佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/03/26 感動!映画『マーガレット・サッチャー』と自伝『サッチャー回顧録』

映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を公開初日(3月18日土曜日)に観て、いたく感動しました。この映画は政治的映画ではありません。感動の人間ドラマです。

3つのテーマを感じました。
① 没落する英国を再生させた女性リーダーの激烈な歴史の真実を忘れてはいけない
② 権力を取り、英国再生に成功し、しかし屈辱の中で去っていく物語
③ キャリアが終わって、家族を持つ妻であり母が老いに直面する人間の話でもあります。

心に深く刻まれる映画でした。是非お薦めです。

感動の余韻の中で、本棚にあったマーガレット・サッチャー『サッチャー回顧録』(上)(下)2冊を取り出し、改めて読みました。1冊3.7センチ近い分厚い本は本当に詳細な記録に満ちており、驚きます。

(1)女性が描いた映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(主演女優メリル・ストリープ/女性監督フィリダ・ロイド/女性脚本家アビ・モーガン)

参考資料

映画館で購入した映画のプログラムを読み、一層感動しました。映画好きの私には、このプログラムは形に残る宝物の一つになりそうです。

感動の人間ドラマを描いた中心に素晴らしい女性陣がいます。

【主演女優メリル・ストリープ/1949年、米ニュージャージー生まれ 第84回アカデミー賞主演女優賞】
メリル・ストリープは、本プログラムに掲載されたインタビューの中で、政治家を演じながら、政治ではなく人間を描くという意味をこう述べています。

「政策そのものよりも、その政治的決断のせいでひとりの人間としてどのような犠牲を払ったかに興味がありました。なぜ彼女が政策のせいで人々に嫌われたのか、その一方で彼女の政治的選択を賞賛する人が多いのはなぜかをできるだけ正確に描こうとしたんです。しかし、それ以上に描きかたったのは、政策を決定する立場にいることによって、人はどのような犠牲を強いられるか。そして強くあり続けるためには、どれだけのスタミナが必要なのかという点です。」(参考文献1)

【女性監督フィリダ・ロイド/1957年英プリストル生まれ 映画監督デビューは、メリル・ストリープ主演の『マンマ・ミーア』(08)】
フィリダ・ロイドは、本プログラムに掲載されたインタビューの中で、観客に何を得てほしいかという質問にこう語っています。

「この作品を楽しむために、マーガレット・サッチャーの全てを知っている必要はないと思います。
サッチャーと同じ時代を生きた人のためだけでなく、第二次大戦後にイングランドがどう発展してきたかをほとんど知らない次の世代にも訴えるものにしたいと思いました。これは壮大な人生の物語であり、人はひとりで生まれてひとりで死んでいくということを受け入れる話なのです。」(参考文献1)

【女性脚本家アビ・モーガン/1968年、英イングランド生まれ 舞台作家、TV脚本家】
脚本家アビ・モーガンが、マーガレット・サッチャーの人生について語ろうと思ったのは、2008年サッチャーの娘キャロルが回顧録で母の認知症を認めたことだったという。あれほど強い女性も、自分らと同様に、年を取り、弱くなっていく事実に衝撃を受けたという。

「私は、王となった人間が権力を失うのはどういうことなのかを追求してみたいと思いました。自分で朝食の支度をしなければばらなくなった、かつての女王の姿。つまり、単なる伝記映画よりも、テーマ的にずっと深いものになったのです。」(参考文献1)

何といっても、メリル・ストリープの演技の幅の広さは素晴らしい。同時に、夫デニス役を演じるジム・ブロードベントの人間味・ユーモア溢れる演技にも拍手です。

(2)英国再生と冷戦勝利の詳細な記録『サッチャー回顧録』

参考資料
映画という想像の産物も感動的ですが、英国再生と冷戦勝利に代表されるマーガレット・サッチャーの歴史的事実も感動的です。サッチャーさんは、回顧録を執筆し、日本では日本経済新聞社が『サッチャー回顧録』(上)(下)として1993年11月に出版しました。

マーガレット・サッチャーは、1979年5月に54歳で英国首相に就任し、1990年11月に65歳で退任するまで11年間という長期にわたって英国指導者として活躍しました。

フィリダ・ロイド監督は脚本を受け取った時、「マーガレット・サッチャーは、エリザベス1世以来の、この国で最も重要な指導者だ」と思ったそうです。

この1週間、時間のある時に2冊を読み続けました。驚くべき詳細な事実を記録した自伝です。英国内閣官房スタッフ、保守党調査部など多くの協力で緻密な事実が公開されている。関わった内外の多くのリーダーたちへのサッチャーの容赦ない、しかし意外と優しく、広い視野からの公正な評価がしっかり書かれている。

訳者石塚雅彦氏(当時、日本経済新聞社論説委員兼編集委員)は、訳者あとがきでこう述べています。

「本書は・・(略)・・内外政治の克明な記録であるが、それはサッチャーという希有な政治家の妥協を許さぬ思想と強烈な自己主張の書でもある。・・(略)・・イギリスを、世界を変えたのだという満々たる自信は最終章、議会の演説と、その時の感想に率直に記されている。」(参考文献2)

税制改革と民営化の実行、産業規制、労働組合、職業訓練、住宅等改革の結果、英国病を克服した。サッチャーは回顧録でこう語る。

「1980年代はイギリスに企業経済がよみがえった時代だった。それはおおむね大いなる繁栄の十年であった。わが国の成長に世界も目を見張った。1960-70年代にはほかのEC諸国に後れをとったイギリスだが、80年代にはスペインを除くすべてのEC諸国を上回る成長を遂げた。ほとんどのEC諸国の80年代の経済成長は70年代よりもペースが落ちたが、イギリスのそれは高まった。」(参考文献2)

サッチャーは11年間の首相退任に当たり、冷戦勝利について下院でこう演説した。

「十年前、ヨーロッパの東の部分は全体主義の支配下にあり、人々は権利も自由も知りませんでした。今日、ヨーロッパには民主主義、法の支配、基本的人権がかつてなく広がっています。われわれの安全保障に対するワルシャワ条約機構の圧倒的な通常戦力の脅威は取り除かれました。ベルリンの壁は壊され、冷戦は終わりました。

これら大きな変化は偶然にもたらされたのではありません。防衛力の強化と決意、絶対に脅迫に屈しない姿勢があったからこそ、実現したのです。西側世界諸国の政府に自由を守る覚悟があったからこそ、そしていつの日か東ヨーロッパも自由を享受することになるという希望を絶やさなかったからこそ、東ヨーロッパの国々は自由になれたのだということを、これらの諸国の人々はみな信じています。」(参考文献2)

若い方は、社会主義的政策の労働党政治でかつて繁栄していた戦勝国英国が、没落寸前となっていた事を知らないかもしれません。また、冷戦によって今は崩壊したソ連を中心とした社会主義の軍事的脅威によって、地球の半分が自由と繁栄は抑圧されていた歴史を知らないかもしれません。

この本は、過去というよりは、現在も未解決の日本および世界の政治経済を学ぶ良書だと思います。
20歳までには読んでおくべきです。成人の基礎教養に役立つと思います。平和と自由・民主主義にとって、外交だけでなく武器を取る決意が必要なのが現実の世界であることを知ることもできるでしょう。

以上

(参考文献)
1.映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』プログラム(東宝(株) 2012年3月)
2.マーガレット・サッチャー『サッチャー回顧録』(上)(下)(日本経済新聞社 1993年11月)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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