佐々木昭美のBIエッセイ 明るく楽しくイノベーション

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2012/11/05 佐々木流BI経営進化論 第15回 リバース・イノベーションの成功企業コマツ

BI経営進化論
 最近、全世界的ベストセラー待望の邦訳『リバース・イノベーション - 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき』が今秋9月27日に発売されました。著者は、ダートマス大学スクール・オブ・ビジネス教授ビジャイ・ゴビンダラジャン氏とクリス・トリンブル氏。

 リバース・イノベーションという発展途上の戦略コンセプトは、「途上国で最初に採用されたイノベーションすべて」を呼称するとされています。

 この書には、日本企業の事例が載っていませんでしたが、私はすぐに日本国籍グローバル企業コマツがその成功企業だと直感しました。1990年頃のコマツの売上の約80%は日欧米市場でしたが、2010年頃のコマツの売上の約80%は中国含む新興国市場となっています。しかも、営業利益率が5%前後から15%前後となり欧米企業並みです。驚くべき変化ですね。

 2011年4月発売されたコマツ会長坂根正弘著『ダントツ経営』と月刊誌『VOICE』2012年11月号の坂根正弘氏インタビュー「「新興国市場」で勝ち続ける法」からそのポイントを紹介します。
参考資料

(1)日本国籍グローバル企業コマツは、リバース・イノベーションの成功事例

参考資料

【コマツは新興国進出で先行した企業だった】
コマツは、早い段階から新興国に進出した企業でしたが、1990年代までは日欧米3極の経済需要が大きい時代でした。1990年頃のコマツの売上の約80%は日欧米市場でした。

 1973年 ブラジル工場 
 1979年 中国企業に技術供与で一部生産委託
      (1956年から1978年まで完成品輸出)
 1985年 インドネシア工場
 1995年 中国2工場(山東省と江蘇省)

【新興国ビジネスのビジネスモデル転換】
 冷戦が終結し、ロシア、中国、インド等新興国は共産主義の悲惨な経済失敗から学び、資本主義へ舵を切りました。海運に続く、航空移動と情報通信のグローバル化、資本市場のグローバル化によって、新興国の多くがジクザクはありながら高成長を開始します。

 日本とは明らかなに異質な中国でダントツのトップシェアを実現したコマツのビジネスモデル・イノベーション(BMI)の内容が知られるようになりました。


①現地人の代理店網育成が功を奏す

買い手の90%は個人であった。現地人の人的ネットワークが先行したビジネス情報入手を可能にした。

②コマツが陳列・試乗在庫を所有して「流通在庫ゼロ」

代理店は資金力がない中で販売業務に専念できた。メーカーの立場からは、流通在庫過剰の値崩れも防止できた。

③通信機能付きコムトラックスによる稼動・市場の見える化

買い手が喜ぶ稼動管理。中国は3000時間も使うので労働賃金より燃料代節約が大事なことを現地で知る。資金回収が困難な中国で、稼動状況を見える化し、債権確保の強力なツールにもなったという。

④現地マネジメントに任せる経営

現地工場トップは現地人を基本ポリシーとして幹部の発掘、育成している。現在、11ケ国の現地工場の内7ケ国が現地人(中国、アメリカ、イギリス、ドイツ、インドネシア、インド等)。4ケ国が日本人(ブラジル、タイ、スウェーデン、ロシア)となっている。

中国の統括会社は本社経営幹部が常駐しバーチャル経営チームを形成し、16の子会社を現地で意志決定しマネジメントする体制を整備しているという。

(2)新興国市場で勝ち続けるコマツの「ダントツ経営」の真髄

 円高70円でも国際競争力を持つ経営力を実現したという。売上高営業利益率は5%前後から15%前後と高収益企業に生まれ変わった。

2011年度の国内生産は55%。その内国内販売15%より輸出40%の方が利益出しているという。国内の過当競争を考慮しても凄い強さです。

図 営業利益の推移 (参考文献1 89ページ)
参考資料

その真髄は、2001年6月坂根社長就任から実行した戦略、戦術に現れています。


①「ダントツ製品」の開発で顧客の持続的信頼

 BtoBの顧客信頼を持続するブランド戦略として「ダントツ製品」プロジェクトを社長直轄で実行した。その定義は以下の通り。

  「いくつかの重要な性能やスペックで、競合メーカーが数年かかっても追いつけそうない際だった特徴」
  「原価を10%以上下げ、そのコスト余力をダントツの実現に振り向ける」
  「環境」「安全性」「ICT」 

すべての商品で世界1、2位を目指し、現在の売上の約50%は世界1の商品となった。売上の約35%は世界2の商品となった。まだまだだという。

(事例)
・通信機能付きコムトラックスの開発~建設機械へのICT活用
・ハイブリッド油圧ショベル=ディーゼルエンジン+回収電気でエンジン加速アシスト
 (車体旋回で減速時の電気をキャパシターで回収)
・鉱山用無人超大型ダンプトラック

③工場競争力は対等だが、収益力低い真の原因=固定費高い体質を「構造改革」で打破

 よく調査するとコマツの工場競争力=変動費は欧米と対等であった。固定費が高く、「総原価主義」で経営するので低収益であることが根本的原因であることがわかった。抜本的「構造改革」を実施した。

図 経営構造改革の成果(参考文献1 78ページ)
参考資料

・但し、大手術は1回限りとして、抜本的なレベルでの厳しい痛みを伴う改革となった。希望退職1100人、転籍者1700人と社員2万人の約15%を削減した。300社有った子会社の統廃合で110社を削減した。

・間接業務の削減のため、定型業務のICTはグローバルスタンダード活用し、競争力に密接に関わる部分だけ独自システムを開発する基本方針を決めた。オランダBAAN社ERPを世界に導入し、自社開発していたICT別会社コマツソフトはTISに売却した。

・生産拠点の統合も行った。ダンプトラック生産は茨城工場に集約し栃木県真岡工場は閉鎖。大型プレス機械生産は金沢工場に集約し石川県小松工場を閉鎖した。

③日本の世界一生産技術力を有効に活用する

世界の中で日本はモノつくりの生産技術力は世界一であるという。日本の力と現地の力を組み合わせて競争力ある製品開発・生産とサービスの具体化が行われる。

・基幹部品「Aコンポ」は、全世界向けに日本で一括生産(エンジン、油圧機器、アクスル、トランスミッションなど)

・「マザー工場制」導入――海外工場のQCDにも責任持つ。
 「PC200」のマザー工場=大阪工場 ~ 世界9工場が「チャイルド工場」
 「ホイールローダー」のマザー工場=粟津工場 ~ 世界4工場が「チャイルド工場」

・日本部品メーカーと現地部品メーカーの育成と支援

・建設機械業界は日本が最高の競争力もつ分野(コントロールバルブは日本企業3社独占/キャタピラー社も日本に油圧シャベルのR&Dセンター設置)

④先進国では、同業会社を買収し、無理な競争をしないで市場を棲み分ける。

私が賢明と思った一つに先進国市場への対応があります。巨人キャタピラーの米国市場では、第2位のドレッサー社を買収し、競争相手を増やして同質競争を激化させる愚を避けて棲み分け戦略を取っている。過去の大失敗の教訓があるという。同様に欧州では、ドイツ企業2社、イタリア、スウェーデン企業を買収している。

コマツの事例は、個別のグローバル企業経営と共に日本経済再成長への示唆にも富んでいると思った次第です。

以上

(参考文献)
1.ビジャイ・ゴビンダラジャン+クリス・トリンブル『リバース・イノベーション - 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき』(ダイヤモンド社 2012年9月)
2.坂根正弘『ダントツ経営 - コマツが目指す「日本国籍グローバル企業」』
 (日本経済出版社 2011年4月)
3.月刊誌『VOICE』2012年11月号 坂根正弘氏インタビュー「「新興国市場」で勝ち続ける法」

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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