佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/10/22 清新な近代日本画の大巨匠に出会う-山種美術館『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』

現在山種美術館で開催中の特別展『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』のブロガー内覧会に20日(土)夕方出席しました。本展は11月25日(日)まで開催しています。秋の美術鑑賞の一つとしてピッタリ。穏やかな雰囲気の中に、清新な近代日本画の大巨匠竹内栖鳳の素晴らしい作品群に囲まれ大満足でした。是非多くの方にご覧頂きたいと思います。

今年2012年は、「東の大観(たいかん)、西の栖鳳(せいほう)」と並び称された日本画家・竹内栖鳳(たけうちせいほう)(1864-1942)の没後70年にあたるそうです。京都を代表する画家の1人である栖鳳。今回初めて竹内栖鳳作品をじっくり鑑賞する機会となりました。

山﨑妙子館長のギャラリートークでは竹内栖鳳がメインの回顧展は大変珍しく、全国の美術館からのたくさんの作品のご協力で関東では約10年ぶりの貴重な特別展との事です。

(1)竹内栖鳳は、近代日本画の大巨匠~「東の大観、西の栖鳳」

参考資料 参考資料 参考資料

皆様、竹内栖鳳はご存知ですか? 実は私も詳しくは知りませんでしたが、作品を観てその素晴らしさに驚きました。日本画の卓越した描写を継承しながら、前代の古臭さを一掃して清新な作品世界を見事に創造しています。

山下裕二明治学院大学教授は、栖鳳が大観に比して知名度が低い経緯を2つ指摘しています。竹内栖鳳は戦中に77歳で没し、横山大観は長命で戦後昭和33年に90歳で没し、没後の報道等の影響は甚大であった。教科書に載った大観は有名になり、載らなかった栖鳳は日本画界では東西巨頭の地位を評価されているが一般には今一歩知られていない。

「近代日本画の歴史に詳しい方なら「東の大観、西の栖鳳」という呼称をよくご存じだろう。横山大観と竹内栖鳳は、ともに東京と京都の画壇をリードし続けた大家として、広く認識されている。・・・だが、こと一般的な知名度となると、大観と栖鳳の間には、決定的に大きな落差がある。」(参考文献1)

本特別展図録の主催者ごあいさつの中で、私が“清新な近代日本画”と感じたイメージの背景をこう語っています。

「京都に生まれた栖鳳は、早くからその才能を開花させ、30代で京都画壇を代表する画家にのぼりつめました。・・・パリ万博が開催された1900年(明治33年)、ヨーロッパ遊学を果たした栖鳳は、渡欧先で西洋絵画にじかに触れ、大きな刺激を受けました。帰国後円山四条派の写生を軸にした画風に、西洋絵画の要素を取り入れた新しい表現を生み出していきます。洗練された感性と優れた筆技によって動物、風景、人物と様々な主題を手がけ、日本画の近代化に積極的に取り組みました。」(参考文献1)

山種美術館特別研究員の三戸信惠 氏は、図録に掲載された「新しきもの、古きもの-竹内栖鳳の造形的源泉-」という小論の中で、その詳細を論じています。ご興味のある方はお読み頂くことをお薦めします。

(2)竹内栖鳳の傑作たち

一部作品の公式画像をお借りして、竹内栖鳳の傑作を年代順にご紹介いたします。大画面の屏風絵も多く、できれば是非実際に美術館で鑑賞して迫力や鮮やかさを体感して頂きたいと思います。

参考資料
竹内栖鳳 《象図》 
1904(明治37)年頃 紙本金地・墨画 個人蔵 [前期展示(9/29~10/28)]
ライオンと同様に象も日本に生息しなかったがサーカスで目にした機会があったのでしょうか? 精緻な象の描写と共に猿のユーモラスな表情が面白いですね。

参考資料

「金地と水墨による表現に円山応挙の襖絵<<松に朱雀図>>(大乗寺)などに通じる古典への意識が感じられ、一方で、円山四条派の写生画に西洋絵画から学んだ写実の表現を加味して、現実感のある新しい動物描写を追求している。」(参考文献1)

参考資料
竹内栖鳳《飼われたる猿と兎》
1908(明治41)年 絹本・彩色 東京国立近代美術館蔵

私たちが動物園等でよくみる猿と兎ですが、その表情表現にビックリしました。

「京都・御池の旧宅で飼っていた猿と兎や動物園での写生が基礎になっており、「単に表面的な動静を観るばかりでなく、時々刻々に変化する動物の姿態を種々に観察して、それから彼等の特色をはっきりと掴むという方法を執って」描いたという。」(参考文献1)

参考資料
竹内栖鳳 《絵になる最初》 
1913(大正2)年 絹本・彩色 京都市美術館蔵 [後期展示(10/30~11/25)]
若い女性モデルが脱衣の刹那に見せたためらいの瞬間だそうですが、恥じらいを素敵に描いていますね。

「足元の帯には工芸調の文様と彩色、・・・襖は雲母(きら)で文様を描き、独特の輝きと質感を放つ。」(参考文献1)

参考資料
竹内栖鳳 《班猫》 【重要文化財】 
1924(大正13)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

重要文化財に指定されている竹内栖鳳の代表作品。猫一匹を描ききっていますね。凄い。

「つややかで柔らかい毛並は、墨や黄土などを塗り重ねた上に、面相筆で、金泥、胡粉による毛描きをして表わし、エメラルドグリーンの瞳は、群青、緑青(ろくしょう)、金泥を用いて描かれている。」(参考文献1)

参考資料
竹内栖鳳 《蹴合》 
1926(大正15)年 絹本・彩色 [後期展示(10/30~11/25)]
軍鶏(しゃも)が激しく競い合う一瞬ですが、緊張感あるリアリティーが躍動的に表現されていますね。

「闘鶏の生々しい緊張感が伝わってくるのは、鋭い筆勢で的確に軍鶏の描写力のみならず、目の前でその動きを徹底的に観察しながら行った写生の力である。」(参考文献1)

参考資料
竹内栖鳳 《潮来小暑》 
1930(昭和5)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

またまた異なったタッチの風景画に魅せられました。潮来(茨城県)を題材にした作品が多いという。

「ぼかしのきいた淡彩に渇筆で色濃く葉を描く表現は、湿潤な空気と同時に陽光のまぶしさを思わせ、小暑(陽暦7月7日頃)の涼感と暑気の両方を表している。単調な草木の色彩の中で、褐色の牛と青衣の点景人物がアクセントとなっている。」(参考文献1

竹内栖鳳の作品は生き物や自然が題材となる作品が多く、それらが見せる一瞬の姿を清新な感性で軽やかに捉えながら、同時に精緻な筆致と澄んだ色彩が特徴です。今年は西洋名画のラッシュでもありましたが、秋の美術鑑賞に素晴らしい近代日本画に触れて快い時間を過ごすことができました。


『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』

会 期 :2012年9月29日(土)~11月25日(日)
※会期中、一部展示替えを行います  前期展示(9/29~10/28) 後期展示(10 /30~11/25)
会場:山種美術館
主催:山種美術館、日本経済新聞社
協賛:SMBCフレンド証券
開館時間:午前10時~午後5時(入館は4時30分まで)
休館日:月曜日(但し、10/8は開館、翌火曜日は休館)
入館料:一般1200円(1000円)・大高生900円(800)円・中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金および前売料金
※障害者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料
※本展覧会は特別展のため、通常展とは料金が異なります。

出品作品:
与謝蕪村《野馬図》●/ 円山応挙《虎図》(東京国立博物館蔵)●/ 《竹雀図小襖》○/ 《雪中双猿図》●/ 呉春《落葉詩客図》○/ 森狙仙《春風猿語図》○/ 長沢芦雪《岩上双鶴図》●/
竹内栖鳳《池塘浪静》(京都市美術館蔵)●/ 《雨霽》(東京国立近代美術館蔵)/ 《飼われたる猿と兎》(東京国立近代美術館蔵)/ 《虎・獅子図》(三重県立美術館蔵)○/ 《象図》●/ 《絵になる最初》(京都市美術館蔵)○/ 《班猫》【重要文化財】(山種美術館蔵)/ 《蹴合》○/ 《若き家鴨》(京都国立近代美術館蔵)●/ 《雄風》(京都市美術館蔵)○/
上村松園《新蛍》 /西村五雲《白熊》/ 《松鶴》●/ 西山翠嶂《狗子》/ 村上華岳《裸婦図》 (5点ともに山種美術館蔵)
※会期中、一部展示替えを行います
●前期展示(9/29~10/28) ○後期展示(10/30~11/25) 無印は全期展示(9/29~11/25)
※出品内容には変更が入る場合があります


(参考文献)
1.山種美術館 『没後70年 竹内栖鳳 ―京都画壇の画家たち』図録

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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