佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/05/07 防災を考える。津波後40日で再開した『松島水族館』/津波に生存率99.8%の釜石小中学校

 東日本震災から1年強が過ぎ、防災対策の有効な事例が少しずつ紹介されています。最近知った事例から改めて防災を一緒に考えたいと思います。

 GW後半の四国旅行で乗ったANAの機内誌『翼の王国』5月号は、連載”日本水族館紀行”番外編として宮城県『マリンピア松島水族館』を特集。大津波に襲われながら、その40日後に再開のニュースは世界を驚かせました。私の生まれ故郷宮城県の事例に強い思いを感じながら読みました。

GW前半、本屋で目に留まった片田敏孝群馬大学大学院教授『人が死なない防災』を読みました。大津波に襲われた岩手県釜石小中学校の生徒は99.8%の生存率(学校管理下では100%の生存率)であることを初めて知りました。震災前から、画期的な「防災教育」が行われていたのです。

 東日本大震災後、被災後の助け合いの精神や、人と人との絆の大切さが社会的に強調されている。これは大切です。しかし、これらは生き残った上で成り立つことで、防災の第1プライオリティーではない。人が死なない防災を推進することこそが最重要だと述べる片田教授の教えに強い衝撃と共感を覚えました。

(1)津波後40日で再開した宮城県「マリンピア松島水族館」の奇跡は自助の備えと共助

参考資料
 2011年3月11日の大津波は宮城県松島湾も襲い、『マリンピア松島水族館』にも最高で1メートル80センチに達する濁流が押し寄せたという。津波は単なる洪水ではなく恐ろしい破壊力を持っています。

 なぜ早い水族館復活ができたのか?

 マリンピア松島水族館は、宮城県沖地震は99%の確率だと言われ、すでに多くの備えがあり、その結果津波の影響を最小限に抑えられた。

 ① 備えの第一は、水族館の心臓部である発電機が2階にあったこと
 ② 重油の自家発電と電力会社の電気を併用し電源の複線化をしていたこと
 ③ 防潮扉を設置していたこと
 ④ 設備の多くを台の上においていたこと

 その上に幸運が加わったという。

 ① 地震の当日に重油が搬入されていたので、地域一帯が燃料供給不足の中で、約3週間にわたって自前の発電機やボイラーを使用できたそうです。
 ② 魚たちの餌も前々日に運ばれていた。広域で生産、輸送などが途絶えた中で食料を確保していた。

 自助に共助が加わった。

クラゲは山形県の加茂水族館から、マンボウは茨城県の大洗水族館から、タイマイは名古屋水族館から等全国の水族館からの協力があった。東北芸術工科大学の学生ボランティアの皆さんがオブジェや壁画を手直ししてくださったそうです。嬉しいことですね。

(2)大津波に生存率99.8%(学校管理下では100%)の釜石小中学校の画期的「防災教育」

参考資料
 片田敏孝『人が死なない防災』は文字通り目からウロコの防災実践書です。片田先生は、群馬大学大学院工学研究科社会環境デザイン工学専攻教授、同大学「広域首都圏防災センター」センター長です。

片田教授は、ある縁で釜石地域の学校を中心とした防災教育に携わって来ました。

 津波で生徒を含む多くの犠牲者が発生した中で、釜石小中学校の生徒生存率99.8%(欠席など除く学校管理化にあった生徒は生存率100%)だったことを初めて知り、率直に驚きました。

 なぜだろうか? 私も含め当然多くの方が不思議に感じるその常識的意識の中にある問題を脱却することにこそ画期的「防災教育」の真実がありました。下記の紹介をまず読んでみて下さい。きっと、詳細を読むべきだと思われると信じています。

 【避難の3原則 1.想定にとらわれるな】

 防災の考え方が間違っている可能性を事実が示した。災害は「防災目標」を超えるから災害となる。釜石には「湾口防波堤」という、世界一の防波堤としてギネスブックに載っている巨大構築物があったそうです。そして、釜石市が配布した津波ハザードマップを住民に配布していましたが、ハザードマップの浸水想定区域を境に、その外側の人の方が多く亡くなっているのです。

 「想定を信じるな」という大変難しい教えを浸透させねばならない。自分の身を守るには、自分で災いから主体的に逃れること、すなわち自分で避難しかないのですね。

 【避難の3原則 2.最善をつくせ】

  学校の先生方には当初評判悪かったが、「自然に向き合う姿勢」を理解させるとめに、次の言葉で教えたという。当然、先生方は理解し行動した。

「最善を尽くせ。しかし、それでも君は死ぬかもしれない。でも、それは仕方ない。なぜならば、最善というのは、それ以上の対応ができないということだ。それ以上のことができないから最善というんだ。精いっぱいやることをやっても、その君の力をしのぐような大きな自然の力があれば、死んでしまう。それが自然の摂理なんだ」(参考文献2)

 釜石東中学校の生徒はサッカー部員が先頭になって、地震後すぐに、教頭先生がマイクで避難指示出す前に走りだしたという。「津波が来るぞ」と叫びながら、近くの鵜住居小学校を横切り、全力で避難所に走ったという。3階建ての小学校でしたが中学生の避難を見て、小学生も列に加わった。大人も引き込まれて逃げ始めた。避難所も危ないと知った中学生は小学生の手をつないで更に高台めざして避難。避難の30秒後にその近くまで津波が来たという。

 【避難の三原則 3.率先避難者たれ】

例えば、火事の非常ベルがなっても、その意味がわかっているがすぐには逃げない。人間は正しい姿勢があったとしても正しい行動がとれないことが多い。「正常化の偏見」という心の特性があることを知りました。

 「「正常化の偏見」とは、「自分は大丈夫」と一生懸命に思いこもうとする心の作用です。自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりして、「いつもと変わらず正常である」と心の状態を保とうとする、人間の特性です。」(参考文献2)

 最初のリスク情報は無視する。誰かが「火事だ!」と言ったときにようやく逃げる。つまり、行動を起こすには2つ目の情報が必要だ。子供たちへの噛み砕いた教育をし続けたという。

 「非常ベルがなって最初に飛び出すのって、カッコ悪いだろ。だいたいが誤報だからね。戻ってきたら、みんなに冷やかされる。そんなことを考えると、逃げたくなくなるよね。でも、本当に災害が起こったとき、みんなが同じことを考えて逃げないでいると、みんなが同じように死んでしまう。だから、君は率先避難者にならなくてはいけない。人間には「集団同調」という心理もあって、君が本気で逃げれば、まわりも同調して、同じように逃げ始める。つまり、君が逃げるということは、みんなを助けることにつながるんだ」(参考文献2)

 「津波が来るぞ! 逃げるぞ!」と言って真っ先に逃げた釜石東中学校のサッカー部員たちは模範的な率先避難者だったのですね。

【本書の目次~人が死なない防災】
 参考までに目次を通じて、全体の構成を紹介します。
  
第1章 人が死なない防災――東日本大震災を踏まえて
  1.「安全な場所」はどこにもない
  2.釜石市の子どもたちの主体的行動に学ぶ
  3.防災教育の本質
第2章 津波を知って津波に備える――釜石高校講演録
第3章 なぜ、人は避難しないのか?
第4章 求められる内発的自助・共助――水害避難を事例に

 防災対策には、新たな叡智を学び、推進しなければならないと思いを新たにした次第です。

以上

(参考文献)
1.ANAグループ機内誌『翼の王国』2012年5月号
2.片田敏孝『人が死なない防災』(集英社新書 2012年3月)


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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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