佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2011/01/31 JAXA成功公表。世界初小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の画像をまず見て下さい。

 「イカロス」が宇宙空間で帆を一杯広げ、その太陽光推進力で昨年12月に金星8万キロメートルと近接して観測しながら、その証拠となる画像を自分のカメラで撮影して発信していた。その画像を見て、感激で一杯になりました。「はやぶさ」に続いて、我々日本人の仲間が再び成功させたのです。

 先週26日(水)、その証(あかし)を、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)は公表しました。世界初・世界最先端の実績を確認した「小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)の定常運用終了報告」として宇宙開発委員会に報告し、その内容をJAXAWebサイトにプレスリリースとして掲載しました。
その資料は、「イカロス」の姿・構造と世界初・世界最先端の数々が誰でも10分で読める分かり易いものです。

 世界初小惑星探査機「はやぶさ」成功については多くの報道や出版もあり、国民に知られつつありますが、世界初宇宙ヨット(正式名称 小型ソーラー電力セイル実証機)「IKAROS」成功の凄さについては未だ余り知られていないような気がします。

 まず、JAXAが公表した世界初宇宙ヨット「イカロス」プロジェクト成功のプレスリリースをご覧下さい。JAXA Webサイトからすぐアクセスできます。
(詳細は>>JAXA Webサイト小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)の定常運用終了報告

 何が凄いのか?! 1月17日のBIエッセイで紹介したように、東京上野公園にある国立科学博物館『空と宇宙展~飛べ!100年の夢』(~2月6日まで)で「イカロス」の凄さを実際に目にしました。また、「イカロス」プロジェクトのマネージャー森治氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙航空システム研究系助教)の笑顔で熱っぽい解説(ギャラリートーク)を直接聞くことが出来て理解が深まり大変嬉しい思いをしました。
(詳細は>>BIエッセイ 2011/01/17号 本当に凄い「空と宇宙展」!世界初小惑星探査機「はやぶさ」、世界初小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」を訪ねました!

 2月6日(日)までですので、急いで国立科学博物館『空と宇宙展~飛べ!100年の夢』で「イカロス」「はやぶさ」と直接出会うことをお薦めします。
参考資料 参考資料
(C) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

(1)日本人の仲間は、何が出来たのか――世界初・世界最先端の4ミッションをすべて成功させた。

 「イカロス」は以下4つのミッションに挑戦し、全てを成功させ、世界初・世界最先端の実績を実現しました。
参考資料

(2)何が凄いのか――『空と宇宙展~飛べ!100年の夢』(~2月6日まで)で「イカロス」と同じ実物が見られます

 宇宙ヨットの構想は1919年、「ロケットの父」、ロシアのツィオルコフスキーらが提案した。そして1963年、20世紀を代表するSF作家、アーサー・C・クラークが、地球上空から月に向かう宇宙ヨットレースを臨場感豊かに描いた短篇『太陽からの風』を発表、宇宙ヨットは優雅な姿の未来の宇宙船として広く知られるようになったという。(参考文献3)

空と宇宙展~飛べ!100年の夢
イカロス展示風景(『空と宇宙展~飛べ!100年の夢』)

【世界初-太陽光を推進力にしたソーラーセイル(太陽帆船)「イカロス」の対角線20Mの巨大膜】
 日本が「あかつき」と共に宇宙へ打ち上げた「イカロス」は、惑星間で帆の展開に成功し、世界初の宇宙ヨットとなりました。

 船の帆のように大きい反射膜で太陽光を推進力に航行する宇宙ヨットを、「ソーラーセイル」(太陽帆船)と言うそうです。原理的には、化学エンジンのロケット、イオンエンジン以上の超高速加速ができる。

 宇宙ヨット開発最大の課題は、折り畳んだ帆を宇宙でどのように展開するかです。「イカロス」は硬い支柱を使わず、帆に遠心力を加えて展開する方式を採用しました。JAXA研究グループは何回も折り紙での模型と数値シミュレーションを繰り返したそうです。帆の材料も日系企業とポリイミドフィルムを独自開発しました。厚さは髪の毛の太さの1/10と大変薄い。
 
 帆が広がると一片が約14m正方形、対角線20mとなる。中央の約4m角の部分は空いていて、その中に円筒状の船体(直径1.6m、高さ約0.8m)が収まる構造となっています。全重量308kgの内、帆の重量は15kg。軽量化に成功したそうです。

 打ち上げ前には帆を4本の細長い帯のように折り畳み、宇宙でロケットから分離された後、船体を回転させると遠心力で帆が開く。この展開方式がノウハウである。2010年6月9日、無事に帆が完全に開いた。無重力の宇宙空間では、太陽光圧で加速され、11月までに累積光圧加速量は100m/sを達成したそうです。

【世界初-薄膜太陽電池と液晶薄膜、気液平衡スラスター噴射装置による推進・制御する凄い技術】
 帆には、薄膜太陽電池が貼り付けられ、通信や機体の温度維持の動力となります。薄膜太陽電池の発電と特性を確認した。周囲に貼られた液晶薄膜は、電源のオンオフで帆の向きを変える。制御用の噴射装置は化学エンジンを使わず、独自開発した気液平衡スラスター噴射装置で船体と帆の回転を制御するという。

(3)今回の成功で、次の挑戦開始――後期運用計画及び次世代機で世界初木星探査へ挑戦

参考資料 参考資料
(C) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 今現在も「イカロス」プロジェクトは継続されており、後期運用計画も発表されました。

【オプション機器ミッションの後期運用継続――GAP、ALDN、VLBI】
 正常な稼働がされているが、機器の長期運用による世界一の成果をめざす後期運用計画の一部を紹介します。

「計画① GAP:ガンマ線バースト偏光検出器(GAP= GAmma‐ray burst Polarimeter)
中心の散乱体とそれを取り囲む12枚の蛍光検出器からなる,散乱型ガンマ線偏光検出器で,世界で初めてガンマ線バーストの偏光度を測定する。

計画②ALDN:大面積宇宙塵検出器
(ALLADDIN= Arrayed Large‐Area Dust Detector for INterplanetary Space)
宇宙塵の衝突時刻,信号ピーク値,信号の減衰時間などを記録し,地球より太陽に近い領域での宇宙塵の分布を解明する。

計画③VLBI計測用マルチトーン送信器
(VLBI= Very Long Baseline Interferometry)
非常に遠くで輝いているクェーサーを利用して,IKAROSの軌道を正確に測定するΔVLBI技術を確実に習得し,将来ミッションにおいて,定常的にΔVLBIを用いた高精度軌道決定を行えるようにする。」
(参考文献1)

【次世代宇宙ヨット建造で、世界初となる木星とトロヤ群小惑星行きへの挑戦】
「イカロス」の先には、木星とトロヤ群小惑星行きの宇宙ヨット建造が構想されているらしい。帆の薄膜太陽電池で生み出される大動力を投入できる超高速のイオンエンジンを開発中という。「イカロス」太陽光エンジンと「はやぶさ」イオンエンジンを組み合わせて木星探査を可能とする次世代機を打ち上げる構想と思われる。「はやぶさ」と「イカロス」の両方の技術を統合して、日本ハイブリッド宇宙技術で金星より遠い木星探査に挑むのです。

 この技術開発は、宇宙探査だけでなく、宇宙太陽光発電システムの電池開発の先駆けとなることや商業利用、地球環境へ貢献することも目指しています。

成功を祈ります。

以上

参考文献
1.独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)「小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)の定常運用終了報告
2.企画・監修 国立科学博物館理工学研究部 鈴木一義、編集 日本経済新聞社文化事業部・日経サイエンス社『空と宇宙展~飛べ!100年の夢』カタログ(日本経済新聞社 2010年)
3.『日経サイエンス』2010年11月号(日本経済新聞出版社 2010年11月)
4.佐々木昭美のBIエッセイ 2011/01/17号 本当に凄い「空と宇宙展」!世界初小惑星探査機「はやぶさ」、世界初小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」を訪ねました!

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