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2013/02/04 佐々木流 BI経営進化論第 16回 「稼ぐ」π型人材育成を自社で開催していますか?

BI経営進化論
 大企業の中堅幹部、中堅企業・ベンチャー企業役員・部長や税理士・司法書士等30~40代中心の30名が参加した『BIP第5期事業リーダー実践塾』。先週30日で5回の夜学コースと2回の交流会が全て終了しました。

 2008年から5年間開催し、約100名の塾生を輩出しました。塾生の中からは、取締役、執行役員、本部長、部長、課長等へと昇進した多くの幹部が生まれました。また独立した経営者も生まれました。大変嬉しいことです。また、塾生間の交流も続いています。塾長として、一層の成長と成功を切に祈り期待しています。

今後は、『BIP事業リーダー実践塾』で蓄積した成果を各企業様の自社での「稼ぐ」π型人材育成支援に役立てていきたいと思います。

(1)「稼ぐ」π型人材作りが、企業も日本も急務

 「稼ぐ」π型人材育成の重要性について、5年間の塾開催や6年間のアドバイザーや講師の活動を通じて、私自身が改めて認識したこと、学んだことを記し、皆様と意見交換したいと思います。

 『BIP第5期事業リーダー実践塾』は、業界領域一番で成功した経営者出身で教授や経営コンサルタントとして教育研究を担っている方々を講師にすることにこだわりました。また、カリキュラムは以下の通り、事業リーダーに必要な中心領域に絞っています。

*参考『BIP第5期事業リーダー実践塾』募集案内
第1回~5回までの講義概要と様子は、こちらをご覧ください。

【1.正面から「稼ぐ」事業リーダーを育成する企業が少ない】
図1:学びのフレームワーク 「学ぶ3つのリテラシー」
図3:学びのフレームワーク  「学ぶ3つのリテラシー」
 弊社BIPの如く新米のスモールファームが、「事業リーダー」育成という本来当たり前ですが大きなテーマで幹部研修を開催するということに意外にも新鮮な共感を頂いた。2008年より塾を開催した理由は、リーマンショック後の企業と日本の現実への危機感でした。

 特に3.11後には、一層日本全体で「稼ぐ」ことの大切さを発信して来ました。

・BIエッセイ 2011/09/05 「今、日本企業、経営学にとって大切なこと~「災害復興、経済復興、日本再生」の新起点に立って
・BIエッセイ2012/02/27 3.11間近。今、企業経営・日本政治経済に必要なことは「稼ぐこと」

 残念ながら大企業、中堅企業、ベンチャー企業問わず、経営革新に取り組み成長する企業が少ないのが現実です。特に、中心となるべく30~40代中堅幹部の多くが経営学の基礎的知識が不足し、意見交換に苦労した経験をたくさん体験しました。

その一方、多くの企業が多くの教育研修費用を使っていますが、正面から「稼ぐ」事業リーダー育成を正面から取り組んでいる企業は極めて少ない現実に危機感と疑問を抱きました。

【2.大学も、日本全体も事業経営教育を軽視し過ぎている】
 事業経営の持続的成長は簡単なものではないことは自明です。そのためには事業を切り開くトップ層と中堅幹部層が必須です。また、「産官学金専」(産業界、学会、公的機関、金融機関、経営コンサルタント・士業等)が民間企業を中心した事業成長を担う事業人材育成を共通の国家目標、教育目標として連携していかなければなりません。

 私は、π型事業リーダーを称していますが、その3大要素として、人間力、専門力、経営力を掲げています。

 高等教育機関である大学・大学院は、私の大学時代と比して人間力を涵養する教養教育が激減しました。入試科目も減少。事業経営の基礎的専門教育であるMBA・MOTコースは私立大学中心に増加しましたが国立大学は今もって多くありません。一方で、各種専門大学院は激増しました。

 また、産業界の需要とは関係なしに、大学や学部の新・増設によって大学生が急増し、大学生がすべて潜在的に高度人材という状況ではなくなりました。

 金融機関は、企業の株式取得を減らされ、企業へのガバナンスの役割が激減してしまいました。「金融安定化法」の3月終了によって、中小企業の事業再生への関与を本格的に再開する状況です。経営コンサルタント・経営士・中小企業診断士等経営革新専門家との連携も本格的に始まるかもしれませんが予断は禁物です。

 技術士、税理士、公認会計士、弁護士、社会保険労務士等の士業も専門分野に限定され、事業経営の視点で経営士・中小企業診断士・タウンアラウンドマネジャー等の資格を取得でπ型専門家への自己努力する方が微増していますが、日本全体としては未だわずかです。
 
 政治も、小泉内閣、第1次安倍内閣以来、今般発足した第二次安倍内閣が民間中心の経済成長路線にしばらくぶりで再び舵を切りました。古い自民党と民主党は経済のパイよりは配分中心で、企業も日本経済も劣化し結果多くの個人も減収となり、財政赤字も増大させました。日銀はデフレを脱皮する強い努力が感じられませんでした。安倍自民党、日本維新、みんなの党の躍進によって経済のパイ拡大が国民世論にやっと回帰しました。

(2)自社で「実践経営学」が必要な歴史的・理論的背景を知る

 「稼ぐ」事業リーダー育成には、知識と経験の両面からのアプローチが必要ですが、日本では2つの誤解・問題があると思います。

 事業経営に必要なことは、一般的に人間科学と自然科学の両面があります。また、その実践を時間軸で分析すると、過去の知識と経験を研究教育する領域及び現在と将来を創造する思考と実践の領域の2つの領域がありますので、私は以下4つのマトリクスで考えています。

図2:事業経営の知的基盤・経験基盤の統合フレームワーク
参考資料

【1.かつての業容論・TQM・管理会計・「論語と算盤」経営思想等日本型経営学が軽視され、欧米型経営学が直輸入された】
 かつて、経営学の業容・業態論、理工学部の管理工学等から出発し、製造業から流通業・サービス業へと発展したTQMや会計学から進化した管理会計(事業会計)、経営思想「論語と算盤」等は日本の企業、産業の発展力と競争力の源泉となりました。

欧米はシックスシグマ、バランススコアカード、サプライチェーン等の理論と実践によって日本企業にキャッチアップ。米国は更に競争の舞台自体を変革するビジネスモデルの理論と実践によって再び競争力を強化して来ました。欧州はEU経済共同体としてISO、ERP等購買や社会的基準の共通ルールやシステムの標準化を武器に経済の防衛と世界への進出を進めました。中国や新興国は日本と欧米の長所を取り入れて急成長を遂げています。

 日本は、経済戦争の変化の現実を直視するのが遅れました。更に、学会は経営学や会計学、法学中心にMBA、制度会計、コーポレートガバナンス等欧米型経営学を実態と意味の違いを十分吟味せずに輸入することが中心となりました。明治以来の外国崇拝、自虐的傾向が今もって根強いですね。一部の強い製造業・流通業・サービス業を除き日本の優れた管理会計(事業会計)やTQM等は軽視され、発展が停滞する傾向が最近まで続いています。

【2.大学のアカデミズムと民間企業現場の実践経営学の役割の誤解が解消していない】
参考資料

経営学に関して、学会の研究者が目指すことと、企業現場が求めることとの違いへの誤解が依然として大きいことがもう一つの原因かもしれません。

世界の経営学の研究者はサイエンンスとしての発明、発見、理論創造をミッションとして競争しています。日本の研究者も同様と考えて良いと思います。図2でいうAとBが中心です。

過去の先行研究と過去の企業行動から普遍的な理論や傾向を発見・創造することに集中しています。その成果は、当然次世代への知識教育として還元されることは言うまでもありません。当然、企業幹部は、AとBの優れた知識を学ばねばなりません。

 ところが、企業は現在と未来に生きています。従って、未だ理論として知識になっていない仮説や経験によって計画策定・意思決定・実践活動をし、ユニークな価値や新しい製品・サービスを創造します。これは、各企業が自社で「実践経営学」とでも呼ぶべき分野を担っていることを示しています。CとDの領域です。二次的創造の現場ともいえますね。日本企業の多くは、適正なコストでAとBの領域を手に入れ、C+Dも身につける方法を求めていると思います。

 日本では、MBA・MOT等は大企業派遣者や意欲的個人中心に広がっておりますが、日本全体への広がりはまだまだです。

 一方で上記研修したが余り効果がないという声も少なくありません。誤解を恐れずに言えば、それは上記のマトリクス構造が知られていないことにも原因があるかもしれません。

 現在と将来への「実践経営学」は自社主催で取り組むのが基本ですが、自社だけで実現できる企業は少ないのも現実だと思います。その協力者が必要です。それには、経営者を体験したコンサルタント・学者或いは技術・営業・会計・IT・人事等の専門家・研究者出身で「実践経営学」を5年以上体験したコンサルタント・専門家・学者等が有用と思われます。

欧米では、学会や企業経営者と経営コンサルタントとの人材交流が活発です。また経営コンサルタント業界は弁護士と同様にギルドとして形成され、マーケットも日本の数十倍から100倍と大きく、ギルド自身が厳しい自己認証によって業界の高い地位を確立しているように感じています。

日本では、どうなのでしょうか。私はこの業界に参加して見ると、少しずつですが思いを共有する経営コンサルタント、企業経営者、金融機関、国・自治体の政策立案者、専門家、学者が増加し献身的な努力が始まっています。今こそ、「産学官金専」連携を基礎に、企業の側も、経営コンサルタント・専門家の側も理解し合い、相互成長していく時代になることを期待しています。

 「稼ぐ」π型人材育成を検討の際は、是非気軽にBIPまでご相談頂けると幸いです。
以上

(参考文献)
1.BIP『第5期事業リーダー実践塾』テキスト
2.ニューヨーク州立大学バッファロー校アシスタント・プロフェッサー 入川章栄『世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア』
(英治出版 2012年11月 定価1900円+税別)
3.お茶の水女子大学名誉教授 外山滋比古『考えるとはどういうことか』
(集英社 2012年1月 定価1000円+税別)

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thumbnail_sasaki佐々木 昭美(ささき あきよし)

取締役会長 総合研究所所長

経営コンサルタント(経営改善、事業開発、ビジネスモデル、 人事戦略、IPO、M&A、社外取締役)

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