佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/05/21 佐々木流 BI経営進化論 第8回 元気な会社に共通するのは「経営会計」重視だ!

BI経営進化論
 今回は、会計つまり経理・財務の経営上の意味を考えてみたいと思います。経理・財務とは会社の経理部・財務部等の専門担当が知っていれば総じてOKと思っている方が多いのではないでしょうか?

一般に思い浮かべるのは財務会計、税務会計という制度会計という領域です。それは会計の一部に過ぎません。

会計は本来、社長はじめ全役員、全幹部、全社員が担うものです。経営会計(管理会計)と言われる領域ですが、経営そのものと言ってもよいと思います。

私はかってCFOとして、事業責任者として、また経営コンサルタントとして、事業再生や事業開発、IPO、M&Aを体験する中で、経営会計の重要性を痛感しました。個人的には経営会計という言葉よりは事業会計という方が気分に合っています。

そのことをよく理解できる好著が今月出版されました。金児昭『新版・教わらなかった会計 カネコの道場 経営実践講座』です。文庫版で手軽に買えますので、是非お読み頂きたいと思います。
参考資料

(1)経営に役立つ会計を教える金児昭『新版・教わらなかった会計 カネコの道場 経営実践講座』

 私は金児昭氏の著書から多くのことを学ばせて頂いています。何よりも同じ経営実務家の体験から生きた会計への哲学・理論・実務を提案しています。120冊以上の著書があるそうですが、現在8冊所蔵しています。

 金児昭氏はよく知られた経済・金融・経営評論家、作家で信越化学工業顧問、日本CFO協会最高顧問。公認会計士試験委員、金融監督庁(現金融庁)顧問を歴任。

金児昭『新版・教わらなかった会計 カネコの道場 経営実践講座』は、2002年に刊行した金児昭『経営実践講座 教わらなかった会計』を2005年に文庫化したものの全面改訂版です。写真の左側は2002年刊行の著書、右側は今回刊行の著書です。

会計の本としての奥深さを理解して頂くために本書の目次を紹介します。著者は「今回、実際の経営の現場での体験に基づいて、「これまで会計の教科書では扱わなかったことを書く」ことに挑戦してみることにしました。すなわち、これは私のエンピリカル・ナレッジ(empirical knowledge=体験知識)
です。」(参考文献1)と述べています。

第1回 学校では教えてくれない ―― 会計とは何か
第2回 会計の目的 ―― それは「人間を幸福にする」こと
第3回 明日は誰にもわからない ―― 原材料費からメーカーの意志決定・経営実行を知る
第4回 一円の大切さを知る ―― キャッシュフローは目的ではない
第5回 「学問的定義」で経営はできない ―― エンピリカル・ナレッジ(体験知識)でのマネジメント
第6回 設備投資はメーカーの命である ―― 投資判断・実行が死命を制す
第7回 制度会計で会社は動かない ―― 為替とデリバテイブと世界競争力を学ぶ
第8回 経営を評論するべからず ――時価会計にビクビクしない経営
第9回 ディスクロージャー至上主義に異議あり ―― 情報開示でダメになることもある
第10回経営に「教科書はない」 ―― 世界連結経営の本質
最終回 よりよい「会計士」になっていただきたい ―― 日本の「経理・財務」を世界と共有しつつ

 信越化学工業における38年間の実務体験でのエピソードを具体的に交えながら、日常発生する意志決定から設備投資、資金調達、M&A、公認会計士や世界の会計の現状まで、世界経営で通用する実践知識が豊富です。

(2)経営会計(管理会計)は何故重要なのか

企業グループ経営は、内部成長・中間成長・外部成長や制度会計・経営会計が「渾然一体」となっている」
参考資料
※図:企業グループの通常経営(参考文献1 P43より編集)

 本書の中で私なりに重要と思う項目を取り上げたいと思います。

【制度会計と経営会計】

 学問的には、制度会計は財務会計プラス税務会計です。経営会計は日本的言葉では管理会計です。管理会計という言葉は明治時代にmanagement accountingを誤訳して非常にまずいのですが定着してしまいました。

 しかし、現実の経営では両方が融合したものが実際です。

【経営会計は全役員、全幹部、全社員が担う】

 経営会計は、企業経営で利益を上げるために使われる会計の方法です。従って、全役員、全幹部、全社員が日常的に担う仕事そのものに関わる計算や考え方です。

「経営には目標があります。損益トントン売上をにらみつつ、これだけ利益をあげよう、売上を上げようという目標に向けて、原価計算とか、売上(収益)・費用の予測計算をしたり、予算経営などをしていく、これが経営(管理)会計です。」(参考文献1)

「何回も言いますが、「会社の外からいただいてくるお金(すなわち「売上」)を考えずして、会計学の学問は成り立たない」と、私は思っています。」(参考文献1)

【M&Aは経営会計の究極】

金児氏は、図のように外部成長というわかりやすい言葉で、広義の外部成長=M&Aと狭義の外部成長(中間成長)=合弁・提携を位置づけています。M&Aは今や日本でも通常経営となった経営戦略です。M&Aは究極の経営会計であるという。

 本書の247ページより「私のミニ会計史④」というコラムがあります。今や、塩ビで世界一の会社となったシンテックの買収の実際経緯を述べています。詳細はM&A小説で表現した金児昭『「利益力世界遅一」をつくったM&A』(参考文献7)をお読み頂きたいと思います。

【メーカー・店の命運握る設備投資。減価償却は、欧米では定額法が趨勢だった】

 メーカーでも、販売業でも設備投資が会社の命運を握っています。金児氏は、会計において人間を除けば固定資産が一番大事な科目と述べています。その設備投資の減価償却方法は、企業の競争力を左右する重要事項ですが、日本と欧米では異なっていました。 

欧米では、1970年代から減価償却方法の選択については、会計が税法や会社法から独立し、透明性を重んじられ、多くの企業は定額法だったそうです。

 日本では、耐用年数が税法で7年であれば会計でも7年としていますが、設備の実態を踏まえ会計では定額法で10年、税務上は定率法で7年とするなど、企業が柔軟に対応できるようにすべきと提案しています。

元信越化学常務であった金児昭氏。その信越化学工業は、1996年3月期から2008年3月期ま
で13期連続で最高益を更新続けました。リーマンショック、東日本大震災は信越化学に甚大な影響
を与えましたが、利益を出し続けました。

 昨年8月、2010年に信越化学工業会長に就任した金川千尋氏が『危機にこそ、経営者は戦わねば
ならない』を刊行されました。信越化学の経営内容を驚くほど率直に多くの言葉で語っています。大変
参考になると思いますので、合わせてご紹介致します。(詳細はBIエッセイ 2011/11/14 危機と戦う
信越化学の経営。「失われた20年」の間、13期連続最高益更新続けた国際企業)

以上

(参考文献)
1.金児昭『新版・教わらなかった会計 カネコの道場 経営実践講座』(日経ビジネス文庫 2012年5月)
2.金児昭『経営実践講座 教わらなかった会計』(日本経済新聞社 2002年3月)
3.金児昭『金児昭のやさしい会計実学 社長!1円の利益が大切です』(中経出版 2004年1月)
4.金児昭『経営実践講座 M&Aで会社を強くする』(日経ビジネス文庫 2005年11月)
5.金児昭『できる社長の会計力 経営・会計の王様!!「純資産」』(税務経理協会 2007年5月)
6.上村達男・金児昭『株式会社はどこへ行くのか』(日本経済新聞出版社 2007年8月)
7.金児昭『「利益力世界一」をつくったM&A』(日本経済新聞出版社 2007年9月)
8.金児昭『Mr.金川千尋 世界最強の経営』(中経出版 2010年9月)
9.金川千尋『危機にこそ、経営者は戦わなければならない』(東洋経済新報社 2011年8月)
10.佐々木昭美BIエッセイ 2011/11/14 危機と戦う信越化学の経営。「失われた20年」の間、13期連続最高益更新続けた国際企業

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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