・高齢化の課題、環境やエネルギー問題も、すべての人が参加し、少ないコストで課題を解決するためにはインターネットが貢献すると述べています。まだまだ発展途上のインターネットですが、一緒に育てて全国民が役立てていこうと呼びかけています。その意味では、インターネットを直接的に研究し、インターネットに関連する事業にたずさわる方々だけでなく、あらゆる職業、業界の方に読んでほしい内容を広い角度から問いかけています。
(詳細は>>BIエッセイ2010/01/25 100回記念号:NTT東、IP収入が音声収入を逆転!IP(インターネットプロトコル)を友に、次世代IP(インテリジェンスプラットフォーム)『BI経営研究所』設立!」

 【FacebookがGoogleを越えた――仲間(ソーシャル)は、知と人間を繋ぐインテリジェンス・プラットフォーム】
参考書籍
 昨年ついにSNSFacebookのアクセスが世界で5億人を突破しGoogleを越えました。私もアカウントを取得して手習いを始めています。この意味を私は2つの側面から考えています。

 私は、人間のインフォメーション行動とインテリジェンス行動という人間生態学的なフレームワークと、PULL-PUSHという2つのアクセス方法のマトリックスでその進化を考えています。

 インフォメーションのデジタルデータベース化(WEB)と検索技術(検索Saas=Google等)によって、情報の目的意識的探索(PULL)はすばらしい広がりを可能としました。

 しかし、情報の大海を前にして、価値あるインフォメーション=インテリジェンスにはどう出会うのでしょうか。

 学校・大学での学習・研究、書店・図書館で本を探す、仲間との交流、新聞・TVの広告や情報見る等必ず出会いの場が必要です。今でもメーリングリスト、メルマガやアマゾンのリコメンド等を受信(PUSH)していると思います。無制限にPUSHされては消化不良どころか、その時間は有限でムダですね。それでは個人の価値や趣向にマッチングした有益情報を自動的に受け取れれば理想でしょうが、その人口知能技術は部分的には実現しつつあるとはいえ、まだまだ人間の知能に追いつくのは難しいのが現状です。英語のソーシャル(Social)は、仲間、親睦、社交という意味です。

 グーグル・ヤフー等の検索アルゴリズム技術によるデジタルランキング上位順位情報の多くは一定の意味はありますが、見ているとほとんど新聞・TV情報に依存しているようです。ロングテールでマイナーな情報を得るために、私は最近むしろ新聞、雑誌を丁寧に読むようになりました。

 SNSFacebookが爆発的に広がっている人気の要因は、伝統的に有効として試され済みのしくみ=「仲間とのつながりの場」をオンラインで提供している(PUSHとPULLの併用)ヒューマンインタフェイス技術の進化にあるような気がします。知っている仲間(Facebookは実名、写真掲載の学生図鑑が発展した)の知はある程度フィルタリングがされ、インフォメーションからインテリジェンスに変換されていると仮定できる、或いは確率が上がると合理的に予想しているエコ(生態)システムと言えるようです。間違っているかもしれませんが。

 仲間(ソーシャル)は、自分が部分使用或いは部分所有できるインテリジェンス・ブレインとお互いに「黙認」しているのではないかと思うのです。私は、「仲間(ソーシャル)は、インテリジェンスのフィルター」と説明することが多いです。

 【世界(グローバル)に日本の知=インテリジェンス(科学技術製品、制度、文化)を広げよう】
 我々は、歴史の限界も含めて誤った理解や偏った見方にとらわれていないか? 知らない現実を解明する挑戦を活発にしているか? 歴史と現実、そして未来を見る複眼的な視野と挑戦する胆識をしっかり持つ転換点にいるような気がします。日本と個人の明るい未来をしっかりと見つめていきませんか。

 新春にその気持ちを表現して字余りの俳句を4句つくりました。
  題-新春にあたり   “新サムライ  複眼二刀流で   未来拓く”
  題-就職・経済    “新サムライ  世界に跳ぶ志が  日本を拓く”
  題-外交・歴史    “和魂漢才   和魂洋才を越え  和魂自才”
  題-科学技術・文化  “スカイツリー 世界一の電波塔  未来島”
(詳細は>>BIエッセイ2011/01/04 2011年新春にあたり “新サムライ 複眼二刀流で 未来拓く”

 BIエッセイは、当然部分的繋がりではありますが「仲間のコミュニティー」の1つとして継続することを願っています。今後ともご支援、ご鞭撻を切にお願いする次第です。
以上

(参考文献)
1.東日本旅客鉄道株式会社『トランヴェール』2008年11月号
2.圀府寺 司(こうでら つかさ)『ゴッホ-日本の夢に懸けた芸術家』(角川文庫 2010年9月25日 初版発行)
3.池上彰『わかりやすく<伝える技術>』(講談社現代新書 2009年7月20日第1刷発行、2010年5月6日第16刷発行)
4.猪木武徳『戦後世界経済史』(中公新書 2009年5月初版、2010年1月5版)
5.村井純『インターネット新世代』(岩波新書 2010年1月20日 第1刷)
6.熊坂仁美『Facebookをビジネスに使う本』(ダイヤモンド社 2010年11月第1刷)
7.根岸智幸『Twitter使いこなし術』(アスキー新書 2010年1月初版)

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